【ダイエットの落とし穴】カロリーを減らした女の末路

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「読めば痩せる!?」笑えるダイエットストーリー、第20話!


《第20話》「カロリーを減らした女の末路」

このまま何も手を打たずにいたら、一生

10キロ痩せるまで、あと4キロ──

と、言い続ける人生になってしまうかもしれない……っ!(どんな人生だよ)

こうなったら、
残された手は一つ。

カロリーを、減らすしかない……!!

摂取するカロリーを更に減らせば必ず痩せる!!!

例え省エネモードというやつになっていたとしても、
その省エネモードを凌駕するほどの低カロリーで過ごせば、理論上痩せて当たり前。
単純な足し算引き算の話だ。

……とはいえ、
これ以上減らすのは、結構しんど、いや凄くかなりめちゃくちゃ凄まじく途轍もなく途方もくなく半端なくしんどい――っ!!

と、そんな私に女上司が近づいてくる。
いや、こんな精神状態で仕事を増やされるのはちょっとキツ――

「ねぇ聞いて! 今日、また体重最小値更新したのっ♪」

「あ、あと追加でこの資料にミスがないかチェックも頼める?」

えーい! もうこうなったらやってやろーじゃないの。
カロリー減らしてやろうじゃないの。
一生停滞してたら、一生ダイエットしなきゃいけないことになる。
そんなの嫌だ!

と、私は食べているものをしっかりレコーディングしつつ、
今、1日かけて食べている総摂取カロリーから、もう200キロカロリーほど下げてみることにした。

が!!

昔のように
「NO糖質! YESサラダ!」でサラダばっかり食べるなんて失敗はしない!(第3話参照)

私には、あの頃と違って
擬態めし
という武器がある。

たくさん食べて、食べた上で200キロカロリー減らしてやる!

普段ならコンビニなどで済ませているお昼を、擬態めし弁当持参に変え、
他にも少しづつ削り、擬態めしを駆使して

【食事の見た目は減ってないけど、1日200キロカロリーを減らす】

ということに成功。

そして、3日後――……

っっっシャァ……、久々にキターー……!!

体重最小値更新!!

10キロ痩せるまで、あと3.8キロっ!!

あとはこれを繰り返せばいいだけ。
あと3.8キロ。持ってくれよ、オラの身体!

1週間後――……

最小値を更新した翌日から再び停滞。

再び微減微増を繰り返し、本日に至っては、

10キロ痩せるまで、あと4.2キロ……。

よし……
こうなったら、またもう少しカロリーを減らす!

うん!!

ムリムリムリムリ!! 無理無理無理無理!!

これ以上はマジで無理!! 絶対ムリ!!

身体壊れる。てか死ぬ。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。これ以上はマジで死ぬ。

ただでさえどんどん仕事する気がなくなってんのに。
もはや遊ぶ気力すらもない。てか人生のやる気すらもない。
QOLだだ下がりなんですよ。

「すみません……! これ以上はもうホント無理です……っ!!」

私は、そんなダイエット愚痴のありったけを、喫茶店で友人のモッちゃんにぶちまけた。

「痩せたい! けど、もうやめたい! でもやめたら、せっかく6キロ痩せたのに誰かさんみたいにリバウンドして元の体型に戻っちゃうんじゃないかって怖くて!」

「それ私のことだな!」

今日は定例となっているモッちゃんと一緒にジムに行く日なのだが、
もう、どーーーーしても行く気になれなず、モッちゃんに
「お願いですから、今日はただひたすら私のダイエットの愚痴を聞いてくれないだろうか」
と、ラインをし、私の家の近所の喫茶店に呼び出したのだ。

愚痴を聞いてくれたモッちゃんは

「んー、私言われた通りにしか食事制限ってしたことないから、よくわかんないんだよなー」

モッちゃんは、今まで2度、パーソナルジムに通うことで6キロ以上のダイエットに成功している(費用は一回30万円)。

そこでは日々の体重の推移や体型を見て、食事の献立を指導してもらっていたらしいのだが、
モッちゃんは、言われた通りのことを、言われるがままにこなしていたらしく、
体重が止まった時にどうすればいいのか、などは全くわからないらしい。

言われた通りのことを素直にムッチャ頑張れるのが、モッちゃんのめちゃくちゃ良いところだ。
が、わからないからこそ、6キロダイエットしてもリバウンドをし、また6キロ痩せても……ということを繰り返している、とも言える。

