春がやってきた!病院で見かける「犬の散歩トラブル」あるあると対策について獣医師が紹介

犬の「散歩トラブル」どんなことが起こり得る?

楽しいお散歩が一転、トラブルで大慌てをしたというお話もよく聞きます。お散歩のまま動物病院の受診をすることになった経験のある飼い主さんもいるのではないでしょうか。

どんなトラブルが考えられるのでしょうか。

誤食トラブル

きっと多くの人が経験したことのあるトラブルなのではないでしょうか。食べてしまったものは、ごみのようなものから、植物、たばこのような有害なものまで様々なケースが多いです。

このときに注意をしたいのが、腸閉塞の可能性や中毒を起こし得るものかどうかということです。

食後1時間程度以内であれば、お薬によって人為的に吐き気を催させる催吐処置と呼ばれる処置によって、異物を吐き出させることが可能です。食べてしまったことがわかった場合、すぐに受診をするよう心がけましょう。

問題無いと思っていた植物が実はわんちゃんにとって有害な植物だったり、農薬が付着していて中毒症状のリスクなどにつながる危険性もあります。

また、お散歩仲間とのお話に夢中になっていて、食べてしまった瞬間に気づけずに帰ってきてから原因不明の体調不良を示し、飼い主さんもドキドキしたというお話を聞くこともあります。

普段から目を離さない配慮や、しつけの一環として加えてしまってもコマンドによって制止したり離すことができるようにしておくと安心です。

交友関係トラブル

お散歩をしているのは、おうちのわんちゃんだけではありません。

通学路であれば小学生や幼稚園児のような小さなお子さんがいたり、周りのわんちゃんたちがいたり、周りとの交友関係にも目を向ける必要があります。

おうちのわんちゃんの性格だけでは防ぎづらい問題でもありますが、わんちゃんや周りの人とのトラブルも気を付けたいトラブルの一つです。

友好的な性格のわんちゃんが、怖がりのわんちゃんに対して遊びたい一心で近づいたことにより、喧嘩が勃発してしまうことや、わんちゃんの近づかないでほしいというサインを読み取れずに触ろうとした通りがかりの方を咬んでしまうなどのお話をよく聞きます。

おうちのわんちゃんの性格の把握や、わんちゃんが示す行動一つ一つがどんな意味を持つのかということを誤解せずにきちんと把握をして対策を取ることが大切です。

例えば尻尾を振ることは、楽しいときや嬉しいときの意思表示でもありますが、興奮しているときなども尻尾を振ることが知られています。

楽しいようにも見えますが、実は興奮をして喧嘩をする直前の意思表示の尻尾を振っていたというケースもあります。

おうちのわんちゃんだけでなく、わんちゃんはどんな時にどんな行動をとるのかということを理解し、必要な場合は距離を取ることや相手に伝えることがとても大切です。

動くものが関係するトラブル

わんちゃんの犬種的な特性によって、動くものに対して執着を示したり興奮をしたりするケースも多いです。

自転車や自動車などの動くものに対して急に興奮をして、飛び掛かってしまったり、走り出してしまったことで飼い主さんが転倒してしまったなどのお話もよく聞きます。

猟犬や牧羊犬として活躍していた犬種は、現代では家庭犬としてお家で暮らしていても、犬種の特性として動くものに対して興奮のスイッチが入ってしまったり、執着することで追いかけまわしてしまったりする可能性が高いです。

おうちのわんちゃんの犬種の特性を正しく理解し、動くものに対して強い興味を示したり、興奮をしてしまう傾向があるのであれば、しつけの一環として制御できるように普段から心がける必要があります。

犬の散歩で気を付けたいこと

実は身近に起こる危険のあるお散歩トラブルですが、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。

どんなことも起こり得ますが、飼い主さんが気を付けることで、万が一起こった場合にも小さなトラブルで済ませられる場合もあります。

わんちゃんの特性を理解する

まずはわんちゃんの特性を理解しましょう。犬種的な特徴や、個々のわんちゃんの性格を把握することが大切です。

牧羊犬や猟犬だった犬種は使役犬として活躍してきた歴史があり、羊や狩猟の対象となる動物などの動くものに対して興味を持ったり、特に執着をして追いかけるような性質を持つように作られた犬種です。

使役をする必要のない日本では家庭犬として愛されていても、それらの犬種が持つ本能的な特性によって、自分の意志にかかわらず、強い興味を持ってしまったり、執着をして周りが見えなくなってしまう場合が多いです。

闘犬や護衛犬として活躍してきた犬種は、本来の警戒心の強さや敵とみなした際の攻撃へのスイッチの入りやすさなども挙げられます。

他にも、それぞれの性格なども関係します。怖がりな子や友好的な子、相手の空気が読める子も逆に空気が読めずに距離感のとり方が難しい子など様々です。

おうちのわんちゃんの特性や長所・短所を正しく理解してあげましょう。起こり得るトラブルが見えてくることで予期しやすくなる可能性が高いです。

お外に出る準備は万全?

