【ミャンマー】海外就労管理に動く軍政、事業者にくぎ[経済]

ミャンマー軍事政権が国民の海外就労管理に動いている。今月に入って男性を対象とした渡航手続きを一時的に停止し、市民の不安をあおった。軍政は海外で働くミャンマー人への課税による外貨獲得を目指しているほか、国内の送り出し機関には脱税しないようくぎを刺している。

タイやマレーシアなどに出稼ぎしているミャンマー人労働者は数百万人に上るが、不法に就労する事例が後を絶たず、長年の課題となってきた。3年前のクーデターで実権を握った国軍は、米欧からの制裁や外資企業離れなどで保有する外貨が減る中で昨年、増加基調にあった海外就労者に課税する方針を発表。旅券(パスポート)更新時の納税を義務付けつつ、正規移民労働への切り替えなどを促してきた。

11日付国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによると、移民当局は送り出し機関に対し、2023年度(23年4月~24年3月)に手配した海外労働許可証「スマートカード」(OWIC)と実際に送り出した労働者のリストを17日までに提出するよう義務付けた。ごまかしや脱税があれば、「厳しく罰する」としている。

労働当局によると、送り出し機関の登録数は4月下旬時点で564社となっている。

ミャンマーでは今月、男性国民の海外就労手続きが一時止まり、6日に部分的に再開となった。現地では、同日の労働当局によるタイへの送り出し機関に対する「22歳未満あるいは31歳を超える男性の労働者は海外就労の契約を結べる」(編注:ミャンマーでの年齢の数え方は日本と異なる)との回答が物議を醸している。国軍が2月に発表した徴兵制の対象は一般男性で18~35歳。どのような具体的基準が設けられているかは不明瞭だが、ミャンマー市民の間では「若者の出国制限」と警戒する見方が広がっている。

ただ、タイ外交筋は13日、NNAに対し「(就労手続きは)制限なく再開されているようだ」と指摘した。両国政府の覚書に基づくミャンマー人労働者のタイ就労査証(ビザ)の申請者リストには、依然として男性が多く含まれているという。

軍政は少数民族武装勢力や民主派武装組織との戦闘の激化や経済不振、現地通貨チャット安の進行などに直面。応急措置で対応しようとしており、打ち出す政策は一貫性に欠ける。情報が錯綜(さくそう)して市民を混乱させる中、送り出し機関の関係者はNNAに「不信感を強めた若者による近隣国への密入国を増やしてしまう恐れがある」と話した。今後の動向を注視していくという。

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