岸田総理の地元 広島県での23年度M&A、件数増も金額は不振

スタートアップM&Aを活用したオープンイノベーションなどの「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄首相。そのお膝元である広島県での2023年度のM&A概況は、件数こそ3年連続で伸びたものの、取引総額は大幅な減少となった。なぜ、こうした矛盾する状況に陥ったのか?上場企業の適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

それによると件数は前年度比4件増の23件で、2019年度以降の直近5年間で最高となった。ところが取引総額は同95.8%減の6億6700万円に激減した。取引金額を公開した案件が2022年度の8件から4件と半減したのに加えて、同年度には3件あった10億円を超える案件がないなどM&Aの小口化で総額が伸びなかった。

TOB(株式公開買い付け)など大口案件が多かった2022年度(156億9400万円)の反動減とも言えるが、直近5年間平均の51億円も大きく下回っており、不振だったことは間違いない。直近5年間では2021年度の5億9000万円に次ぐ、下から2番目に低迷した。

金額トップの案件はアスカネット<2438>がアバター(分身となるキャラクター)を使ってライブ配信するバーチャルライバー(Vライバー)事務所「Razzプロダクション」を運営するBET(東京都品川区)の全株式を取得し、子会社化した4億3700万円。Vライバー事務所として今後成長が一層期待できることに加え、キャラクターグッズの企画・制作などの相乗効果を見込む。BETは2020年11月設立で、所属Vライバーは550人超と業界最大手。

2位はグローム・ホールディングス<8938>が医療機器卸売業の福山医療器(広島県福山市。売上高5億8100万円、営業利益400万円、純資産2億2900万円)の全株式を取得し、子会社化した2億3000万円。提携先の医療機関(病院・診療所、介護老人保健施設)に対する医療機器の入れ替え需要などへの対応力を高める狙い。福山医療器は1958年の設立。

3位はコンセック<9895>が経営不振に陥っていたソフトウエア開発子会社のデンサン(広島市。売上高2億2100万円、営業利益△3440万円、純資産△1億200万円)の全保有株式97.5%を、土木・建築関連ソフト開発のコンピュータシステム研究所(仙台市)に譲渡した1000円。グループ内の経営資源の選択と集中の一環。コンセックは2006年にデンサンを子会社化し、IT事業に参入した。しかし、コロナ禍の影響で近年、デンサンは主要顧客からの受託業務が減るなど厳しい経営環境にあったという。

文:M&A Online

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