いや、良いのだ。
停滞の解決を求めてモッちゃんに聞いてもらったわけではない。
ただただ辛すぎて、友人に弱音を吐きたくなっただけなのだ。
それほどに、もはや身も心もボロボロなのだ……。

あー……。もうやめたい……。ほんとダイエットやめたい……。
なんでこんなことしてるんだろう。

いや、全ては、旧ツイッターことXにあんなしょうもない書き込みをしてしまった私が悪いのだが……。

てか、
6キロ痩せたしもう良くない?
このウェブエッセイも、
「頑張ったけど、結局さすがに10キロは痩せられませんでしたー!」
ってオチじゃダメ?
そんなことY編集に伝えたら……怒られる……?
はぁ……。ため息が止まらない。

と、そんなネガティブ全開の私に、モッちゃんは明るく

「と、いうわけで!
そんなあんたに 助っ人呼んだから!

……助っ人?
と、モッちゃんに呼ばれて現れたのは、

デカめの男性。

……いや、誰よ?

しかもその見知らぬデカめの男性は、
私の方を、なんだか
じーーーーっ
と、見てくるのだ。

……いや、何よ?

そんな私をじーっと見てくるデカめの男性にモッちゃんが

「何? 緊張してんの?」
「あ、すみません! そういうわけじゃないです!」

いや、まず誰なのかを説明しておくれよモッちゃん。
するとモッちゃんが、

「あ、アツオだよ」

……いや、誰よアツオ。

「僕アツオって名前じゃないんですけどね」

違うんかい!

「あ、私がそう呼んでるだけ。体も話もなんか色々、圧強めだから」

……あ。

思い出した。

「もしかして……モッちゃんのパーソナルトレーナーの?」
「そう! アツオ!」

初めてモッちゃんとジムに行った時に、モッちゃんがトレーナーさんの言葉を色々と教えてくれた。(第12話参照)
どうやらこのデカめの男性は、あの時に話していたトレーナーさんらしい。

「私じゃあんたの悩み解決できないから、助っ人として呼んだんだ」

いやいやいや、待て待て待て、
待てモッちゃんよ。

あんたパーソナルに30万払ったんでしょ?
いくらダイエットに完全に息詰まってるからって、私30万も払えないよ。

「あ、お金のことは大丈夫!」

いや、何が大丈夫なんだ。
と思ったが、モッちゃんがいうには
あくまで今からするのは、“お友達としての雑談”らしい。

アツオさんは、近々モッちゃんが通っていた大手パーソナルジムのトレーナーを辞めるらしく、今度、個人のパーソナルトレーナーとして独立するそうだ。
そして、その勤めていた大手パーソナルジムの規約で、
ジムに通っていたお客さんを自分のお客さんにするのは問題があるそう。
なので、今モッちゃんとアツオさんは “ただの友達”という状態でないとまずいんだとか。

「アツオ、最近この辺に引っ越してきたらしくて。この間、たまたま会ったんだよね。
で、そこで色々最近のアツオ事情聞いて、で、ライン聞いて友達になったの」

なるほど。さすがモッちゃん。昔から割と誰とでもすぐ友達になる女。

「だから、友達との雑談として、アツオに悩みをぶっちゃけちゃってくださいな」

モッちゃん……あんた……私のために……。
ほんと良いやつだな、モッちゃん。

いや、でもなんのお礼も見返りもなしに、雑談とはいえプロからアドバイスを聞いて良いものなのだろうか……?

「あ、有休消化中で暇なんで全然大丈夫です!」

いや、でも……

「あ。じゃあ、僕の話がもし役に立ったら焼き鳥でも奢ってくださいっ!!」

と、彼は白い歯を輝かせ、爽やかすぎるほど爽やかな笑顔で言った。
爽やかな笑顔なのに……確かになんだか圧が強い……。

でもまあ、そう言ってくれるなら、
と、私は今までの経緯をアツオさんに話してみることにした。

「なるほど」

と、言いながら数回頷いたアツオさんは、
また爽やかな笑顔を浮かべ、まあまあデカめの声で、こう言った。

「ダイエットなんてやめちゃえば!!」

……

ごめんなさい、話し聞いてました??

「ダイエットやめちゃえやめちゃえ!」

ダメだ。この人、話し通じねぇ。
あ、アツオの隣でモッちゃんも同じ顔してる。

「ダイエットやめたら、痩せますよ!」

……え?

どういうこと???

