那須遺棄事件、殺人容疑で再逮捕開始 まだ逮捕されていない“別の者”も事件に関与か?元刑事が推測

 “別の者”も事件に関与か?※写真はイメージです(naka/stock.adobe.com)

 栃木県那須町で焼損した夫婦の遺体が見つかった事件で、死体損壊容疑で逮捕された6人の容疑者が殺人容疑で再逮捕される動きが始まった。自ら出頭して4月21日に逮捕され、延長勾留の満期が迫っていた平山綾拳容疑者(25)がその第1弾として殺人容疑で再逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は13日、デイリースポーツの取材に対し、今後の展開を解説し、まだ逮捕されていない“別の者”が事件に関わっている可能性も示唆した。

 4月16日に会社役員・宝島龍太郎さん(55)と妻・幸子さん(56)の遺体が発見されたことに端を発した今回の事件。合同捜査本部は平山容疑者に続いて、指示役とされる佐々木光容疑者(28)、実行役とみられる韓国籍の姜光紀(カン・グァンギ)容疑者(20)と元俳優の若山耀人(きらと)容疑者(20)、宝島夫妻の長女と内縁関係にあった会社役員の関根誠端(せいは)容疑者(32)を順次逮捕した。現時点で関根容疑者が主犯格とみられている。

 仲介役とみられていた平山容疑者は、佐々木容疑者から「夫婦を殺し、ガソリンで遺体を燃やして処分するよう指示された」と供述していたことが11日に分かった。また、平山容疑者の関係先から見つかった現金が約700万円だったことも判明。同容疑者は「900万円の報酬を受け取った」と供述しており、報酬の一部の疑いがある。

 この報酬に関しては、これまで「約1500万円のうち、佐々木容疑者が100万円、平山容疑者が900万円、姜容疑者と若山容疑者が250万円ずつを受け取った」とする平山容疑者の供述が報じられている。佐々木容疑者は沖縄で逮捕時に数百万円を持っていたが「事件とは関係ない金」と主張し、姜と若山両容疑者は逮捕時の所持金が十数万円ほどだったとされている。

 小川氏は「宝島夫妻と深い関係にあるという知人によると、『関根容疑者1人だけで、そんな大金は用意できないと思う。誰か(金銭面で)助けてもらったのでは』と話していました。この事件の主犯格は関根容疑者と言われており、私もそうだと思いますが、まだ逮捕されていない者が他にもいて、この事件に関与した可能性は十分ある」と推測した。

 では、その“別の者”とはどのような存在なのか。小川氏は「首謀者は関根容疑者だと思われるので、関根容疑者より上にいる者だとは考えにくいが、平山容疑者の供述では1500万円もの金が動いているわけで、その原資はどこからきたのかということを考えると、関根容疑者に金を提供した者がいる可能性もある。あるいは、関根容疑者が何らかの方法で宝島さん夫婦から金を奪い取ったのか、どちらかではないか」と推理した。

 また、同氏は「この一連の共犯者が使用していたと思われる“飛ばしの携帯電話”を準備した者の存在も浮上している」と補足した。

 その上で、小川氏は「関根容疑者は“やり手”だと言う者もいるが、関係の深い人に聞くと、やり手なのは奧さんの幸子さんの方であって、上野に宝島さんの店が10数店舗あるが、これは幸子さんの手腕だと言われている。関根容疑者は“後継者”と目されながらも、長女との結婚を許してもらえない状況で、そういった複合的なものが犯行の背景にあるのではないか」と解説した。

 事件の特徴として、小川氏は「計画性はあるが、指示役、仲介役、実行犯と、どんどん『下請け』に降りている。那須でのご遺体の現場を見ると非常にずさんで粗っぽく、手慣れていないことが分かる。原因はいろいろ考えられるが、宝島夫妻と関根容疑者との間にトラブルがあったことは間違いない」と分析した。

 今後の焦点について、小川氏は「これから順次、別の容疑者も殺人容疑の共同正犯で再逮捕されていく。夫婦が殺害された現場になったとみられる(都内の)空き家での実行犯は誰か。その現場には“ゲソコン”、つまり足跡が何種類かあって、2人なのか、それ以上なのか、那須の足跡と一致するのか…。そういったことを調べていくことになる」と付け加えた。

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