ポケットの中には闇がある…『ドラえもん』ひみつ道具で世界が滅亡しかけた話5選

てんとう虫コミックス『ドラえもん』(小学館)第44巻

藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』には、のび太を助けるための便利なひみつ道具がたくさん登場する。その多くは“こんな道具があったらいいなあ”と思わせてくれるものだが、時にはその道具のせいで世の中が滅亡しそうなケースもある。独裁者を懲らしめるために開発された「どくさいスイッチ」などが代表的だろう。

実は『ドラえもん』には、「どくさいスイッチ」以外にも人類が滅亡しそうなヤバい道具がある。ここでは、そんな恐ろしいひみつ道具を5つ紹介したい。

■永遠に物が倍増する恐怖!「バイバイン」

てんとう虫コミックス17巻に登場する「バイバイン」は、なんでも増やすことのできるひみつ道具だ。

目の前にある栗まんじゅうを減らさずに食べ続けたいと悩むのび太に対し、ドラえもんが出してあげたこの「バイバイン」。1滴かけると、最初の5分で2つになり、その5分後には4つに、さらに5分後には8個になるという道具だ。

大喜びして食べたのび太だが、増える栗まんじゅうにお腹がいっぱいになってしまう。ママや友達にも食べてもらうも数はどんどん増え続けてしまい、最終的に膨大な数になった栗まんじゅうはドラえもんによって宇宙の彼方へ飛ばされるのであった。

バイバインは1つの物が5分後には倍になるという便利な道具だが、放置するとその数はあっという間にすごい桁になる。作中に出てきた小さな栗まんじゅうでさえ、たった1日で地球を埋めつくしてしまうほど。絶対に使ってはいけない禁忌の道具と言えるだろう。

■もし使っていたら大変なことに…!?「地球はかいばくだん」

名前からインパクトのある「地球はかいばくだん」は、ドラえもんがパニックに陥ったときに登場した道具である。

コミック7巻に登場する「ネズミとばくだん」にて。ある日、のび太の家にネズミが出てしまう。驚くママとのび太だったが、それ以上にパニックになったのがネズミが大嫌いなドラえもんだ。

ドラえもんは退治するために次々と大型攻撃兵器を取り出し、のび太たちに止められる。その後、まったく姿を見せないネズミに対し、ついに緊張感から気が変になってしまったドラえもん。最後は「『地球はかいばくだん』を!」と言い、ヨダレを垂らしながら大型の爆弾を取り出すのであった。

幸い、のび太の機転によって「地球はかいばくだん」は使われることはなかったものの、ネーミングから地球を破壊するほどの威力があると思われる。ネズミを駆除するためなら地球もろとも壊してしまえ!という、ドラえもんのネズミ嫌いがよくわかる恐ろしいエピソードだ。

■メルヘンなバイオハザード!?「イキアタリバッタリサイキンメーカー」

てんとう虫コミックス20巻「へやいっぱいの大ドラやき」に登場する「イキアタリバッタリサイキンメーカー」は細菌のDNAを組み換え、新種を作り出すという実験装置だ。

ある日、ドラえもんは「イキアタリバッタリサイキンメーカー」を使って、水からドラやきを合成する菌作りに挑戦していた。しかし失敗続きのため、ドラえもんは諦めて部屋を出て行ってしまうのだが、その後、のび太は装置を使って次々に新種の菌を作り出す。

そのうちの1つの菌で、ドラやきを作り出すことに成功したのび太。どんどん大きく膨らむドラ焼きに喜ぶも、それは「ドラや菌」という菌で、無限に膨らんで地球を押しつぶすという恐ろしいものであった。

細菌を作り出して人類を滅亡させるという設定は、ホラージャンルの映画などにも多い。この道具は多少メルヘンチックではあるものの、人類を滅亡させるという点ではやはり恐ろしい力を持った道具であろう。

■気候変動や外交問題まで!?「ひろびろポンプ」

てんとう虫コミックス21巻に登場する「ひろびろポンプ」は、物の大きさや土地を広げることができるひみつ道具だ。

ある日、“もっと広い場所で遊びたい!日本は狭い!”と愚痴るのび太。それを聞いたドラえもんは「ひろびろポンプ」を取り出し、土地の面積を広げる。

思い付きでどんどん土地を広げていくのび太だったが、その結果、日本列島の面積が増え、海流の流れを変えてしまい、全世界に気候変動をもたらす事態に陥ってしまった。

公園の面積をちょっとだけ増やすぐらいなら、きっと問題はなかっただろう。しかし日本国土の面積を増やしてしまえば、気候変動のみならず外交問題にも発展する。結論、外国との戦争の火種も生み出しそうな、恐ろしい道具である。

■人工的に作られる恐ろしい生物…「ガラパ星生物進化研究所」

『ドラえもん』の中でも難しく、リアリティがあって恐ろしいストーリーと言われているのがてんとう虫コミックス45巻に掲載されている「ガラパ星からききた男」である。

本作はのび太が未来人に連れられガラパ星という惑星に行き、そこにある生物進化研究所で自分のために働いてくれるアリ人間を製造してもらうストーリーだ。これにより、地球はそのアリ人間に征服されそうになってしまう。

ガラパ星生物進化研究所では開発技術博士のもと、顧客の要望に応じた新生物が次々と製造されている。最終的に危険生物を生み出す場所として閉鎖されるのだが、このストーリーは現実社会にも起こり得る話だ。

現在医療技術の発展とともにクローン技術も発展しており、いつかはマンモスも蘇るといわれている。しかし悪い方に利用されたら、とんでもない生物が誕生するリスクも否めないだろう。

今回紹介した『ドラえもん』のひみつ道具は、使い方を間違えたら人類が滅亡してしまいそうな恐ろしいものばかりだ。

しかしそれは現実社会においても同じだろう。たとえばスマホはとても便利な道具だが、間違って使えば人を傷つけ、争いごとも起きてしまう。

結局利便性のある道具というのは、使い方次第でどうにでもなるのだ。今回紹介したひみつ道具を参考に、私たちも正しい道具の使い方を模索していきたいものである。

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