2023年度の福島県内ホープツーリズム 過去最多396団体参加 企業研修増などが背景

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の現状や教訓を発信する「ホープツーリズム」の2023(令和5)年度の参加団体数は396団体で前年度より77団体(24.1%)増え、過去最多となった。福島県が13日、発表した。企業の研修などに当たる「一般団体」が100件近く増えて児童・生徒らの「教育旅行」を上回り、全体を押し上げた。県は幅広い年代の関心が高まっているとみて、今年度は浜通りの自然に触れる観光を合わせて提案するなどして一層の拡大を目指す。

 ホープツーリズムの参加団体数の推移は【グラフ】の通り。2023年度の内訳は「一般団体」242団体、「教育旅行」154団体だった。一般団体は前年度比95団体増えた。被災地に進出した企業などは、独自に復興を伝える企画を実施している。県は、企業や経済、奉仕関係などの各種団体に注目され、全国からの参加が増えたと分析している。

 「教育旅行」は前年度比18団体減で、新型コロナウイルス感染症の5類移行により首都圏などの学校が教育旅行の行き先を従来の地域に戻したことなどが影響したと県はみている。2023年度の参加者数は前年度比1330人減の1万6476人だった。

 県によると、参加者の評価は上々だ。双葉町にある浅野撚糸双葉事業所は、進出を決めた背景や、復興の課題への向き合い方を学んでもらうワークショップなどを展開している。参加者からは「社会課題を自分事として考えるきっかけになった」「課題を解決する過程を学べた」などの感想が寄せられている。

 風化防止に向け、今後は多くの人に継続的に浜通りに訪れてもらい、県内全域の周遊・滞在につなげることが課題になる。県は昨年5月に富岡町に開設したホープツーリズムのサポートセンターを活用し、学びの要素と県内の観光資源を組み合わせた旅行商品を提案していく。ホープツーリズムの幅を広げるため、今年度は人気が高まっているキャンプなどの野外活動を組み合わせた新しい施策として、浜通りのキャンプ場の利用者に伝承施設などを巡ってもらうモニターツアーを実施する予定だ。

 2026年4月に福島県で開催される国内最大級の大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」とも連携し、ホープツーリズムの魅力を発信していく。県観光交流課は「復興が進む福島の現状を感じてもらえるコースづくりを目指す」としている。

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