本命・阪神、対抗は巨人 伊勢孝夫氏が〝大混セ〟を解析「ヤクルトは藤浪晋太郎獲得に動くのも手」

巨人・阿部監督(左)と阪神・岡田監督

今季ここまでのセ・リーグは、首位・阪神から最下位・ヤクルトまでの6チームが13日現在で3・5ゲーム差以内にひしめく〝大混セ〟状態となっている。白熱したせめぎ合いが今後も続くことが予想されるが、最終的にリーグの覇権を握るチームはどこになるのか。本紙評論家の伊勢孝夫氏が6球団の現在地と今後の課題を占った――。

【伊勢孝夫 新IDアナライザー】リーグ優勝の筆頭候補が阪神である私の考えは今も依然変わっていない。主力野手陣の打撃不振が続く中、スタメンオーダーを固定できずにいるが、それでもベンチ内の岡田監督の表情から余裕のようなものを感じるのは私だけだろうか。前川、糸原、小幡などベンチにも力のある選手が控えているし、DHが使える交流戦から夏場にかけて、頭一つ抜け出してくるのではないかとみている。投手陣の層の厚みはそれ以上。伊藤将の不振は確かに痛いが西純、ビーズリー、門別、そしてトミー・ジョン手術からの復帰を目指す高橋がその穴を十分に埋めてくれるだろう。

対抗馬は巨人だ。ベテラン右腕の菅野が復活したことは心強いが、それでも投打の全体的な質量で阪神に劣る印象は拭えない。私が注目しているのは新任の阿部監督の手腕だ。状態が悪かったプロスペクト・秋広に開幕二軍を命じる厳しさを見せた一方で、門脇をここまで全試合でスタメン出場させるなど、自身のカラーを打ち出している。守りに重きを置く指揮官の成長こそが、このチームの最大の〝伸びしろ〟なのではないだろうか。

現在3位に付けている広島は床田、大瀬良、九里、森下らの先発4本柱に加え、守護神の栗林、セットアッパーの島内と投手陣の充実ぶりが目を引く。このチームの課題は明確で、打線の軸となる長距離砲の不在だろう。堂林、小園らに4番を託したところで無理がある。私がオーダーを組む立場なら腹を据えて末包を4番に固定し、シーズンを通した成長を促したい。それがチームの未来にもつながるはずだ。

DeNAは筒香の加入で打線全体の迫力が一層増した感がある。オースティンの戦線復帰も近いと聞くし、打撃面の見通しは明るいだろう。とはいえ昨季限りでチームを離れた今永、バウアーら先発投手ローテの穴をもう少しでも埋められない限り、夏場以降の戦いは苦しくなる。現有戦力の底上げに期待するしかない。

投手力を強みとする中日が、ここまでのシーズン序盤の戦いで健闘できていることは想定の範囲内だった。だが、鉄壁の守備力を誇る田中、村松の新二遊間の出現はチームにとって前向きなサプライズだろう。積年の課題である得点能力の低さは一朝一夕に解決できるものではないが、身上とする守りの野球を貫ければ上位浮上も見えてくるはずだ。

ヤクルトは不動の4番・村上の存在に加え、サンタナ、オスナ、長岡が好調を持続。打線の破壊力こそ健在だが救援投手陣の質量が乏しく、ここまでは苦しい戦いを強いられている。オンドルセクとバーネット、田口にマクガフと、このチームが優勝する時には必ず強力な勝ちパターン継投陣が存在していた。ならば米メッツ傘下の3Aでもがき苦しんでいる右腕・藤浪晋太郎の獲得に今から動いてみるのもありではないだろうか。伸び伸びとしたカラーのチームでもあるし、うまくいけば藤浪自身の再生にもつながるかもしれない。

(本紙評論家)

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