スバル、2024年3月期 通期決算 売上高24.6%増の4兆7029億円、営業利益75.0%増の4682億円で増収増益

by 佐久間 秀

2024年5月13日 開催

2024年3月期 通期決算説明会に出席した株式会社SUBARU 代表取締役社長 CEO 大崎篤氏

スバルは5月13日、2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の通期決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

2024年3月期 通期の売上高は前年同期(3兆7744億6800万円)から24.6%増となる4兆7029億4700万円、営業利益は前年同期(2674億8300万円)から75.0%増となる4681億9800万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期(2004億3100万円)から92.1%増となる3850億8400万円。

また、国内生産台数は前年同期(57万5000台)から2万7000台増の60万2000台、米国生産台数は前年同期(29万9000台)から6万9000台増の36万8000台。連結完成車販売台数は前年同期(85万2000台)から12万4000台増の97万6000台となった。

スバルの2024年3月期 通期連結業績
2024年3月期 通期実績と2025年3月期見通しのポイント

発表会では、2024年3月期 通期実績についてSUBARU 取締役 専務執行役員 CFO 水間克之氏が解説を実施。

スバルの生産は、上期には半導体の供給課題、物流制約に影響を受けたものの、下期に入って生産が正常化。全体での生産台数は前年同期比で9万6000台増の97万台、連結販売台数は同12万4000台増の97万6000台とそれぞれ増加。

市場別に見た販売台数では、米国とカナダの市場で販売を大きく伸ばしており、堅調な両市場に向けた車両の出荷も増やしている。なお、米国市場における販売で、自動車ブランドで唯一となる21か月連続で対前年超えを継続しているという。

株式会社SUBARU 取締役 専務執行役員 CFO 水間克之氏
生産台数、完成車販売台数の2024年3月期実績
市場別に見た完成車販売台数実績

営業利益の増減要因では、販売台数の増加、販売価格の改定、市場ミックスの改善などによる「売上構成差等」で1875億円、米ドルが約9円円安になったことを主因とする「為替影響」で1265億円のそれぞれ増益要因。

一方、円安による為替換算影響や一過性の費用計上を含めた補償修理費が増加て631億円の減益が発生した「諸経費等」が1032億円の減益要因となり、米国市場向けの販売奨励金については、前年度から300ドル増の1200ドル/台となり、総額で443億円が販売奨励金として増加している。

2024年3月期実績における営業利益の増減要因
設備投資・減価償却費・研究開発支出について

2025年3月期は売上高171億円増の4兆7200億円、営業利益682億円減の4000億円、当期利益851億円減の3000億円を計画

2025年3月期の通期計画

続いて2025年3月期の通期計画では、北米市場における小売り販売は底堅いと見込むものの、足下の在庫状況、海外市場での販売動向などを踏まえ、2025年3月期の生産台数を対前年同期比で1万台減の96万台、連結販売台数を同4000台増の98万台に設定。

市場別の販売では、日本では「レヴォーグ レイバック」で販売の伸張を図り、米国でも前年度を上まわって過去最高水準の継続を達成するべく取り組んでいく。

これらの取り組みにより、2025年3月期は売上高は前年同期から171億円増の4兆7200億円、営業利益は前年同期から682億円減の4000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期から851億円減の3000億円を計画している。なお、為替レートで米ドルを上期145円、下期139円、通期として142円に設定している。

2025年3月期における生産台数、販売台数の通期計画
市場別に見た生産台数、販売台数の通期計画
通期計画における営業利益の増減要因
2025年3月期で予定する設備投資・減価償却費・研究開発支出
株主還元について

次世代「e-BOXER」を「クロストレック」にも搭載

新体制方針アップデートのポイント

また、決算説明に先駆け、SUBARU 代表取締役社長 CEO 大崎篤氏が自身の社長就任後に取り組んでいる新体制の方針アップデートについて説明を行なった。

スバルでは2023年6月からスタートした大崎社長による新たな経営体制で事業に取り組んでおり、先行きの見通しが難しい段階では規制やマーケットの動向を注視して、変化に対して柔軟に対応。そこからある程度の方向性が見えてきた断面で一気に拡張していく、柔軟性と拡張性という観点が極めて重要との認識でさまざまな取り組みを進めているという。

