この時期、長い連休が明けて職場や学校への復帰がストレスになったり、五月病でモヤモヤしたりしている人も少なくないだろう。
今回はそんな人のために、落涙してスッキリできる韓国映画を5本紹介しよう。
■南北分断映画『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021年)
海外でトラブルに巻き込まれた韓国側の大使館職員(キム・ユンソク)一行と北朝鮮側の大使館職員(ホ・ジュノ)一行が、1990年代初頭の複雑な南北関係を背景に、互いに緊張感を持ちながらも危機的状況をともに脱しようとする物語だ。
ラストシーンは登場人物の涙ではなく、ひたすら沈黙で締め括られるので、観る者は胸が痛み、涙が静かにあふれる。
助演に、『ムービング』のチョ・インソン、『D.P. -脱走兵追跡官-』『寄生獣ーザ・グレイー』のク・ギョファン、『非常宣言』のキム・ソジンなど。
本作のク・ギョファンは、最近の出演ドラマのようなコミカルだったり飄々とした役柄ではなく、韓国側とヒリヒリするような摩擦を起こす役割なので注目である。
■Kゾンビの金字塔『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)
泣けるパンデミックものという珍しいゾンビ映画だ。心が通い合っていなかった父(コン・ユ)と娘(キム・スアン)が終盤、確執を乗り越える場面と、ラストで娘の小さな前進によって事態が大きく動く場面は落涙必至。
本作はマ・ドンソクが今の彼につながるマッチョキャラを確立した作品でもある。彼がゾンビをなぎ倒す爽快感とラストの催涙でスッキリ効果抜群!
助演に、『スリープ』のチョン・ユミ、『殺人者のパラドックス』チェ・ウシク、『ソウルの春』のキム・ウィソンなど。
本作のチェ・ウシクは、のちの『パラサイト 半地下の家族』の長男役に通じるお人好しキャラで、元Wonder Girlsのアン・ソヒとのちょっとしたロマンスとその結末は見ものである。
■南北分断&戦争避難民の一代記『国際市場で逢いましょう』(2014年)
1400万人を動員したファン・ジョンミンの出世作。朝鮮戦争のとき、北部から南部に避難し、釜山に定着した男の一代記だ。
終盤、生き別れになった肉親とのエピソードは号泣必至。筆者は東京の試写会で観たのだが、映画を冷静に鑑賞する人が多いはずなのに、周囲から嗚咽が聞こえて来た。さらに、ラストシーンの白い蝶の正体に気づけば、追い泣きして涙を絞れるだろう。
助演に、『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』のキム・ユンジン、『涙の女王』のチョン・ジニョン、『良くも、悪くも、だって母親』のラ・ミランなど。
本作のチョン・ジニョンは、『涙の女王』の優柔不断な財閥副会長役とは違う、韓国的父性を体現する男らしい演技を見せてくれる。
なお、ファン・ジョンミンは観客動員を1312万人を突破した『ソウルの春』(2023年)で、第60回「百想芸術大賞」映画部門、男性最優秀演技賞を初受賞した。『ソウルの春』は今夏8月に日本公開される。
■マ・ドンソクのサイドストーリーが泣けるプロ野球映画『パーフェクトゲーム』(2011年)
韓国プロ野球、釜山ロッテジャイアンツのエース(チョ・スンウ)と光州ヘテタイガースのエース(ヤン・ドングン)のライバル関係(崔東原と染宣銅烈の実話がベース)が話の核なのだが、泣けるのはサイドストーリーだ。
マ・ドンソクが扮した捕手は打者としては長年成績不振で、チームでも家庭でも居場所がなかったが……。
マッチョキャラが確立する前のマ・ドンソクは、同年のチェ・ミンシク主演映画『悪いやつら』で彼が扮したにわかヤクザ役同様、強面なのに気弱というキャラが大変印象的だった。本作でもそんな初期の泣かせるマブリーを堪能できる。
助演に、『シグナル』のチョ・ジヌン、『ムービング』のソン・ビョンホなど。
■卓球の南北統一チームの感動物語『ハナ ~奇跡の46日間~』(2011年)
1991年に日本で行われた世界卓球選手権大会で実現した、韓国と北朝鮮の南北統一チームの実話を元にした物語。在日韓国・朝鮮人の間では語り草になっているできごとだ。
南側の一部の選手(オ・ジョンセ)らのいたずらなどで、統一チームは最悪の状況に至るが、最後には北側エース(ペ・ドゥナ)と南側エース(ハ・ジウォン)の間に絆のようなものが芽生える。常に冷静沈着だった北側エースがラストで感情をあふれさせるシーンは在日同胞でなくても、号泣するだろう。
助演に、『ミナリ』のハン・イェリ、『ビッグマウス』のイ・ジョンソクなど。
韓国映画には、スポーツ界の実話を元にした名作がほかにもいくつもある。最近では釜山の高校バスケットボール部の活躍を題材にした『リバウンド』(2023年)が話題を集めている。アン・ジェホン、イ・シニョン、チョン・ジヌン(2AM)らが出演していて、現在日本公開中だ。