善悪二元論のせいで日本は“悪”と認識される…韓国で生まれ育った作家が分析するZ世代がフェミニズムを必要以上に嫌う理由

右派支持なら基本的に“親日売国奴”とされ、左派支持なら“北朝鮮のスパイ”とされるという韓国社会。

韓国で生れ育ち、2023年に日本に帰化した作家・シリアンシー氏は、“善悪二元論”がその背景にあると見ている。そして同じような考えがポリティカル・コレクトネスにも通じていると…。

韓国で2030と呼ばれるZ世代を分析したリー氏の著書「Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち」から一部抜粋・再編集して紹介する。

ネット普及が思想を変えた

韓国で左派政権が10年間続いたことは、人々の考えや社会の権力構造など、実に多くの点で変化を巻き起こしました。

残念ながら、いまのところ、それは肯定的な変化だったとは思えませんが、その変化を支えた強大な力が、韓国のネット普及です。

「ネットで思想を変えられる」ことが、当時の韓国によって証明されたとでも言いましょうか。
実際は、ネットの言説のなかで事実に基づいたものは少なく、多くは扇動にすぎませんでしたが。

なにごともそうですが「早期普及」には、肯定的な側面だけがあるわけではありません。

ネットの怖さ、つまりは平気で噓をつく人たちにとって不特定多数を相手に影響力を行使できる最強最悪のツールであるという恐ろしさに、まだ気づかない人が多かった頃。

相応の注意喚起もなかった頃。ネットを中心に広がった思想の急激な変化は、いまだに多くの傷跡を残しています。

そうした変化を見て育った人たち、デジタル、ネットの「いいも悪いも利用者次第」という側面とその破壊力を誰よりよく知っている人たちが、いまの4050です。

これが、彼らが左派支持のまま残っている大きな理由でしょう。

一方、いまの2030は「ネットとはそうしたもの」という受け止め方です。彼らを中心にネットで広まっている「陣営論理」について説明しましょう。

他は無条件に悪い…「悪魔化」が生む衝突

「陣営」の種類にもいろいろありますが、もっとも著しく表れているのが政党支持、右派支持か左派支持かです。

ワンパターンですが、右派支持なら基本的に親日売国奴とされます(実際は違いますが、韓国では右派は親日とされます)。

左派支持なら、北朝鮮のスパイとされます(これも人によりますが)。

そして、双方ともにとにかく自陣営を「よし」とし、他陣営は無条件に悪いという、いわゆる「悪魔化」をします。

結果、白くないのは黒いという考えのもと、「Aでなければならない」と「Bでなければならない」という二つの絶対的な教理が、衝突します。

「Cでもよくない?」という意見は、両方から嫌われ、潰されます。

少しでも違う意見を出すと、「お前はうちの陣営じゃないな?」ということになってしまうので、修正できません。

社会の矛盾を正せない陣営論理

余談ですが、韓国は最大野党「共に民主党」の党員が約480万人、与党「国民の力」の党員が約410万、すべての政党の党員を合わせると約1000万人もいると言われています。

日本の自民党党員が100万人ほどで、イギリス、ドイツなどは全政党の党員を合わせても100万人ほどだとされています。

いかに韓国で多くの人がいずれかの政党に属しているかがわかります。

「○○でなければならない」という二つの教理の衝突である陣営論理はネットを介して韓国社会に劇的な広がりを見せ、政治のみならず、実にさまざまな分野に影響を及ぼすことで、社会の数々の矛盾の修正を阻んでいます。

フェミニズム=左派?

そのひとつに、「男女嫌悪」問題があります。「男子の兵役で女子ばかりが得をしている」という話に反対すると、なぜか「お前は左派支持者だな?」ということになります。

実際にそうなのかどうかはともかく、左派は女性に甘い(比較的、女性優待政策などをよく主張する)ということになっているからです。

よって、いわゆるポリコレ、ポリティカル・コレクトネス、社会を正しくしていくという考えにおいても、韓国社会の2030は、他の国とはちょっと異なる姿を見せています。

「悪の名声」に依存する反日思想

欧米のポリコレのメインは、概ね多様性を認めようという方向性です。

最近の一部のポリコレ支持者たちは、今までこの社会を支えてきた価値観そのものを「悪」にすることで、それと対立する自分を「正義」に見せようとしていますが、これは正義を語りながら悪に依存する構図にすぎません。

そして、この残念な構図は、韓国の陣営論理そっくりです。

善悪二元論のもっとも見苦しいところは、善を主張しながらも、実は悪に依存していることです。

韓国の反日思想もそうですが、日本を悪にしないと、韓国(朝鮮)が正しかったという説明ができなくなります。

同じ現象が、一部の「間違った」ポリコレにも見られます。過去の有名作品のキャラの人種を変えてリメイクすることが、「これぞポリコレだ」と名乗る最近の妙な流れも、その影響でしょう。

悪を善に塗り替えたつもりかもしれませんが、実際はその悪(過去の有名作品など)の名声に依存することでしかありません。

韓国の2030は、フェミニズム、フェミニストというものを必要以上に嫌います。なぜなら、それがそのまま「支持政党」すなわち「思想」の問題と関連づけられてしまうからです。

たとえば「韓国の男女賃金の格差はOECD最悪だ。これをなんとかしないと」と発言しようものなら、真っ先に出てくる話は、「こいつは共に民主党(左派政党)の回し者だ」という批判です。

こうした風潮が男女がお互いを敵視する「男女嫌悪」となり、ひいては少子化問題に影響しているという見解も出ています。

シンシアリー(SincereLEE)
1970年代、韓国生まれ、韓国育ちの生粋の韓国人。歯科医院を休業し、2017年春より日本 へ移住。2023年帰化。母から日韓併合時代に学んだ日本語を教えられ、子供のころから日本の雑誌やアニメで日本語に親しんできた。韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。初めての著書『韓国人による恥韓論』から第18弾『韓国の絶望 日本の希望』(扶桑社新書)など、著書は70万部超のベストセラーとなる。

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