「黒い雨」被害者と被爆体験者の課題 早期救済へ連携を 長崎で初のリレーシンポ

「黒い雨」被害者と被爆体験者の課題を共有したシンポジウム=長崎市興善町、市立図書館多目的ホール

 原爆に遭いながら救済対象外とされている広島の「黒い雨」被害者と長崎の被爆体験者の課題を考えるシンポジウムが12日、長崎市内であった。両訴訟を担当する弁護士らは「同じような構造で援護を否定されてきた。被爆の可能性があれば被爆者と認めるべきだ」と早期救済を訴えた。
 広島、長崎の研究者や弁護士らによる実行委が問題解決へ連携しようと初めて企画。約70人が参加した。
 黒い雨を巡り、広島高裁は2021年、広島の爆心地から約30キロ離れた場所で雨に遭った人も被爆者と認定。田村和之広島大名誉教授は「『原爆の放射能による健康被害の可能性が否定できない事情にあった人は被爆者と認める』とした判決を鑑みれば、長崎の爆心地から12キロ内にいた被爆体験者も被爆者と認められるべき」と問題提起した。
 被爆体験者訴訟は1、2陣いずれも最高裁で敗訴が確定。44人が18年、被爆者健康手帳の交付を求め長崎地裁に再提訴。9月9日に判決が言い渡される。原告団長の岩永千代子さん(88)は「ただ被爆者と認めてほしい」と訴え、中鋪美香弁護士は「黒い雨訴訟と同様、44人それぞれが放射性降下物によって被爆したと主張、立証した。勝訴判決が出るべきだ」と強調した。
 一方、国は広島高裁判決を受け、がんなど11種類の疾病要件を満たせば被爆者と認定する新基準を22年4月から運用。しかし、新基準で手帳申請が却下される黒い雨被害者が相次ぎ、新たな訴訟が続く。竹森雅泰弁護士は「科学的な線量推計に基づき被爆の実相を過小評価する国との闘い」とし、被害者の立場に立った世論形成の必要性を指摘した。シンポは広島市でも26日に開かれる。

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