『アンメット』“ミヤビ”杉咲花を支えたチームの絆 “三瓶”若葉竜也の言葉を超えた献身

『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)は、記憶障害の脳外科医ミヤビ(杉咲花)の再生を描く。5月13日に放送された第5話で、ミヤビは記憶を失ってから初めて術者として手術を担当した。

第5話の患者は住職の成海(三宅弘城)。読経中に倒れて、もやもや病の診断を受けた。もやもや病は、脳につながる内頚動脈が細くなり、不足した血流を補うために広がった毛細血管がもやがかかったように見えることから命名された。特定疾患、いわゆる難病にも指定されている。

症状を改善するバイパス手術を、ミヤビはメインで担当することになった。自分にはできないと辞退するミヤビに、三瓶(若葉竜也)は「あなたはできる」と繰り返し言い聞かせた。星前(千葉雄大)の話を聞いたこともミヤビの決断を後押しした。

手術を成功させるため、ミヤビは三瓶の指導の下、血管をつなぎ合わせる吻合練習に励む。ミヤビを支えたのは、病院の仲間たちだった。看護師の森(山谷花純)は、前日からミヤビの部屋に泊まり、手術が終わるまで日記を全て読まないように伝える。看護師長の津幡(吉瀬美智子)は、不安なミヤビの心中を察して声をかけ、研修医の風間(尾崎匠海)は余計な気を使わせないように振る舞った。本番でも、麻酔科医の成増(野呂佳代)が星前をいじって緊張をほぐすなど、ストレスなく手術を行うために協力した。

なかでも、やはりというべきか、三瓶の献身は突出していた。吻合練習のために新鮮な手羽先を購入し、いつでも取り出せるように冷蔵庫に保管。作りすぎて余ったミヤビのロールキャベツを何も言わずに食べた。ミヤビは、少し前にも同じ料理を作って持ってきたのだが、前日までの記憶がないため、そのことを忘れていた。三瓶のさりげない優しさが胸に沁みる。

婚約者だった三瓶は、ありのままのミヤビを受け入れようとする。それに加えて、医師として、今回の手術が持つ意味を理解していた。難易度の高い手術を成功させることは、医師としてのミヤビの今後を決定づける。たとえ、ミヤビが自分との過去を思い出さなくても、医師として陽の当たる道を歩いて行けるように、そのためなら、なんでもサポートする心境だったのではないか。

正味5分を超える手術シーンは、ミヤビが自分自身と向き合う過程でもあった。脳にはりめぐらされた微細な血管を、ミヤビは顕微鏡を通してのぞき見る。何もない空間でミヤビがたたずむ映像と手術室の風景を交互に切り替えることで、孤独な作業であり、命と対峙する手術の厳粛さが表現されていた。成功を祈る関係者を捉えたカットと相まって、緊迫感あふれる場面となった。

成海の手術は、ミヤビが三瓶を信じられるかを試すものでもあった。手術を終えて視界に飛び込んできたのは、支えてくれた仲間たちの姿。風間が言う「チーム医療」は、全科専門医を目指す星前へのアンサーになっていると同時に、ミヤビが進んでいく道を指し示していた。三瓶が「目に焼き付けてください」と言った景色を、ミヤビは「忘れたくない」と言う。明日になれば、今日あったことは忘れてしまう。けれども、困難をくぐり抜けた絆はなくならないはずだ。三瓶が言うように「強い感情は心が覚えている」からである。

ミヤビの記憶障害の原因をめぐっては、主治医の大迫(井浦新)が決定的な事実を握っているようだ。三瓶は綾野(岡山天音)を通して、ミヤビの診療記録を入手しようとする。綾野は麻衣(生田絵梨花)と結婚して、実家の病院を継ぎ、西島医療グループの傘下に入るつもりだ。背景に同グループの中核である関東医大病院の建て替えも絡んでおり、物語の行方は予断を許さない。
(文=石河コウヘイ)

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