水原一平事件「ドラマ化」米国では即決、日本では実現ムリ…識者が指摘する数々の障壁

水原一平被告(C)共同通信社

ドジャース大谷翔平(29)の元通訳・水原一平被告(39)の横領事件が「エンタメのネタ」になり始めた。アメリカにおいてテレビドラマ化が発表されたのだ。同国大手プロダクションのライオンズゲートが日本時間10日(現地時間9日)に明らかにしたと報じられたが、裁判で罪状認否すら行われていない時点の発表は少々気が早いような気が……とてもではないが、日本ではこの早さでのドラマ化発表などできないだろう。

ではいったい、何が障壁になっているのか。

同志社女子大学でメディアエンターテインメントを研究する影山貴彦教授は、「裁判の結果がまだ全く読めない」という状況でのドラマ化については、日本のエンターテインメント業界の体質を形作る「日本人の気質」として、アメリカよりもはるかに慎重な態度で臨むことが容易に想像できると指摘。併せて、今回の水原被告の事件に関しては日本の視聴者の心情も絡むため、やはり、日本でのドラマ化は少なくとも現時点では不可能との見方を示す。

「『日本人にとっての大スターである大谷選手が巨額の金を横領された』という、日本人にとって耐え難い状況が、ドラマ化などもってのほかという拒否反応として現れるはずですから、裁判の結果がまだ全く確定していない以上、とてもではないですが日本国内ではドラマ化できないでしょう。ただ、今後、司法の判断がどのようなものになるかが分からなくてもエンターテインメント化してしまうというのが、皮肉を込めつつ『アメリカのすごさ』と言えるのではないでしょうか」

影山氏は併せて、日米の大谷のファンの「立ち位置の違い」も影響していると語る。

「日本の大谷ファンとアメリカの大谷ファンでは、やはり、本人との『気持ちの距離』が違うのではないでしょうか。つまり、アメリカの大谷ファンの方が今回の騒動を、距離をとって冷静に見ることができるがゆえに、『こんな時期にドラマ化なんて不謹慎だ!』と強く思わずに済んでいるというのはあるでしょう。現状、日本の視聴者の気持ちは恐らく、『大谷君はつらい思いをしているんだから、しばらくそっとしておいてあげるべきだ!』といったものでしょうからね」

最後に、影山氏は以下のようにも語った。

「今後、日本で今回と逆の状況、すなわち、日本で活躍する外国人スポーツ選手が同様の騒動に巻き込まれた場合を想定した場合が興味深いですね。つまりは、日本人が大谷に対してよりも、その選手に対して俯瞰して状況を判断するのではということです。もちろん、それほど俯瞰しなかったとしても、やはり、日本人としては裁判の結果が確定していないという点に、より強い違和感を覚えることは間違いないでしょう」

仮にアメリカで放送にこぎつけても、それに興味を示す日本人は少ないだろう。

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