アジア随一の“色気だだ漏れ”女優コン・リーの妖艶な魅力に思わず荒鼻息!『花の影』はチェン・カイコー×レスリー・チャン『覇王別姫』チーム再タッグ作

『花の影』© 1996 Tomson (Hong Kong) Films Co., Ltd.

第77回カンヌ国際映画祭が5月14日からフランスで開幕。今年は黒澤明監督『八月の狂詩曲』(1991年)の一場面がポスターに使用されており、またスタジオジブリに名誉賞が授与されることも報じられるなど、早くから話題を呼んでいた。

そんな本年度のカンヌには日本の若手監督作も複数出品されており、濱口竜介監督が4冠を達成した第74回から早くも新たな才能の台頭に世界が注目している。もちろん中国を含むアジア各国からも映画界から多くの作品が出品されていて、韓国や中国、ベトナムなどの気鋭監督たちに熱視線が注がれている。

アジア映画への風向きを変えたチェン・カイコー監督

今年のポスターになっているように黒澤映画がカンヌの常連だったことはよく知られているが、中国映画において先鞭を切ったのが、チェン・カイコー監督だ。レスリー・チャン主演『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)は第46回カンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールとFIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)の2冠を達成。中国映画としては初の快挙だった。

まさに“アジア映画への風向き”を変えたチェン・カイコー監督が『覇王別姫』に次いで放ったのが、ふたたびキャストにレスリー・チャンコン・リーを迎えた『花の影』。1920年代の上海を舞台に、名家をめぐる男女の退廃的な恋愛模様をエキゾチシズムあふれる映像で描く、官能的なラブストーリーだ。

妖艶すぎるコン・リーは必見

辛亥革命に中国全土が揺れた1911年。緑濃い水の都・蘇州の富豪パン家には阿片が煙り、当主の愛娘ルーイーも阿片に酔いしれていた。この家に、両親を無くし若旦那に嫁いだ姉を頼ってきた聡明な少年チョン・リァン。だが彼は阿片中毒の若旦那に虐待され、最愛の姉との一夜で“男”にさせられたことに絶望して屋敷を飛び出してしまう。

時は過ぎ、1920年代の魔都・上海。粋なスーツに身を包んだ美青年が、颯爽とダンスホールを駆け抜ける。人妻と逢引しては脅迫する名うてのジゴロ、シャオシェこそ大人になったチョン・リャンだった。上海マフィアの一員となり、甘いマスクで平然と女を騙しながらも、姉に似た女に安らぎを求めた。ある日、屈折した心を抱える彼にボスから下った指令は、パン家の当主の死で財産相続人となった若旦那の妹、ルーイーを誘惑することだった――。

1920年代の華やかな上海を巨大セットで再現し、撮影に3年、『覇王別姫』の倍以上の製作費を費やした『花の影』。チェン・カイコ-監督はレスリー・チャンとコン・リーという2大スターを再び主演に招き、クリストファー・ドイルの撮影によって官能的な映像に仕上げてみせた。

1996年のカンヌ映画祭に正式出品された本作だが、いま観てもコン・リーの不変の美しさに目が釘付けになるだろう。いわゆる“上海モダン”な装いは私たちがイメージするチャイナドレスよりも実用的に映るが、コン・リーの肉体美はしっかり強調されるという控えめに言っても最高な衣装。アジアや中国の、いや映画そのものに興味がなくてもコン・リーだけは観ておいたほうがいいと断言できる、大女優を愛でるにはこれ以上ない作品である。

『花の影』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送

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