【悼む】「キヨ、早すぎるよ」新人のころから物静かで老成した清川栄治氏 グラウンド外では日本一の会計係

 清川栄治さん(2013年5月撮影)

 広島、近鉄で投手として活躍した西武の投手育成アドバイザー、清川栄治さんが5日、悪性腫瘍のため東京都内の病院で亡くなった。13日に西武が発表した。62歳という早すぎる別れに、野球関係者らが哀悼の意を表した。

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 清川栄治さんと呼ぶのは少々、照れくさい。昔のようにキヨと呼ばせてください。闘病生活を送っていたとは聞いていたが、早すぎるよ。ルーキーのころからキヨほど物静かというか、老成した人間をあまり知らない。

 キヨが入団した当時、広島はまれにみる投手王国だった。亡くなった北別府学さんや現OB会長の大野豊さん、川口和久さんの3本柱を中心した投手陣に入るのは、並大抵のことではなかったと思う。その中で珍しい左のサイドスロー投手として重宝されていたが、強く印象に残っているのはグラウンド外での役割だった。

 今は分からないが、当時の広島投手陣は、1軍でプレーする人間で「投手会」なる親睦団体を作っていた。シーズン中にはあまり活動することはなかったが、オフになれば「投手会」でゴルフ大会や食事会を開いていた。その「投手会」を開催する費用は、投手陣が独自で決めた「罰金」の積み立てでまかなわれていた。試合前の練習でノックを1回受け損ねると○○円の罰金、試合でエラーすると○○円罰金という具合に徴収していたと思う。この罰金をオフまできちんと管理する「会計係」はキヨの仕事だった。投手陣の中では若手だったが、その仕事をキチンとこなす姿に、先輩たちも「ウチの会計係は日本一」と真顔で褒めていたように思う。当の本人はその都度「当たり前ですよ」と照れ笑いを浮かべるばかりだったが…。

 キヨには酒席をともにしたことがあるが、ばか騒ぎする私は「飲み過ぎはダメですよ。体に悪いですよ」と、何度も注意をされた。あの物静かな口調で諭されると恥ずかしい思いで一杯になったような気がする。そんな常識人のキヨがハメを外す姿を一度でもみてみたかった。それも叶わなくなってしまった。(デイリースポーツコンテンツ局顧問・今野良彦)

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