「離職は当たり前」を変えたい 美容業界で働く親たちの背中押す託児所付きシェアサロン

美容業界など土日や祝日が忙しい職種では育児を理由に離職する人が少なくありません。

子供の預け先の確保がハードルの一つとなっているようです。そうした中、働きやすい環境を作ろうという取り組みが始まっています。

整体師として働く稲益里沙さん

「おはようございます」

午前10時、福岡県北九州市小倉北区のある建物にやってきた親子。

稲益里沙さん(35)と娘の椛名(はな)ちゃん(2)です。

2人が訪れたのは託児所。

稲益里沙さん「はなちゃんいってらっしゃい」

大声で泣く椛名ちゃんを預けて稲益さんは同じフロアにある別の部屋へ入っていきました。

実はここ、託児所が併設されたシェアサロン。

美容系や整体、マッサージなどさまざまな人が共同で利用できます。

建物内に託児所 きっかけは美容室で働く女性たちの声

美容室が入る建物の2階部分に託児所が開設されたのは今年3月、きっかけは美容室で働く女性たちの声でした。

美容集団marumasa香原瞳さん「うちの社員の女の子たちが結婚出産を機に家庭環境とか仕事環境とかでなかなかお仕事がしづらくなる。美容業界って土日がメインのサロンが多いので保育園になかなか預けられない」

離職の理由2位は「結婚・妊娠・出産」

リクルートが今年実施した調査では、3年未満で退職する美容師は36・7%にのぼっていて、その理由としては「結婚・妊娠・出産」が2番目に多い結果となっています。

美容集団marumasa香原瞳さん「お子さんを保育園に預けられなくて働きたくても働けないという方のために女性の方がもっと活躍してもっと働ける場があればいいなと思ってシェアサロンを始めました」

フルタイムで働けるように

4月からシェアサロンで働く稲益さんは整体師です。

結婚を機に仕事を辞めたあと、3人の子を出産した稲益さん。

その後仕事に復帰したいと考えたものの、子育てに追われ、実家に子供を預けられるときだけ、限られた時間でしか働くことができませんでした。

しかし、このサロンに来てからは、フルタイムで働くことが出来ています。

稲益里沙さん「子供がいると自由に動けないという事がたくさんあって仕事したくてもできないという感じだったんですけれど、ここのシェアサロンを見つけて託児所がついていて、自分の資格を活かせるということですごくやりやすいです」

託児所で子供たちは・・・

施術部屋と同じフロアにある託児所。

泣いていた椛名ちゃんはというと・・・

楽しそうに遊んでいました。

保育料は利用日数に応じて月1万円から3万円。サロンのブースを借りるための月額固定費と合わせると決して「安い」とは言えませんが、仕事が忙しい土日や祝日にも子供を預けられるため、稲益さんにとっては大きな支えとなっています。

昼食も一緒に

同じ場所にいることで昼ご飯も一緒に食べられるというのも魅力の一つです。

この日は、建物内にある店でハンバーガーを購入しました。

稲益さんも椛名ちゃんもこの日一番の笑顔があふれとても楽しそうです。

整体師・稲益里沙さん「施術中に声が聞こえるだけでも安心はします。保育所がないと仕事ができないし、仕事をしていないと保育所に預けられないという状態なので同時に仕事も出来るし見てもらえるし。こういうところが増えればもっと働ける女性が増えるんじゃないかと思います」

美容集団marumasa香原瞳さん「離職が当たり前、ではないけれど仕方ないという感じではあったんですけれど、実際シェアサロンができて整体師さんとかお子さん預けて毎日楽しそうに働いている姿を見るとこういう形が広がったらいいなというのを感じました」

「また別の自分でいられる」充実した時間

「はなちゃん!あーただいまー」

午後5時、稲益さんはこの日6人の施術をし、仕事を終えました。

整体師・稲益里沙さん「今日も充実した日で楽しかったです。働くことで自分だけの場所も作れるし子供といる時とはまた別の自分でいられるので、働くのはすごく大事だなと思います」椛名ちゃん「はーちゃん泣きよった」

稲益里沙さん「はーちゃん泣きよったん笑」

「働きたくても働けない」という大きな悩みから「充実した日」に変わる一つの支援。

働く親の背中を押してくれそうです。

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