市川猿之助 心中騒動の“悲劇の実家”で今も生活…事件から1年目前に目撃した「現在の姿」

昨年7月、保釈された猿之助は報道陣に向かって頭を下げた

キャップをかぶり、マスクとサングラスを着用して電動自転車に乗っていたのは、四代目市川猿之助(48)だった。自転車の前のカゴには、柴系らしき犬がチョコンと座っていた。

本誌が東京都内で猿之助を目撃したのは5月上旬のこと。昨年5月18日に彼が引き起こした“一家心中事件”から1年がたとうとしている。

「猿之助さんが父・市川段四郎さん(享年76)と母・延子さん(享年75)と一家心中を図った事件は、歌舞伎界のみならず日本中に大きな衝撃を与えました。猿之助さん自身は命を取り留めたものの、自殺ほう助の罪で逮捕され、昨年11月に懲役3年・執行猶予5年の判決が確定しています」(芸能関係者)

名門・澤瀉屋の看板役者だった猿之助の逮捕によって、歌舞伎界は大混乱し、彼が出演予定だった複数の舞台が公演中止に追い込まれた。

事件後の昨年9月には、市川猿翁さんも83歳で逝去。重鎮を立て続けに失った澤瀉屋だが、2月からは「スーパー歌舞伎」の代表作の1つである『ヤマトタケル』を公演中だ。

「弱冠二十歳の市川團子さんが主演を務めており、5月6日から19日まで名古屋・御園座で公演しています」(前出・芸能関係者)

大役に挑んでいる團子に注目が集まっているが、もっとも期待を寄せているのが父・市川中車(58)だろう。中車は3月3日付の読売新聞のインタビューで息子について次のように語っている。

《彼の精神には『猿翁を継ぐ』という意思が内蔵されている。沢瀉屋は団子が継げばいいんです。最初からそう決まっている。団子という名前がそうだから。僕ができることはたかが知れている。陰に隠れて家の捨て石となるのが本望です》

“息子・團子こそ、澤瀉屋の正統な後継者”と明言するいっぽうで、いとこである猿之助に関しては、口を濁していた。実は『ヤマトタケル』公演にあたっては、猿之助が團子を指導したのだが、その点に関する質問に対しては、

《1対1でやっているので稽古を見ていないし、様子を聞くこともないです》

と語っただけ。また、“猿之助さんから澤瀉屋を任されたのか”という質問に対しても、

《(言葉で直接)『頼む』と言われたわけではない。でも、言わずとも分かることはいっぱいある。『こうして良いでしょうか』とメールで尋ねることももちろんあるし、まだ聞けないこともたくさんある》

と、微妙な関係性が続いていることをにおわせている。

■“中車が澤瀉屋を完全に掌握した”という報道も

澤瀉屋の事情に詳しい歌舞伎関係者は、中車と猿之助の現在の関係について次のように語る。

「澤瀉屋のお家芸であるスーパー歌舞伎の主演を團子さんが務めていることから、“中車が澤瀉屋を完全に掌握した”といった報道もしばしば見受けられますが、実情は異なります。現在の澤瀉屋を陰で取り仕切っている人物がいて、中車さんは世間から想像されているほど発言力が強くないのです。

その人物とは、猿翁さんの妻・藤間紫さんの息子であるA氏です。A氏は、猿翁さんが立ち上げたスーパー歌舞伎のプロデュースなども務めており、猿翁さんが病で倒れた後は、一門の指導にも尽力していました」

藤間紫さんと言えば、中車にとっては、父・猿翁を略奪した因縁のある女性だ。

「しかし中車さんが、猿翁さんと和解するにあたっては、紫さんの口添えもありました。中車さんとしてもA氏をないがしろにはできないのです。

そのA氏が進めているのが、猿之助さんの復帰計画なのです。『ヤマトタケル』で、猿之助さんが團子さんを指導したのも、その一環と言えます。いま検討しているのは、猿之助さんが演出家として手がけてきた舞台のクレジットを、いつ復活させるのかということです。

もちろん演出家はともかく役者としての近日中の復帰は不可能です。しかし猿之助さんの執行猶予が明ける5年後に、“四代目猿之助”として舞台に復帰することを目指しているのです。

一時期は梨園から完全に身を引くのではないかとみられていた猿之助さんですが、彼自身も復帰に意欲を燃やしています。“まだ当分は團子に、猿之助という名跡は譲らない”という心境なのでしょう」(前出・歌舞伎関係者)

5年後の復活を目指す猿之助は、いまも実家で生活している。

「事件当日、2階でご両親が、地下室で猿之助さんが発見されました。その“悲劇の家”で、暮らし続けていることも彼にとって贖罪の1つなのかもしれません」(前出・歌舞伎関係者)

その贖罪生活の支えになっているのが、最近になって飼いだした愛犬のようだ。

「以前は、ほとんど外出していなかった猿之助さんですが、最近はワンちゃんを自転車に乗せて、毎日のようにお出かけされています」(近所の住人)

「一般社団法人 日本グリーフ専門士協会」代表理事で公認心理師の井手敏郎さんは次のように語る。

「動物を飼うということ自体が、生きようとする気力の証しともいえます。一般的に言っても、何らかの事件によって人間関係が変化することはよくあることです。たとえ友人や知人が離れてしまっても、動物たちは人間を社会的には評価せず、無条件に愛情を注いでくれます。人間からは得られない安心感を動物たちから受けることもあると思います」

『ヤマトタケル』のラストシーンでは、亡くなったヤマトタケルが白鳥となって大空に飛び立つ。猿之助も、再び飛び立つ日を待ち続けているのか。

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