日本女子サッカーの歴史的初V「ずっと男子がアジアを戦っている」…悲願の光景にGKが感慨【コラム】

女子ACLプレ大会の決勝で浦和Lが初優勝【写真:徳原隆元】

女子ACLプレ大会の決勝で浦和Lが初優勝

三菱重工浦和レッズレディースは埼玉駒場スタジアムで行われた「AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament Final」(AFC女子クラブ選手権ファイナル)で韓国の仁川現代製鉄レッドエンジェルズに2-1で逆転勝利。正式にスタートするACL女子チャンピオンズリーグ(女子ACL)のプレ大会ながら国際大会での初タイトルを飾った。

相手のカウンターをカバーしたDF長嶋玲奈がDFチュ・ヒョジュの寄せでボールロストしたところから、MFイ・ソヒに強烈なミドルシュートを決められる浦和Lらしからぬ失点でスタートしたが、そこから5バックのディフェンスを相手に、慌てることなくゲームを進めた。

前半22分には、キャプテンMF柴田華絵を起点とした鮮やかなパスワークから同点ゴールを奪取。MF栗島朱里のパスを受けたMF伊藤美紀が裏に送ったボールに反応したエースのFW清家貴子によるダイナミックなゴールが決まる。そこから4分後、MF塩越柚歩のコーナーキック(CK)にFW島田芽依が合わせて逆転に成功すると、システム変更してきた仁川の攻撃を耐え抜き、見事に勝利した。

一時は開催も危ぶまれた同大会のファイナルだったが、JFA、WEリーグ、浦和が一体となる形で仁川を招致する形で実現した試合で、相手もWKリーグの試合から来日して、中3日で試合というタイトなスケジュールだった。ホームの浦和もWEリーグの合間で、両チームともに難しい状況だったことは間違いないが、アジアの女子サッカーで大きな一歩となる大会に、浦和の名を刻んだことに大きな意味がある。浦和といえば“トップチーム”とも呼ばれる男子が、3度のACL制覇を成し遂げたクラブで、男女ともに応援するサポーターの同大会への思いも強い。

「ずっと男子がアジアを戦っているのを近くで見てきて自分たちもいつかって、ずっと口にしてきたことが今回実現して、しっかり結果につなげることができたことはレディースとしても、クラブとしても大きな成果だと思う。今後、大会が続いていくことが自分たちの願いですし、そこで優勝し続けることをまた目標に、毎年、毎年、優勝していきたい」

そう感慨深げに語るのは守護神のGK池田咲紀子だ。最初に与えた失点シーンについては「もちろんシュートは速かったですけど、自分の準備はできてましたし、ブラインドでもなくて。来た瞬間に自分で止められると思ったことが良くなかった。難しかったってみんなには言われましたけど、自分の感覚的には止められたという感覚が強かった」と反省するが、その後の安定感がチームの逆転を支えたことは間違いない。

1失点に抑えた守護神「プレ大会ですけど本大会のつもりで臨みました」

「2失点目をするというのはそんなに不安もなくというか。点を取ってくれる安心感があるので。前の選手への信頼も厚いですし、1(失点)で抑えれば前が点を取ってくれるだろうというのが、自分も含めたディフェンスラインはそういう信頼があると思う。そういうところで、大きく崩れないでいられるのかな」

落ち着きの理由をそう語る池田はリードを奪ったあとのゲームコントロールについても「勝っている状況は相手も絶対に点取りに来るし、変化はあるし、そこに対して焦るよりかはしっかり、1個1個のプレーで判断を間違えない。自分もそうだし、声かけとかもやっていたので。相手が変化してくるのは当たり前なので。慌てずにやれたかなと思います」

攻撃陣が点を取り、守備陣が守り抜く。なれない相手で、簡単な試合ではなかった中でも勝ち切った浦和の選手たち。自分たちの名前が歴史の最初に刻まれることについて池田は「プレ大会ですけど、自分たちは本大会のつもりで臨みましたし、本当のスタートというかスタートを優勝で決められたことは歴史的にも良いことだと思います。今後も自分がずっと、そこに名を残し続けられるように、もっともっと頑張らないといけない」と前を向く。

キャプテンの柴田も「本当に今回はたくさんの方のご尽力で、こういった決勝の舞台を作っていただいたなかで優勝できて、名前を刻めたことは良かったなと思っています」と語った。順調に開催の運びとなれば、今年の秋にスタートする女子ACLに日本から参加できる。WEリーグでも2シーズン連続の優勝が決まった浦和Lのさらなる躍進に期待したい。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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