「合間で練習してます」堂安律が明かしたヘッド弾の舞台裏。“怒りのジェスチャー”については「あまり文句は言えないですけど...」【現地発】

ハイデンハイムをホームに迎えたブンデルリーガの第33節で、フライブルクの堂安律が今季リーグ6点目をマークした。直近9試合で4ゴール・3アシストと絶好調の日本代表MFは、今季限りでクラブを離れることになっているフライブルク一筋12年の指揮官クリスティアン・シュトライヒに確かな成長を見せている。

組織だった守備に定評があるハイデンハイムに対してフライブルクは主導権を握り、攻め続けたものの、ゴールが遠い試合となった。1試合を通してポスト直撃、至近距離からGK直撃、バー直撃と惜しいところでゴールにならないシーンが散見されていただけに、堂安がしっかりとゴールを決めきったというのは大きい。

29分、一度はクリアされたボールをハンガリー代表MFロランド・シャライが拾って繋げたときに生まれたゴール前のスペースを見逃さなかった。マークしていた相手を引きはがして走りこむと、左SBクリスティアン・ギュンターの鋭いクロスにダイビングヘッドでゴールネットを揺らした。

どんぴしゃりのタイミングで決めたゴールだっただけに、手ごたえもあったことだろう。ゴールシーンについては次のように答えている。

「そうですね、ヘディングは一つ練習しているところがある。やっぱり頭で点取ると、自然と数字もついてくる。右足と頭というのは少しですけど、合間で練習してます。少し努力が実ってよかったと思います」

【動画】堂安律の鮮烈ダイビングヘッド弾
ヘディングでのゴールというと、8節のボーフム戦でも挙げている。シュトライヒ監督に堂安のヘディングについて聞いたことがる。背丈があるわけではないのに、頭で決めらるのはどこにポイントがあるのだろう?

「いやいや、リツは(ヘディングが)できる選手だよ。いいタイミングで入り込むことができる選手だ。中にいるDFはクロスに対してボールがくるのを待つことになる。だからアウトサイドから中へ入り込んで、DFの前にうまくもぐり込んだら、ゴールを決めることはできるんだ。あのゴールは彼の自信にとってとてもいいものになる」

ここ最近はゴール前だけではなく中盤での競り合いの中でもヘディングの使い方にも成長の跡を感じさせる。落下点のポジショニングをめぐる争いで優位に立ち、タイミングよく飛び上がることで空中戦でも勝利する。競り勝つだけではなく、ヘディングで的確に味方へパスを送ることで、チームの二次攻撃の迫力を高めている。

「感覚というか、飛ぶタイミングというか。そういうのが練習してると大体わかってくると感じてます」

自分にボールを預けてくれたら仕事をするという自信にあふれている。ゴールを決めながら、前半は堂安にいい形でパスがくる機会がそこまで多くはなかった。鋭いオフ・ザ・ボールの動き出しからフリーでペナルティエリアに走りこみながら、パスが出こず、怒りのジェスチャーをするシーンもあった。

「チームとしてシュートまでいけていた分、僕にパス出さなくてもいいという感じがあった。そこはあまり文句は言えなかったですけど」と理解を示したうえで、「前半、もう少しボール欲しかったなっていう思いはある。もっと決定的なとこ作れたと思うんで。もう少し僕に渡してくれればクオリティの高さを見せれたなと思う」と振り返っている。

もちろん反省の弁も忘れない。後半は相手にチャンスらしいチャンスを一つも与えない試合運びながら、勝ち切れなかったのは事実なのだ。

「後半はちょっとオープンな試合展開になって僕もちょっとばててたんで、なかなかパワーを出し切れなかった。チームとしては、相手のチャンスも本当にあの1点のところだけだったんで。僕たちが勝つに値したと思いますけど、最後のクオリティが足りなかったなと思います」

今季も残り1試合で終わる。シーズン序盤は調子を崩したり、ポジションのコンバートもあったりといろんな経験をした堂安。前半戦は1ゴール・1アシストにとどまった。イライラが募った時期もあったことだろう。それでも自分と向き合い、取り組み、それを乗り越えてきた。

「今日はそれほど良かったゲームではないなって自分では思ってますけど、ただこうやって数字を残せる選手って悪いときでも残せると思うし、特徴だと思う。悪い中でもアシストとかゴールとか、そういうので絡めてるんで、そういうのは良くなっていると思います」

今季優勝したレバークーゼンの両翼にはアレハンドロ・グリマルド、ジェレミー・フリンポンという驚異のウイングバックがいた。攻撃でも守備でも重要なタスクをこなし、違いを生み出すプレーを積み重ねる選手だ。

世界のサッカーではこれまで以上にハイブリッドな選手が求められている。堂安はそうした舞台で戦うための大事なベースをこの2年間で築き上げた。そしてさらなる成長に向けて、その歩みを止めない。

取材・文●中野吉之伴

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