4、5、6月の給料が影響するのは健康保険料だけではないって本当? 他にどんなところに影響がある?

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは毎月の報酬額を「区切りの良い幅で区分した」数字のことです(協会けんぽサイトから引用)。健康保険・厚生年金保険の保険料額表(令和6年3月分)によると、健康保険の標準報酬月額は5万8000円が下限で、139万円が上限の50等級に区分されています。

また、厚生年金保険の標準報酬月額は8万8000円が下限で65万円が上限の32等級に区分されています。なお、標準報酬月額が8万8000円から65万円の間は健康保険と厚生年金保険で同じ標準報酬月額です。

標準報酬月額を基に計算されるのが毎月の給料から引かれる(控除される)健康保険料と厚生年金保険料です。しかし、健康保険で標準報酬月額を基に計算するのは毎月の健康保険料だけではありません。高額療養費にも影響します。

70歳未満の方の高額療養費

高額療養費とは治療費が高額になった場合に、一部の金額が、後で払い戻される制度です。では高額になった場合とは、どのような時を指すのでしょうか。

70歳未満の方の高額療養費は標準報酬月額によって5段階に分かれています。例えば、ある1ヶ月(1日~月末日)の治療費の自己負担額(=病院の窓口に払う3割の負担額のこと。

ただし保険外の治療費や食事代を除きます)が30万円だった場合を例にシミュレーションしてみましょう。シミュレーションには協会けんぽのサイトに載っている「高額療養費簡易試算」を用いました( ア)からオ)は高額療養費の各区分をさします)。

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ア)「被保険者」の方の給与の月額(標準報酬月額)が83万円以上の方:4万5820円
イ)「被保険者」の方の給与の月額(標準報酬月額)が53万円~79万円の方:12万8180円
ウ)「被保険者」の方の給与の月額(標準報酬月額)が28万円~50万円の方:21万2570円
エ)「被保険者」の方の給与の月額(標準報酬月額)が26万円以下の方:24万2400円
オ)低所得者 被保険者の住民税が非課税の方など:26万4600円
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高額療養費の区分がウ)に該当する方ですと、ある1ヶ月の治療費の自己負担額(定義は既述のとおり)が30万円だった場合、高額療養費として請求できる額は21万2570円という結果です。

一方、区分がア)に該当する方の場合、治療費の自己負担額が同じでも高額療養費として請求できるのは4万5820円です。このように標準報酬月額は高額療養費として請求できる額にも影響してきます。

まとめに代えて

「健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が高くなってしまうから、4~6月は、なるべく残業をしないようにしよう」という声を聞くことがあります。残業手当も先述の標準報酬月額に含まれるからです。標準報酬月額が高くなれば月給から引かれる社会保険料の額も増えてしまいます。

そして、本稿のシミュレーションで見たように、標準報酬月額が高くなると、高額療養費として受け取れる額は逆に減ってしまいます。標準報酬月額は給料から引かれる健康保険料や厚生年金保険料の計算だけに影響するわけではありません。

出典

全国健康保険協会 健康保険・厚生年金保険の保険料額表
全国健康保険協会 標準報酬月額の決め方
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
全国健康保険協会 標準報酬月額・標準賞与額とは?
全国健康保険協会 高額療養費簡易試算

執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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