べるもんた出迎え健康に 城端線・氷見線沿い、南砺・田中 高齢者、1日4回手振り

「べるもんた」を見送る田中の住民=4月13日、南砺市田中

  ●往復の合間に体操

 JR城端線・氷見線で運行されている観光列車「べるもんた」沿線の南砺市田中で、列車に向けて手を振るお年寄りたちをよく見掛ける。2015年に活動を始めた加越線資料保存会の村田伸夫会長(69)によると、雨の日も雪の日も続けているそうだ。さぞ大変な労力かと思ったが、「みんな楽しみにしとる。健康にも良いしな」との返答だった。手振り活動の現場をのぞいてみた。(南砺支局長・麻本和秀)

 11日午後2時22分、福光駅から約650メートル北側の南砺市田中では、住民ら10人がJR城端線の線路と並行する道路に並び、緑色の手製の小旗を振っていた。城端発高岡行きの「べるもんた」を見送るためだ。車両は住民の歓迎を待っていたかのように通過する時に速度を緩め、乗客や車掌も窓越しから笑顔で手を振って応えた。

 「べるもんた」は毎週土曜日に城端線の高岡駅-城端駅間を1日2往復する。2015年の運行開始以来、田中の住民は1日4回、歓迎活動を続けている。

  ●「盛り上げたい」呼び掛け

 活動は、自宅が田中の城端線沿線にある村田さんが、「城端線に観光列車が運行するとは、夢みたいな話だ。みんなで盛り上げたい」と住民に呼び掛け、自宅前を「お見送りスポット」として始まった。

 国鉄・JRのOB福田洋次さん(82)は「コロナ禍の時でも続けた。城端線に対する住民の愛情を伝えている」と胸を張る。

 実は、「べるもんた」は高齢者の健康維持にも役立っている。介護予防教室「田中しあわせ会」の高齢者が、偶数月の第2土曜に見送り活動に加わるためだ。

 会員は午前中、高岡発城端行きの「べるもんた」に手を振った後、城端駅から戻ってくるまでの時間を利用して、健康体操に励む。

 村田さんは自宅ガレージに椅子とお茶を用意して臨時休憩所を開設。体操の後、参加者が座って雑談をして過ごし、踏切の警報機が鳴ると再び道路に並ぶ。

 同会の世話をする織田紀子さん(69)は「べるもんたの運行日をみんな楽しみにしている」と話す。

  ●福野駅ではガイド歓迎

 福野駅でも、観光ガイド「市の里ガイド」の勢濃力夫さん(71)=市観光協会福野支部長=、長谷川貢さん(66)と仲間の片山幸雄さん(70)がホームで出迎え、「べるもんた」が到着すると手を振って歓迎する。

 運行当初から活動する勢濃さんは「子供が夜高太鼓を披露し、夜高祭をアピールした時もある。福野駅で降りる観光客が徐々に増えた」と手応えを語る。

 村田さんと勢濃さんは「城端線・氷見線があいの風とやま鉄道に移管後も運行を続けてほしい」と願う。運行して9年、「べるもんた」は地域にとってなくてはならない存在となっている。

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