水戸京成百貨店雇調金詐取 元部長、15日初公判 経緯、元社長の指示焦点 茨城

水戸京成百貨店(茨城県水戸市)を巡る国の雇用調整助成金の詐取事件で、詐欺罪に問われた元総務部長で同県常陸大宮市、被告の男(58)の初公判が15日、水戸地裁で開かれる。実務部門トップを務めた元総務部長は県警による任意の聴取段階から不正を認めており、公判では不正が長引いた経緯や元社長による指示の詳細が明らかになるか注目される。

元総務部長は、2年半にわたり雇調金計約10億7000万円を不正受給したとして起訴された。雇調金の不正受給額としては全国最高額で、県内唯一の百貨店の不祥事は大きな注目を集めた。

県警捜査関係者によると、不正受給の申請はコロナ禍で売上が大幅に下がった百貨店の赤字を避けるため、元社長の千葉県柏市、斎藤貢被告(66)=同罪で起訴=の指示で始まったとみられる。県警に対する元総務部長の説明では、斎藤被告に対し「不正はいけない」と制止したものの改ざんを指示され、不正申請を始めたという。

ただ、不正申請は斎藤被告の社長退任後も約1年半にわたって続いたことから、公判では斎藤被告からの指示の有無や不正期間が長引いた経緯などについて、元総務部長の供述が注目される。

起訴状によると、元総務部長は2020年4月~22年8月分の百貨店従業員の休業日数について、虚偽の申請書などを茨城労働局に提出し、雇調金計10億7000万円を同社名義の口座に振り込ませてだまし取ったとされる。水増し分は約2億6000万円で、改ざんされた延べ人数は約5000人。

斎藤被告は退任前の21年5月までの申請について元総務部長と共謀したとされ、逮捕・起訴された。

捜査関係者によると、斎藤被告が元総務部長に不正を指示し、総務部の人事担当者らが虚偽の申請書を作成、申請したとみられる。

斎藤被告は不正受給への関与について否認を続けており、元総務部長の主張とは真っ向から対立している。申請の実務を担った社員の男女4人は、不起訴処分(起訴猶予)だった。

水戸地検は「詐欺の回数や金額が多いことを踏まえ、適正な判決を得られるように努めたい」としている。

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