事業環境の大きな変化によって先行きの見通しが難しくなっている現状では、BEV(バッテリ電気自動車)の移行初期と位置付ける2025年~2026年で注力する各種取り組み内容をアップデート。カーボンニュートラル実現に向けた手段として、中長期的な視点でいずれはBEVが主軸になっていくとの見方は変わらないとの方針を維持しつつ、商品開発、車両生産、生産工場といった領域で進めているアップデートについて説明した。

BEV開発・生産

移行初期となるBEVの開発と生産については、これまでBEV開発では自社開発、アライアンスの活用など多彩な選択肢を検討してきたが、2026年末までにラインアップする4車種のBEVについてはトヨタ自動車との共同開発で行なうと方針を定め、両社の知見を持ち寄って開発に注力。すでに発売しているスバルの「ソルテラ」、トヨタの「bZ4X」に続くモデルとして、スバルの矢島工場で生産する共同開発の次期SUVはトヨタにも車両供給を行ない、トヨタの米国工場で生産される次期SUVはスバルの販売ラインアップに組み込まれる。こうした共同開発、相互生産、相互供給を活用することで、先行きの見通しが難しい時代でのリスク軽減、開発や生産といった領域での柔軟性を確保していく。

HEV商品/生産

また、HEV(ハイブリッド車)については、BEV移行の初期に極めて重要となる商品であると位置付け、トヨタが開発したハイブリッドシステムをスバルの水平対向エンジンと組み合わせた次世代「e-BOXER」を、発表済みの「フォレスター」に加え、「クロストレック」にも展開を拡大すると新たに発表。HVラインアップを強化することにより、商品の柔軟性を確保してユーザーの選択肢を増やす計画としている。

このほか、次期フォレスターはガソリンエンジン搭載車とe-BOXERモデルについて、国内工場に加えてSIA(スバル オブ インディアナ オートモーティブ インク)でも将来的に生産を実施。日米での生産領域における柔軟性も確保していく。

2024年~2026年の生産ロードマップ

生産のロードマップも示され、2024年秋から次世代e-BOXERの基幹ユニットとなるトランスアクスルをリニューアルしたスバル 北本工場で生産開始。これを搭載する次世代e-BOXER車は国内にある本工場、矢島工場で生産され、将来的にSIAでの生産車両にも搭載して販売を行なう計画。また、矢島工場ではガソリンエンジン搭載車とBEVの混流生産にも取り組んでいき、ここで生産するBEVはトヨタ向けの供給も実施して、需要を踏まえた柔軟性ある車両生産を確立する。

「ひとつのSUBARU」化に向けた今後の取り組み

今後に向けては、BEV移行初期となる2026年までの期間に、開発、商品、生産の各領域で行なう取り組みにより、環境変化に対する柔軟性を確保。その先にあるBEV普及期に向け、モノづくり革新、価値作りの成果が求められると述べ、1月から稼働した「イノベーション・ハブ」で会社の垣根を越えて技術開発などの検討を進める大部屋活動、他社との協業などによってもの作り革新、価値作りを具現化する活動を推進していると説明。

1月に実施した組織改革では、「モノづくり革新」「バッテリービジネス」「デジタルカー」「コネクトビジネス」「コスト改革」という5つの領域を核心的重点テーマとして位置付け、各領域を取りまとめるCXO(Chief X Officer)のもと、部門を超えてモノづくり革新や価値作りのスピードアップを図っている。

これらの取り組みにより、開発、製造、サプライチェーンが高密度につながる「ひとつのSUBARU」化を進め、2028年末までに市場投入するBEVでは、アライアンスの知見を生かした自社開発化を目指すと意気込みを述べ、さらに今後の開発で得た知見をBEV以外のICE系商品に活用し、商品力を強化していくと語った。

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