【千葉魂】種市、自分信じ2勝目 黒木コーチ「ブルース・リー知っている?」 千葉ロッテ

種市篤暉

 「ブルース・リーって知っている?」。練習の合間、打撃練習が行われているグラウンドの片隅で種市篤暉選手に、そう聞いた。問うたのは黒木知宏投手コーチだ。雑談のような形でふと会話は始まった。「カンフー映画の方ですよね」。種市はそう答えたという。今年初先発した試合では勝ち投手になったが、その後は思うようにいかない日々が続いていた。だから黒木コーチは自身が大事にしている言葉を伝えた。

 「ブルース・リーの映画の中で有名なセリフがあって、俺はそれが大好きなんだ」と黒木投手コーチは紹介したのは次のセリフだ。

 「考えるな。感じろ」。英語にすると「Don’tthink.Feel」である。ブルース・リーの代表作「燃えよドラゴン」での有名な言葉だ。

 「子供の時にブルース・リーやジャッキー・チェンが大好きでね。父親が空手の師範だったこともあるけど。その時に心に残って、今でも忘れないあのセリフを思い出した」と黒木投手コーチはその時のことを説明してくれた。

 種市は準備に余念がない投手だ。1日24時間、野球のことを考えている投手ともいえる。それだけにマウンドでは今まで行ってきた準備を土台に種市らしくマウンドで躍動してほしいとブルペンで試合を見守る黒木投手コーチは考えていた。そこで出てきた言葉がブルース・リーの名言だった。

 「試合が始まると男と男の勝負。もうマウンドに上がったらあれこれといろいろとは考えずに自分のボールを信じて、ここまで行ってきた準備を自信にして投げてほしいと思う。彼はそれくらい先発までの期間でしっかりと研究分析して練習して努力をしてきている。マウンドに上がったら、考え込まずに自分の感覚を大事にしてバッターに向かって投げ込んでほしい。そんな想いかな。でも、まあ、あの時はそこまで真剣な話はしていない。『ブルース・リーを知っている? こんなせりふがあるんだよ』と世間話程度の会話だよ」と黒木投手コーチは恥ずかしそうに笑った。

 種市篤暉は5月6日のライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)に先発をすると7回を投げて被安打6、1失点。重いストレートとストンと落ちるフォークボールのコンビネーションで相手打線を翻弄(ほんろう)。2勝目を挙げた。背番号「16」らしい見事なピッチングだった。

 ヒーローインタビューに呼ばれお立ち台に上がったのは、もちろん種市だった。その姿を黒木投手コーチは誰よりもうれしそうにニコニコしながら見つめていた。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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