トヨタ決算、スイッチ後継機、日中緊迫…スイスのメディアが報じた日本のニュース

(EPA/FRIEDEMANN VOGEL)

スイスの主要報道機関が先週(5月6日〜12日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。

今回ご紹介するのは①トヨタ、円安とHV戦略で過去最高益②ニンテンドースイッチ後継機への期待③危険な日中のにらみ合い、の3本です。

トヨタ、円安とHV戦略で過去最高益

トヨタ自動車が8日発表した2024年3月期決算は、本業のもうけを示す営業利益が5兆3529億円と、日本企業として初めて5兆円台を達成しました。ドイツ語圏の日刊紙NZZは、「ハイブリッド車(HV)が牽引し96%増益」と伝えました。

記事は、総販売台数が1100万台を超え、利益率11.3%を誇るトヨタは「世界の自動車産業においても別格であることを強調した」と評しました。販売台数では独フォルクスワーゲンを、利益率は独BMWを大きく上回っています。

増収増益の背景には円安もありますが、HV人気の高まりが大きな牽引役になっています。「多くの市場で消費者は電気自動車(EV)の購入を躊躇しており、その前の移行段階としてHVを好む傾向がある」。それはトヨタがEVよりHVを重視する長年の戦略そのものだとしています。

トヨタは2026年のEV販売目標を150万台に据え置きましたが、中国のEVブームには警戒を強めています。NZZは宮崎洋一副社長の言葉を引用し「トヨタは価格競争にはできる限り距離をおき、将来の成長に向けて生産網を維持できるよう十分な措置を講じたいと考えている」と報じました。

記事は、トヨタが利益の一部を電動化や自動運転向け人工知能(AI)開発への再投資に回すと続けました。成長停滞期に備え、販売店などの従業員育成に多額を投資する方針だと説明。労働力不足が深刻化するなか「佐藤恒治社長はトヨタ自身への負担も軽減したい」として、65歳以上の再雇用や資格取得の奨励に努めていると解説しました。(出典:NZZ/ドイツ語)

ニンテンドースイッチ後継機への期待

任天堂は7日の決算会見で、ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機の詳細を、2025年3月末までに発表することを明らかにしました。スイスでは仏AFP通信の関連記事が日刊紙ル・マタンや無料紙20min.などに転載されました。

後継機については年内に発売されるとうわさされていたため、任天堂の発表は「投資家の失望を買った」と言います。また任天堂の業績目標からすると、「後継機が来年の業績に与える影響はわずか」だとしました。

記事は任天堂について「競合他社であるソニーやマイクロソフトと比べて、新型ゲーム機の予測がはるかに難しい」ものの、発売された機器は常に「それまでの能力を超えたイノベーションを備えている」と説明しました。今回も後継機については厳重に秘匿されていますが、アナリストの多くは「スイッチのような携帯・テレビ接続のハイブリッドモデルから離れることは、任天堂にとってかなりのリスクになる」と伝えました。(出典:ル・マタン/フランス語)

危険な日中のにらみ合い

「投資家は米国に注目しているが、日中関係の進展は経済的に大きな影響を与える可能性がある」――フランス語圏のオンライン金融メディアallnews.chは、ジュネーブにあるプライベートバンク「バンク・ヘリテージ」のジャン・クリストフ・ロシャ最高投資責任者(CIO)の寄稿を掲載しました。

ロシャ氏は、人口問題や不動産、消費の停滞、デフレと言った複合的な問題を抱える中国にとって、数十年に渡る停滞から抜け出しつつある日本は「不確実性の源となっている」と指摘します。特に人口減少で生産性の向上が急務となるなか、「日本円の暴落は、両国が競合する外部市場(特に地域市場)における中国の競争力を危険にさらしている」。これが中国内政への脅威となっているとしています。

日本政府は急激な円安を止めるために為替介入を試みていますが、「金融の歴史を振り返ると、成功の可能性は低い」。また日銀の利上げに伴い今後金利が上昇していけば、大規模なリパトリエーション(本国への資金還流)を招き、「台湾や韓国(と米国)の中央銀行が行動を起こさない限り、必ず衝撃を引き起こすだろう」と予測しています。(出典:allnews.ch/フランス語)

【その他、スイスで報道されたトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発」(記事/日本語)でした。他に「スイス北東部でオーロラ観測」(記事/日本語)、「ジュネーブ市、差の歴史示す記念碑を撤去しない方針明言」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は5月21日(火)に掲載予定です。

要約:ムートゥ朋子、校閲:大野瑠衣子

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