Z世代は意外に上司と飲むのが大好き! 誘い待つ彼ら取り込む秘訣...専門家がアドバイス「タイプの見極めを」

Z世代といえば、仕事とプライベートをしっかり分けるイメージが強く、接し方に悩む上司も多いのではないか。

ところが、実は上司との飲みやランチを望むなど、意外な面があることが、人事向けサービスを展開する調査会社アスマーク(東京都渋谷区)が2024年5月8日に発表したリポート「理想の上司像から見るZ世代部下との接し方」で明らかになった。

上司として、これはチャンスではないか。Z世代と有効な関係を築くにはどうしたらよいか。調査担当者に聞いた。

Z世代の理想の上司「笑いが好き、フレンドリーなタイプ」

アスマークの調査(2023年11月15日~21日)は、全国の20代~50代の正社員男女1200人が対象。それぞれ、Z世代(22~28歳)、Y世代(ミレニアル世代、29~42歳)、X世代(ポスト団塊ジュニア以上、43~59歳)を男女150人ずつの6グループに分けた。

まず、「理想の上司像」を聞くと、全世代で「新しい考え方を取り入れる」「ユーモア、笑いが好き」「友達感覚、フレンドリー」の方向に振れて、フレンドリーで親しみやすい上司像が求められていることがわかる【図表1】。

(図表1)Z世代にとって理想の上司像は?(アスマーク作成)

特に、男性Z世代は「協調性を重視する」「プライベートな話をする」「一緒に飲みに行く」「一緒にランチに行く」など、仕事外のコミュニケーションをとる上司を理想とする傾向が高い。

一方、女性Z世代は「終業後は関与しない」が、「業務上は細かくフォローしてくれる、管理主義」の上司を理想としているようだ。

【図表2】は、理想の上司との業務外の関わり方を、各世代に聞いたグラフだ。一緒に飲みやランチに行く上司を理想とするのは、女性よりも男性に多くみられる。

(図表2)Z世代が思う、理想の上司の業務外の関わり方は?

世代別でみると、男性Z世代の35%は、上司との酒やランチを希望しており、ほかの世代より高い。会社の飲み会に消極的な若者のイメージからは意外な結果だが、実は上司からの誘いを期待している人が多いのだろうか。

一方、女性では、Y世代とX世代を中心に上司にプライベートな時間は関与してほしくない人が多い。

さて、Z世代は理想の上司と、どんな業務上の関わり方を望んでいるのだろうか。

【図表3】を見ると、特に女性Z世代が、「細かくフォロー、管理主義が理想」とする割合が36.7%と、突出して高い。しっかり関わってくれる上司を理想としている。

(図表3)Z世代が思う、理想の上司の業務上の関わり方は?(アスマーク作成)

一方、男性Z世代は「管理主義が理想」は21.1%と低く、ほかの世代に比べ、男女差が際立っている。

上司が超多忙なので、Z世代は勤務時間外に話をしたい

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったアスマークの担当者に話を聞いた。

――理想の上司像が全世代とも共通に、「ユーモアのある、友達感覚な、フレンドリーなタイプ」という結果が出ました。
管理職には「厳しさ」も必要と思うので、「理想の上司」というより「理想の先輩」という印象を受けます。こういう「理想の上司像」は、過去のアスマークの調査でも出ているのでしょうか。

担当者 2021年の調査でも、全体としては同様の傾向でした。自由記述で「この人が上司で良かったと感じたエピソード」を聞きましたが、「トラブル時に、しかりつけるのではなく、今後に向けたアドバイスやフォローをしてくれた」といった回答が多かったです

また、別の調査で「上司に必要だと思う能力」について聞いた際は、「リーダーシップ」「傾聴力」「責任感」「決断力」の順で回答が多かったことから、仕事に対する厳しさも必要であるとは考えられているようです。

おそらく単に甘いのではなく、普段は優しいけれど仕事ができていざという時は頼りになる上司が理想なのかなと感じています。

――男性Z世代が、飲みやランチなど仕事外のコミュニケーションをとる上司を理想とするのは意外な結果です。Z世代は、仕事とプライベートをはっきり分けるのが特徴ではないでしょうか。

担当者 私にも意外な結果でした。推測ですが、人手不足でプレイングマネージャー形式の上司が増えているため、上司が忙しすぎて勤務時間中に十分に話をする時間が取れていないのではないかと思います。

そのため、仕事の悩みを相談したり、経験談を聞かせてもらったりという時間を、勤務時間外で取りたいと考えている可能性もありそうです。

Z世代女性は、飲みに行きたい人と行きたくない人が二極化

――なるほど。しかし、Z世代男性が飲みやランチに行くのが好きだが、Z世代女性がそれほどでもないということは、上司=男性を前提にしているからではないですか。
男性は上司に兄貴分的な付き合いを求めるが、女性はプライベートな場での「セクハラ的」関係を無意識に警戒しているとは言えないでしょうか。

担当者 そういった理由もあるかもしれません。一方で、女性の中でも年齢が高いY世代、X世代が飲みやランチを忌避する傾向があるのは、上司とコミュニケーションをとるよりも、早く仕事を終わらせて子育てや家事をしなければならない人が多いという理由も関係していそうです。

――Z世代女性が、飲みやランチなどのプライベートな場を避ける傾向が強いのならば、上司としてそうした機会にいろいろとフレンドリーにアドバイスしようと考えた場合、どうしたらよいでしょうか。

担当者 Z世代女性でも、上司と飲みに行きたい人が28.4%もいます。Z世代男性よりは少ないですが、よく見るとY・Z世代男性とほぼ同じ数値です。

一方で、行きたくない人も31.7%となっており、全世代の男性より多いため、飲みに行きたい人と行きたくない人が二極化している状況です。

相手がどっちのタイプかを見極め、対応するのがベストかとは思いますが、なかなか難しいですよね。笑顔で参加してくれるから飲み会が好きなのかと思っていたら、実はイヤイヤ参加していたという話もよく聞きます。

自分(上司)からは誘わないけど、部下から誘ってもらうのは歓迎だよ...と公言しておいて、実は一緒に飲みたいと思っている部下が声をかけやすいようにするというのも手かもしれません。

「困っていることない?」と小まめに声掛けを

――「かまってちゃん」の雰囲気を出すわけですか(笑)。ところで、Z世代女性が上司に「細かくフォローする管理主義」と「しっかり関わってほしい」と望む割合が、男性の2倍近い結果も意外です。
これはY・X世代の女性にも見られない傾向ですが、理由はどこにあるのでしょうか。また、上司がどう接したらよいでしょうか。

担当者 SNSネイティブのZ世代は、「察する」風潮が特に強いと言われています。自分からアピールしたり、目立ったりはしたくないけれど、ちゃんと仕事ぶりや努力を見ていて認めてほしかったり、困っているときにフォローしてほしかったり、という気持ちがあるのではと推測されます。

部下全員に細かく目を配れればいいのでしょうが、なかなかそうもいかないと思います。そこで、「困っていることない?」などと小まめに声掛けしたり、ほめる際にも「納期より2日も早く上げてもらって助かった」などと、本人の頑張りや良かった点を具体的に言及したりする。そうするだけでも、部下からすると、ちゃんと見てもらえていると感じられるかと思います。

――それはいいアドバイスですね。

担当者 業務時間外の関与については、世代によって差はありますが、関与を望む人も望まない人も一定割合います。Z世代だから...などとひとまとめに考えず、相手のタイプに合わせた接し方を考えることが大切かと思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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