阪神・淡路大震災を経験した兵庫県警の現職警察官、15%に減少 「被災体験の伝承」岐路に

兵庫県警察本部=神戸市中央区

 来年で発生から30年となる阪神・淡路大震災を経験した兵庫県警の現職警察官の割合が15.1%にまで減っている。震災後に生まれた警察官よりも少なくなっており、県警が重視する「被災体験の伝承」が岐路に立っている。

 警務課によると、4月1日時点の警察官の人数は1万1756人。このうち、地震があった1995年1月17日よりも前に県警に入り、今も働いているのは1772人という。

 県内の46警察署でも、震災後に警察官になった署長が4人いるほか、県警本部でも警察庁出身者らを除く所属長49人のうち6人が経験していない。また、地震の日以降に生まれた10~20代の警察官は、経験者を上回る2437人で、全体の2割を超えた。

 県警は、経験者と未経験者がほぼ同数になった2008年に記憶の継承に向けた取り組みを始めた。所属部署や警察学校で体験を語る「語り部」制度を導入し、当初は少なくとも103人が登録され、携わったという。

 だが、退職などで徐々に減少し、13年以降は東日本大震災や西日本豪雨など全国の被災地に派遣された警察官も対象に加えた。4月1日時点の登録者は59人で、阪神・淡路の経験者に限ると36人にとどまる。

 こうした状況を受けて県警は、発生当時を知る警察官やOBのインタビューをDVDに残し、体験の共有を試みる。警備、刑事、交通など各部門で対応に当たった約20人分を収録する予定で、来年1月までの完成を目指すという。

 若い世代に記憶を伝える意義について、災害対策課の今冨昭紀次席は「装備・資器材の調達や支援体制など、日本の警察組織が災害対策を見直すきっかけとなったのが阪神・淡路。兵庫の警察官ならばその原点を心に刻んでおく必要がある」と強調する。(小川 晶)

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