長崎ヴェルカ西地区6位 序盤好調も中盤失速 終盤10試合は7勝3敗の健闘

 バスケットボール男子のBリーグ1部(B1)は3~6日の第36節でリーグ戦全60試合が終了した。B1参入初年度の長崎ヴェルカは27勝33敗で西地区6位(全体17位)。目標の「30勝」こそ達成できなかったが、昨季までのB1参入初年度クラブ最多勝利数の「25勝」を上回る成績を残した。好スタートを切った序盤戦、B1の厳しさを知った中盤戦、踏ん張った終盤戦。長崎が誇るプロバスケットクラブの戦いを振り返る。

馬場を筆頭に持ち味の激しい守備を発揮し続けたヴェルカ=京都市、島津アリーナ京都

■破竹の4連勝
 昨年10月8、9日、日本代表の富樫を擁する千葉JとのB1開幕節。リーグ制覇をはじめ、いくつものタイトルを持つ強豪クラブに対して、持ち味を存分に披露した。激しいディフェンスで相手のリズムを崩す、全員が常に連動してドライブや外角シュートなど多彩な攻撃で攻める-。厳しい戦いが予想された中、チームは開幕2連勝。「ヴェルカはB1でも通用する」。多くのファンに期待を抱かせる内容だった。
 B3時代からチームをけん引してきた狩俣、ボンズらを中心にしたハードワーク、切り替えの速さをベースにした堅守。ここにブラントリー、森川ら、新加入選手の得点力を上積みしたチームは快進撃を続けた。第2節の富山戦は開幕直前に加入した日本代表の馬場が攻守で存在感を発揮。連勝を「4」に伸ばした。その後も「同じ相手には2度負けない」という意識の共有、修正力の高さを見せて、第11節を終えた時点で12勝7敗の西地区3位。チャンピオンシップ(CS)進出を狙える位置につけていた。

今季の成績

■対策され苦戦
 だが、ここからチームは失速する。第12節のA東京戦で2連敗すると、続く琉球戦の勝利を挟んで大阪、広島、信州に5連敗。初めて黒星が先行した。信州との第2戦で連敗を止めたが、京都、秋田、三遠戦で再び5連敗。西地区6位まで落ち込んだ。
 原因は「相手の対策」と前田監督は振り返る。展開の速さが持ち味のヴェルカに対して、相手は速攻をファウルで止めるなどしてリズムを崩しにかかってきた。積極的な1対1の仕掛けに対しても、ゾーンを主体に守ってきた。必然的にヴェルカはパスを回しながら打開していくが、ターンオーバーの数が増え、自滅した試合も多くなった。
 主力の故障も影響した。12月、そこまでチーム日本人2位となる1試合平均8得点の森川、1月にチームトップの14得点だったブラントリーが相次いで離脱。2人の得点源を失ったこともあり、開幕から10試合の平均得点が88点だったのに対して、ブラントリーが欠場した第18節秋田戦から10試合の平均得点は79点に落ち込んだ。中盤戦は長く暗いトンネルをさまよい続けた。

■来季の飛躍へ
 1試合の平均スチール数はリーグトップの8本。特長でもある激しい守備は、シーズンを通して継続できたと言える。馬場を筆頭に、小針、タリキら、若手選手が果敢な守備で相手の攻撃を抑えた。終盤は負けが込みながらも何とか踏ん張り、最後の10試合は7勝3敗。伊藤社長兼ゼネラルマネジャーが「ヴェルカスタイルは全国に見せることができた」と振り返ったように、ハードな守備からの速攻はB1の舞台でも通用した。
 一方で勝負どころの経験の差が出たシーズンでもあった。名古屋D、琉球などの上位クラブを倒した試合も少なくなかったが、全体的に逆転負けや接戦を落としたことも多かった。「通用するけど、勝ちきれないことが今後の課題」(伊藤社長)。来季はヴェルカスタイルを体現できるチームの軸を残した上で、競り合いの中でも冷静にプレーできる選手、チーム力の育成が一つのポイントになりそうだ。
 長崎のバスケ界はこの1年でさらに熱気を帯びた。田河取締役によると、有料のファンクラブ会員数はBリーグクラブでトップ。10月には長崎市に新アリーナ「ハピネスアリーナ」も完成する。来季は今年以上の快進撃を見せて、懸命に応援するファンを、長崎を楽しませてもらいたい。

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