“核のごみ”処分場の「文献調査」受け入れへ 佐賀・玄海町長「否定的」も経産相から直接要請で“外堀埋まる”

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」。長期間、強い放射線を出し続ける核のごみの最終処分場候補地を巡り、5月10日、佐賀・玄海町は「文献調査」の受け入れを正式に表明した。

選定までの第1段階「文献調査」

核のごみは長期間、強い放射線を出し続けることから、分厚い金属容器に入れた上で地下300メートルより深くに埋めて、最終処分することが法律で決まっている。

この最終処分場の候補地を巡り、5月10日、佐賀・玄海町の脇山伸太郎町長は、3段階ある手続きの第1段階となる「文献調査」の受け入れを正式に表明した。

玄海町・脇山伸太郎町長:
議会の議論、国からの要請を熟考した結果、文献調査を受け入れる決断に至った

文献調査の受け入れは、北海道の寿都町と神恵内村に続いて、全国3例目だが、既に原発が立地している自治体が調査を受け入れるのは初めてのこととなる。

玄海町は、福岡・糸島市からはわずか30km。
福岡県の県庁所在地である福岡市からも50kmほどしか離れていない。

「金目的ではない」急転直下の決断

玄海町では、旅館組合や飲食業組合など地元3団体から提出された調査受け入れを求める請願について、4月26日に町議会が採択した。

また、5月7日には齋藤健経産相が玄海町を訪れた。そして脇山町長と面会し「実施を前向きに検討してほしい」と直々に要請したが…。

玄海町・脇山伸太郎町長:
最終処分場に関しては、私は自ら手を挙げるつもりはない。国から申し出があっても受ける気持ちはない。ということを今まで申し上げてきた

脇山町長は、あくまで反対の立場を表明した。

地理的条件 = 科学的特性マップ(地下に採掘可能な鉱物資源がある可能性)などを理由に受け入れに否定的な立場を示してきた脇山町長がどのような判断を下すのか注目されていた。
しかし、斎藤経産相と面会した3日後―。

玄海町・脇山伸太郎町長:
議会の議論、国からの要請を熟考した結果、文献調査を受け入れる決断に至った。文献調査が処分場選定に直結するものではないと斉藤経産相から言質をもらった。なし崩し的に最終処分地になることはないと考えている

人口減少や高齢化で過疎化が進む玄海町。
受け入れを表明した脇山町長は「交付金のお金目的ではないということを知ってもらえればありがたい。日本のどこかに最終処分場の適地が見つかるための呼び水となったらありがたい」と話し、最大20億円の交付金が目当てではないと強調した。

国と町の思惑絡む中、知事は…

文献調査が行われても、次の段階の「概要調査」に進むには知事の同意が必要となる。

佐賀県の山口祥義知事は、最終処分場は国全体として必要としつつも「佐賀県は新たな負担を受け入れる考えはない」と改めて反対の考えを示した。

西日本新聞・池田郷さん:
科学的特性マップでは、ほぼ全域が「好ましくない地域」にもかかわらず、政府が動いたのは、文献調査を受け入れる自治体を増やしたいという思惑が絡んで、ある種の圧力といっていい。
長崎の対馬のとき(2023年9月27日、文献調査を受け入れないと表明)は、国は動いていないが、今回のポイントは原発立地自治体の受け入れだということ。玄海町は既に原発関連の交付金があって財政的には安定しているが、やはり過疎が進む地域として国の原発政策に協力する姿勢を示すということで、今後も原発関連マネーを維持したいという思惑があるのだろう。しかし佐賀県知事は、受け入れに否定的なので次の段階に進むのは難しい

さらに池田さんは「長くても5~60年ほどで運転を止める原発と、放射線量が下がるのは10万年かかるという施設では、将来世代や周辺への影響が全く異なる。それを、いち自治体のトップに判断を委ねるということは、そもそも仕組みとしていかがなものなのか」と疑問を呈した。

世界各国で難航する核のごみの最終処分。
住民は困惑し、周辺自治体からは反対の声も上がる中、今の国のやり方で本当に議論は進むのか。今後も注目される。

(テレビ西日本)

© FNNプライムオンライン