「日本が選ばれない国に。変えなければ」約500の企業が日本での「結婚の平等法制化」に賛同する理由

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法律上の性別が同じふたりの結婚「結婚の平等」(いわゆる同性婚)。

日本での結婚の平等の法制化に、500近い企業や団体が賛同していることを、知っていましたか?

結婚の平等の法制化への支持を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」(BME)では、2024年5月13日時点で494の企業・団体が、婚姻の平等への賛同を表明しています。

賛同各社には、資生堂やファミリーマート、TOTO、SONYなど、日本を代表する大企業も名前を連ねています。

BMEへの参加各社が5月10日、横浜市で集い、婚姻の平等を考える会を開きました。

NPO法人「虹色ダイバーシティ」代表・理事長の村木真紀さん(右)と、資生堂のDE&I戦略推進部長、山本真希さん(左)

BMEは、公益社団法人「Marriage For All Japan」、NPO法人「LGBTとアライのための法律家ネットワーク」、認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の3つのLGBTQ関連団体が、2020年から共同で運営するキャンペーン。

この日は、賛同企業45社が集い、婚姻の平等に関する取り組みの情報交換や、勉強会をしました。

BME賛同企業で総合人材サービスの「ランスタッド」とBMEが共催しました。

「日本が選ばれない国になっている」

パネルディスカッションでは、BME賛同社の資生堂とランスタッドが、企業として同性婚の法制化に賛同する意義などについて議論しました。

資生堂のDE&I戦略推進部長・山本真希さんは、2020年から同社がBMEに賛同している背景を以下のように説明しました。

「あらゆるバックグラウンドを持つ人が、個人としてきっちりと尊厳が守られ、婚姻の自由と平等という権利を当たり前のように得ることができる社会を作っていく必要があります。そのために全ての人が力を合わせて推進をし、社会を変えていくことが重要だと考えています」

資生堂のDE&I戦略推進部長・山本真希さん

また、「社内で制度を整えていくのは、企業の責任として当然」という考えで、資生堂では2017年、社員の同性パートナーを異性の配偶者と同様の福利厚生のサービス・処遇が受けられるように就業規則を変更したといいます。

パネルディスカッションでモデレーターを務めた、「虹色ダイバーシティ」代表・理事長の村木真紀さんは、自身も同性パートナーと子育てをする当事者として、こう意見を述べました。

「日本では、同性パートナーと安心して子どもを育てられない。仕事で海外転勤になった時も、家族としてパートナーと一緒に行けなかったら、どうですか?そこで働きたいと思いますか?日本は今、そんな形で『選ばれない国』になってしまっています。それをどうにか変えていかなければいけません」

パネルディスカッションに登壇したランスタッドの代表取締役社長兼COOの猿谷哲さんも、人材サービスの観点から、日本で同性婚が実現していないことでの海外への人材流出が起きていると指摘。「大きなチャンスロスをしている」とし、以下のように指摘しました。

「一企業の問題だけではなく、国としても労働力の確保という観点から、すごくもったいない。(結婚の平等法制化実現の)法律の変更で、誰も損をしないのに、なかなか理解が深まらないという現状があります。我々がしっかりと声を上げ、このような活動を通して正しい情報を届けていくことが大事です」

日本への異動時に夫にビザ出ず。取締役の経験

ランスタッド株式会社、取締役兼CHROのヨス・シュットさん

日本で婚姻の平等が認められていないために、日本への転勤時、同性の配偶者にビザが出なかった経験をした人もいます。

ランスタッド株式会社のヨス・シュット取締役兼CHROが、自身の経験について語りました。

オランダ出身のシュットさんが同社の日本法人に異動した際、本来なら家族にも帯同のビザが降り、一緒に日本に来ることができるはずですが、25年以上連れ添う配偶者が「同性」だということを理由に、なかなかビザが降りませんでした。

シュットさんは「非常に悲しい思いをしました」と振り返り、「私にとって今まで普通だと思ってきたことが、日本では普通ではないと気付いた」「全ての人が、自分が受け入れられているというように感じることはとても重要」と話しました。

「日本は労働力不足で、人が必要とされている。婚姻の平等が実現されていない状況では日本から人材が流出したり、例え日本に残っていたとしても、自分が受け入れられていないという思いから、自信を喪失するということが起こってくると思います」

画期的な札幌高裁判決、企業の取り組みも評価

法律上同性カップルの結婚が認められないのは憲法に違反しているとして、LGBTQ+当事者が現在、国を訴えています。

「結婚の自由をすべての人に」と呼ばれるこの裁判は、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁で6つの裁判が起こされました。

3月14日には東京地裁札幌高裁でそれぞれ違憲判決が言い渡され、札幌高裁判決では初めて「憲法24条1項は異性間だけではなく、同性間の結婚も保障している」という判断が示されました。

画期的な札幌高裁判決では、企業の取り組みも評価され、「権利の尊重や差別の禁止などLGBTに対する基本方針を策定している企業数の調査において平成28年の調査結果では173社であったが、令和元年の調査結果では364社であった」と、社会の変化を表す指標の一つとして参照されていました。

しかしこの翌日、岸田首相は法律上同性カップルの結婚は「憲法上想定されていない」「訴訟の判断も注視したい」と、従来の主張を繰り返しました。

朝日新聞が2023年2月に電話で行った世論調査では、72%が同性婚を「認めるべき」と答え、同月、FNNが電話で行った世論調査でも、71%が同性婚を法律で認めることに「賛成」としています。

<取材・文=冨田すみれ子>

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