坂本農相が諫早湾干拓事業を初視察 非開門踏襲、基金で再生を

中央干拓地を視察した坂本農相(手前左)=諫早市

 坂本哲志農相は12日、長崎県諫早市の中央干拓地など国営諫早湾干拓事業の現地を初めて訪れ、営農状況やノリ不作などが続く有明海の再生事業を視察した。開門確定判決(2010年)の原告漁業者らは潮受け堤防の開門履行を求めているが、坂本農相は「(開門しない方針を明確にした17年の)大臣談話を踏襲し、それに基づいて対応していく」と述べ、総額100億円の基金で再生を図るとの国の考えを改めて示した。
 歴代農相の現地視察は、福岡高裁が国に開門を命じた確定判決以降の恒例。最高裁が23年3月、開門確定判決の執行力排除を認め、司法判断が“非開門”で統一されてからは初めて。
 坂本農相は諫早湾干拓堤防管理事務所や中央干拓地を訪れ、入植者や大石賢吾知事から営農状況などを聞いた。これに先立ち、佐賀県有明水産振興センター(小城市)では国や沿岸4県が取り組む再生事業について説明を受けた。各県の漁業団体代表からは「状況は厳しい。取り組みを加速してほしい」との切実な要望が相次いだ。
 視察後、坂本農相は「不安をしっかりと受け止め、確実に有明海を再生させる方向をつくっていかなければならないと感じた」と述べ、基金実現に向けて調整を進めていくとした。
 一方、歴代農相の視察日程に組み込まれてきた開門確定判決の原告・弁護団との面会は、国の考えを説明する場を設けるとして見送られた。

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