お外に出る準備も大切です。わんちゃん自身の健康を守るためにも欠かせないのが予防接種や寄生虫予防などです。

たくさんのわんちゃんや猫ちゃんと接触する可能性が増えるお散歩では、周りのわんちゃんたちに病気をうつしてしまわないためや自身の健康を守るためにも感染症の予防は欠かせません。

また、人やわんちゃんを咬んでしまうトラブルの際に必要なのが狂犬病の予防接種です。狂犬病は他の犬や人を噛むことで、唾液を通じて感染を起こし、死に至る危険性もあるウイルス感染症です。

現在、日本は国内に狂犬病の存在しない清浄国とされていますが、以前は国内にも存在しており、狂犬病が原因で命を落とす危険性もありました。

狂犬病に脅かされることの無いよう、狂犬病予防接種の徹底が法律によって義務付けられています。噛むことによって感染が広がる病気であるため、トラブルの際に狂犬病の予防をきちんと行っていることを提示する必要があるケースが一般的です。

特に狂犬病予防注射の予防を行っておくことはお散歩に出る際の準備の一つとして飼い主さんの義務として、特に大切です。

万が一トラブルが起こったときの対処法を考えておく

上記のようなトラブルをおうちのわんちゃんが起こしてしまう可能性も、相手のわんちゃんなどがいて被害者になってしまう可能性もどちらも考えられるでしょう。

そんなときにすぐに動物病院に連れて行く必要や、狂犬病予防注射の接種証明を提示する可能性など色々な可能性を考えておかねばなりません。

すぐに受診をする必要性を考え、かかりつけの動物病院の診察時間や休診日、万が一休診の際の近隣の動物病院の状況などの把握をしておくことは大切です。

保険に加入している場合であれば、保険証を散歩時に携帯するなども安心できる要因になるでしょう。狂犬病の接種証明や自治体から発行された鑑札も、万が一の際にすぐに提示できるため、トラブルを少しでも早く解決できることにつながるかもしれません。

トラブル対策でこんなことをしておくと便利

いつ起こるかわからないトラブルですが、備えておくことでいざというときに困らずに済む場合もあります。

ではどんな対策がとれるでしょうか?

ダブルリード

わんちゃんのとっさの興奮や攻撃、逃走に飼い主さんが反射的に対応するには、かなりの反射神経や体力がないと難しいケースが多いです。

そんなときに、安心なのがダブルリードと呼ばれる2本のリードでわんちゃんを保定する方法です。首輪のタイプとハーネスのタイプなどタイプの違う物やリードの太さがより太いものなどで併せて使用すると、勢い良く動こうとしたときに制御できる可能性があります。

力の強い中型や大型のわんちゃんにはおすすめです。

病気の予防

お散歩中に他のわんちゃんを見かけたら、一緒に遊びたくなったりお友達になりたくなるわんちゃんも多いです。

どんな子も、最低限のマナーとして病気を感染させあってしまうことのないよう、様々な病気の予防をしておくことは大切です。

万が一ワクチンの接種や外部寄生虫の予防などを行っていない場合は、わんちゃん自身のためにも他のわんちゃんとの接触はあまりおすすめできません。

仲良くなれそうなお友達がいた時に、せっかくの機会が予防がきちんと行われていないせいで近くに行けないということがないようにするために、いつでも予防は万全にしておくことをおすすめします。

お散歩ルートの選定

あまり深く考えずに決めがちなお散歩ルートですが、実はルートの選定次第でお散歩のトラブル対策につながることもあり得ます。

よく匂いばかり嗅いでいて動かなくなってしまったり、その場所に近づくと家に帰ろうとするなどの行動を示すわんちゃんなど、特定のお散歩ルートを苦手とするわんちゃんもいるのではないでしょうか。

わんちゃんは本来縄張りをもって行動することもあって、尿でマーキングをすることで自分の縄張りであることを示します。

飼い主さんが後処理をしたとしても、わんちゃんの残り香があり、体格の大きそうなわんちゃんや強そうなわんちゃんのにおいなどの場合に本能や相性的に近寄りたがらない場合もあります。

小さなお子さんが苦手なわんちゃんの場合、通学路が苦手だったり、その子の特性次第で特異なルートや苦手なルートがある可能性が高いです。

何かがあった時のために、かかりつけの動物病院の近くのルートにするなども良いかもしれませんね。

まとめ

楽しいお散歩ですが、外に出るといろいろな人やわんちゃんがいるため、様々なトラブルが起こり得ます。

対策次第では大切なわが子が被害者になってしまったり、加害者になってしまうこともあり得るでしょう。

大切なわんちゃんとの日々の楽しみとして、嫌な記憶に変わらないように飼い主さんができる対策はしっかりとっておくことをおすすめします。

(獣医師提供:葛野莉奈)

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