年金を早めに受け取ると減額されますが、減額率は1ヶ月あたりわずか「0.4%」のようです。繰上げ受給はそんなに損なのでしょうか?

年金繰上げ受給のメリット:65歳前に年金を受け取る5つの利点

年金は原則65歳から受け取ることになっていますが、60~65歳の間に繰上げ受給を選択できます。ただし繰上げ受給を選ぶと、受け取れる年金額が減額されてしまいます。

しかし、繰上げ受給を選ぶメリットはありますので5つご紹介します。

早めに安定収入を得られる

60歳前後で早期退職した場合や老後資金が不足している場合には、年金を前倒しして受給すれば、早い時期から安定した収入を確保できます。退職金がすぐに支給されない場合やパート・アルバイトだけでは生活費が足りない場合などに役立つでしょう。

老後の生活設計が立てやすい

将来の収入がある程度分かれば、老後の生活設計も立てやすくなります。住居費や医療費、介護費などの老後資金を準備しやすくなり、安心して老後生活を送れるようになるでしょう。

住宅ローン返済に充てられる

住宅ローンの返済が残っている場合、繰上げ受給した年金を返済に充てることができます。毎月の返済額を減らせば、家計の負担を軽減できるでしょう。

教育費に充てられる

子どもがいる場合、教育費に充てることもできます。大学進学などの高額な教育費がかかる場合、繰上げ受給した年金が役立つでしょう。

自分や親の介護費に充てられる

60歳を過ぎると、健康状態に不安を抱える人は多くなります。また、高齢の親の介護が必要になるケースが多いでしょう。介護費用は高額になるため、年金を繰上げ受給して介護費用に充てる選択肢も考えられます。

60歳から繰上げ受給すると24%減額

繰上げ受給を選択した場合には、毎月の年金額は減額されます。昭和37年4月2日以降生まれの方は、1ヶ月あたりの減額率が0.4%です。つまり、65歳から受け取れる年金を60歳からに前倒しする場合、0.4×60ヶ月で24%も減額されてしまいます。

例えば、令和6年度の老齢基礎年金の満額が年額81万6000円で60歳からの繰上げ受給をする場合、約19万円も減ってしまうことになります。

繰上げ受給に関する減額以外のデメリット

繰上げ受給をすることで、その他の年金を受け取れなくなる可能性があります。遺族厚生年金や遺族共済年金などの受給権が発生しても、繰上げ受給年金との併給は受けられず、いずれかの年金を選択しなくてはなりません。

また、繰上げ請求した日以降、65歳前に寡婦になったとしても寡婦年金の受給権は得られません。同様に、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金の請求もできなくなります。

年金の繰上げ受給が適している人、適していない人

繰上げ受給が適している人と適していない人には、それぞれ特徴がありますので、詳しく解説します。

__・老後の生活資金が不足している:老後の生活費が不安定で、早めに年金を受け取ることで生活の安定を図りたい

・住宅ローンの返済が残っている:住宅ローンの返済や生活費などの支出があるため、早期に年金を受け取りたい

・教育費が必要:子どもの教育費や大学費用など、教育関連の支出がある

・介護が必要:自分や家族の介護費用を賄いたい。健康上や生活状況上の理由から、早期に年金を受け取りたい__

__・収入が安定している:定年退職後も働いているなどで収入が安定しており、急ぎの必要性がない

・老後資金が十分にある:老後資金が充実しており、年金の受給を待っても生活に支障がない

・65歳まで待っても問題ない:健康状態や生活条件が安定しており、定年までの収入で生活が可能

・減額された年金額で生活するのが難しい:繰上げ受給によって減額された年金額では65歳以降の生活が困難__

繰上げ受給を検討される際は、具体的な計画を立てて専門家と相談することをおすすめします。

繰上げ受給が得か損かはその人次第

繰上げ受給が損といわれることが多いケースには、「減額」「老齢厚生年金も一緒に繰上げ受給しなくてはならない」「その他の年金との併給はできない」という3つの理由が挙げられます。ただし、病気があって長生きに不安がある人や60歳以降で収入がゼロになる見込みの人では話が変わってくるでしょう。

繰上げ受給を検討する場合には、自分にとって損か得かをよく検討してから手続きを行うようにしましょう。

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 65歳前に老齢年金の受給を繰上げたいとき
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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