だってダイエットって痩せるためにするものでしょ?
ダイエットやめたら痩せないに決まってるんじゃ……。

それから2週間後――

「え、嘘でしょ」

朝、思わず私は、体重計の上でそうつぶやいた。

これが……
これが……

〇〇ドリルの力なのか……。

今の私の体重は……

10キロ痩せるまで、あと3キロ──

“知識”を身につけた未来のわたしから一言二言

まず読者の皆様に謝罪しなければならないことが!!
19話にて、20話に停滞打破の方法として

「〇〇ドリル」

のことについて書くと予告していたのですが、
なんだかんだで19話同様、20話もすんげー長くなってしまい、
また「〇〇ドリル」の〇〇がなんなのかを書くことができませんでした!!

すみません!!

正直、
「いや、どんだけ引っ張るんだよ。よっぽどのことなんだろうな?」とお思いですよね。

でも……これ以上書くとまたY編集から「長いです」って怒られるんですもん……。
というわけで、〇〇ドリルについては次回に書きますので、どうかお許しください!!

さて、このコーナーもこれ以上長く書くと、またY編集からハイカロリーなものを投げつけられてしまいますので、手短に。

今回の私の失敗は、
停滞しているところで、更に摂取カロリーを下げてしまったこと。

これ、完全に悪手です。

確かに停滞しているところから、更にカロリーをカットすれば一時的には少し痩せます。
が、そのやり方ではまたすぐに体重が停滞してしまうんです。

理由は、身体が更に下がったカロリーに適応しようとして、更に省エネモードになるから

つまりこの方法だと、
停滞して、更にカロリーを減らして、また停滞して、更に……

と、もう どんどんどんどん地獄の方向 に向かってしまうんです。

ダイエットで一番間違えがちなのが

**減らせば減らすほど痩せる
動けば動くほど痩せる。**

という考え方。

ダイエットをする以上、
食事のカロリーを減らす、というのはもちろん正しい選択です。

ダイエットの原則は、アンダーカロリー(食べたり飲んだりしたカロリーより、消費したカロリーの方が多い状態)であること。
これは、これまでも何度もお話していた通り、ダイエットの大原則。

でも、アンダーカロリーにしようとしてカロリーを減らしすぎると、体は途端に省エネモードに移行し、体重は停滞。

なので、減らすカロリーは、
自分の 1日の総消費カロリーの10%〜15%(よっぽど多くても30%まで)
にするのがオススメです。

「自分の1日の総消費カロリーなんてわかんないよ」
という方も多いかもですが、そんな場合は、こちらの「keisan」さんのサイト(https://keisan.casio.jp/exec/system/1567491116)で
おおよその目安は簡単に調べられますので、ぜひ使ってみてください。
(総消費カロリー = メンテナンスカロリー なので、メンテナンスカロリーが自分でなんとなく把握できている方は、メンテナンスカロリーから10%〜20%って計算でも大丈夫です)

例えば仮に、
30歳女性。身長158センチ。体重60キロ。
通勤くらいで、ほぼ運動をしないデスクワークの人。
が、いたとします。

その方の1日の総消費カロリーは、おおよそ1630kcal(うち、基礎代謝が1360kcal)。
なので、減らすカロリーは、160kcal〜240kcalということになります。
つまり、1日に1470〜1390kcalほどの摂取カロリーが、停滞なく、省エネモードにならないであろうカロリー設定ということです。

そして、もう一つ。絶対に守ってほしいこと が。

それは、
1日の総摂取カロリーが、基礎代謝より下回らないようにすること!

基礎代謝を下回る と、身体が省エネモードに移行し、停滞する可能性大!!

しかも基礎代謝を下回ると、活力がなくなり、もうマジでQOLがだだ下がりします。
今回の私のように。

早く痩せたいという気持ちは痛いほどわかります、が!

食べないで動くが1番停滞します。

そして体は省エネモードから抜け出せなくなり、
身体は自分の身を守ろうと、むしろ脂肪をつけようとしてしまう。

例え根性で耐え抜いたところで、ろくな結果になりません。
ダイエットは、だるさを感じるやり方でやったら負けです。

断言します。
ダイエットは 決して苦しんでやるものではない!

むしろダイエットのテーマは
いかに楽をするか!!

苦しいダイエットの方が、結果が出ないことが多い。
ということは覚えておいてくださいませ。

(第21話につづく……2024年5月27日公開予定)

作者/【体脂肪率3%の脚本家】の保木本真也
『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)『事件』(WOWOW)など
ベストボディジャパン2023松山大会 モデルジャパン部門ミドルクラス グランプリ

イラスト/藍沢みお、津和野諒

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