北海道新幹線札幌開業はいつになる?「長万部先行開業」も難しそうで

北海道新幹線の札幌延伸について、2030年度の開業が困難であることが、正式に発表されました。状況と部分開業の可能性をみてみましょう。

3トンネルで工事遅延

鉄道・運輸機構は、北海道新幹線札幌延伸工事について、目標とした2030年度末までの開業が困難であることを、正式に国に伝えました。

国に伝えたのが2024年5月8日。10日には、国交省が新たな開業時期などを検討するための有識者会議を開催しています。

公表された資料によると、工事が大きく遅延しているのは、渡島トンネル(新函館北斗~新八雲)、羊蹄トンネル(長万部~倶知安)、札樽トンネル(新小樽~札幌)3つのトンネルです。

遅延の理由としては、トンネル発生土受入地確保の難航、予期せぬ巨大な岩塊の出現、想定を上回る地質不良などを挙げています。順にみていきましょう。

画像:「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)工事の状況について」(鉄道・運輸機構)

渡島トンネルの状況

まず、渡島トンネルは、総延長32.7kmと最も長いトンネルです。掘削延長は23.8kmで、掘削率は73%です。

工事遅延の原因は、地表面が陥没してトンネル内に土砂が流入し、長期間にわたり工事が停止したこと。また、地質不良のため、掘進速度が計画よりも大幅に低下していることも原因です。

それに加えて、重金属を基準値以上に含む「対策土」の受け入れ地の確保も遅れています。こうした理由により、3~4年の遅延が発生しています。

画像:「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)工事の状況について」(鉄道・運輸機構)

羊蹄トンネルの状況

次に、羊蹄トンネルは、総延長9.7kmで、掘削延長は6.0km、掘削率62%です。

工事遅延の原因は、シールドマシン前方に十数メートル四方にも及ぶ巨大で堅固な岩塊群が出現し、長期間掘進が中断したことです。岩塊群を撤去するため小断面の迂回トンネルを掘削し、なんとか撤去後に掘進を再開したものの、2年半の遅れが生じました。

加えて、大雪の影響で掘削設備の現地組み立てにも遅れが生じました。さらに、シールドマシンの刃の交換などにより、現時点で約4年の遅延が生じています。

画像:「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)工事の状況について」(鉄道・運輸機構)

札樽トンネルの状況

最後に、札樽トンネルは総延長26.2kmで、渡島トンネルに次ぐ長大トンネルです。掘削距離は6.9kmにとどまり、掘削率は26%です。

工事遅延の原因は、対策土受け入れ地の確保に時間がかかり、工事着手が遅れたこと。すでに、3年~3年半程度の遅延が発生しています。

画像:「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)工事の状況について」(鉄道・運輸機構)

開業は2035年春に?

いずれのトンネルでも、工程の工夫や掘削体制の拡充を図っているものの、大幅な工期短縮は難しいようです。そのため、現状の遅れのまま推移すれば、開業は4年遅れの2034年度末(2035年春)になりそうです。

資料では北海道の軟弱地盤の特徴を強調しています。北海道は本州に比べ地質が新しいため、堆積岩類が柔らかく、掘削時に崩れやすい性質を持ちます。

また、火山活動が活発なエリアの近辺を通るため、巨礫が多く、重金属などを含んだ対策土が出やすいという特徴もあります。

そうした環境を勘案すると、今後、さらなる工事の遅れが出ないとも限りません。現段階で遅延の大幅回復は難しそうです。

画像:「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)工事の状況について」(鉄道・運輸機構)

長万部先行開業は?

札幌までの開業が無理なら、せめて長万部や倶知安までの部分開業を、と思う方もいるでしょう。

しかし、新函館北斗~新八雲間の渡島トンネルが完成しない限り、長万部までの先行開業すらできません。渡島トンネルは複合的な原因で遅延しているので、大幅な遅延回復は難しそうです。

となると、長万部や倶知安までの部分開業も難しい、という結論にならざるを得ません。(鎌倉淳)

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