泡沫候補に〝使命感〟 選挙取材続けるフリーライター畠山氏 伊勢新聞政経懇話会で講演 三重

【伊勢新聞政経懇話会で講演する畠山氏=津市新町のプラザ洞津で】

 伊勢新聞政経懇話会の5月例会は13日、三重県津市新町のプラザ洞津で開いた。フリーランスライターの畠山理仁(みちよし)氏(51)が「候補者取材から見えた選挙」と題して泡沫候補の取材経験を講演し、「立候補者は全人生かけて勝利に向かい戦う。大事な場面や問題がある候補者に必ず出会える。外れのない現場」と話した。

 畠山氏は泡沫候補を取材した「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」を平成29年に出版し、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した。

 畠山氏の選挙取材ルールは「出ている候補者全員に接触する」。泡沫候補の印象について「本人は勝ち目がないとうすうす感じているが、世の中に訴えなきゃいけないことがある。だいたい年上で、自由に活動し、ものすごく生き生きしている」と語った。

 候補者が乱立する都知事選では、「2016年は立候補届を69人が取りに来て、ほとんどが必ず出る、届け出日に選管で会おうと言われたが、立候補は20人ほどにとどまった。電話すると、家族の反対で立候補できず、タイヤをパンクさせられた、書類を隠されたという人もいた」と振り返った。

 「当選しない人が立候補しても無駄だろうという意見が多いが、落選した候補が言い出したことを社会に反映させた実例がいくつもある」と述べ、自転車専用道路の整備(東京都知事選)や、生理用品の学校への無償配布(千葉県同)、30人学級の実現(長野県同)を挙げた。「選挙は政策オリンピック。いろんなアイデアを広げてくれる機会。つまみ食いしていいと思う」と話した。

 また「ポスターは規定がないので合法的にうそをつける。20年前の写真を使い続ける人や修正している人がいる。他人の顔を使っている人も。有権者は毎回試されている」と注意喚起した。

 一方「入れたい候補者がいないという声がものすごく多い。それは選挙に出る人が少ないから。自分が選挙に出ることも大切な選択」「政治に無関心ではいられても、政治と無関係ではいられない」と呼びかけた。

 畠山氏は愛知県出身。著書に「コロナ時代の選挙漫遊記」「記者会見ゲリラ戦記」がある。

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