東九州龍谷高の1年生アタッカー&司令塔コンビが「包囲網」打ち破り、全九州総合選手権V 総体見据え「責任を背負わせて勝つ」

期待の1年生コンビ、アタッカーの忠願寺莉桜(4)とセッターの吉村はぐみ(6)を中心に全九州総合選手権大会の高校女子の部を制した東九州龍谷高の選手たち(同校提供)

バレーボールの全九州総合選手権大会が11、12の両日、宮崎市総合体育館などで行われ、高校女子の部は東九州龍谷(大分)が決勝で福岡工大城東にセットカウント2―0で快勝し、新型コロナウイルス感染拡大のために中止となった2020年と翌21年大会を挟んで5大会連続20度目(前身の扇城時代を含む)の優勝を飾った。高校男子の部は東福岡が川内商工(鹿児島)との決勝を同2―0で制し、優勝した。

「東龍(とうりゅう)」こと東九州龍谷は予選リーグで鳥栖商(佐賀)と福岡女学院を退け、決勝トーナメントは準々決勝で西彼杵(長崎)、準決勝で都城商(宮崎)を破った。2月の全九州選抜高校大会と同じカードとなった福岡工大城東との決勝は2セットともに25―18のスコアでストレート勝ち。「全九州高校大会と合わせて九州の三大大会で55度目の優勝です」と前置きした上で相原昇監督(55)が続けた。「1年生が2人も出て、全九州総合のタイトルを取ったのは記憶にありません。(卒業生の)長岡望悠(久光スプリングス)や鍋谷友理枝(トヨタ車体クインシーズ)も1年生の春先は出ていませんでしたから」

「途中で代えることは絶対にしない」

相原監督は挙げた2人の1年生とは、サウスポーアタッカーの忠願寺莉桜(大分・稙田南中出身)とセッターの吉村はぐみ(佐賀・西部中出身)だ。中学時代はともに「アジアU16女子選手権大会」で優勝に貢献するなど年代別日本代表としても活躍した逸材。相原監督は、この2人に「途中で代えることは絶対にしない。勝っても負けても自分たちで責任を取るつもりで」と伝えて、コートに送り出した。「打倒東龍」に加えて、注目の1年生コンビを打ち負かそうと対戦相手が目の色を変えて挑んでくることを見越し、あえて「荒波」を経験させようという意図があった。

【次ページに続く】我慢比べで勝てた

最も警戒していた予選リーグの福岡女学院には、全九州選抜高校大会に続いてフルセットの末に2―1で辛勝。九州文化学園(長崎)を率いて全国大会で計15度の優勝に導いた井上博明監督(66)が指揮を執る西彼杵にも1セットを奪われた。それでも勝ち切った。忠願寺は試合ごとに調子を上げ、苦しい体勢から要所で強打を決めただけでなく、180センチの長身を生かしたブロックでも相手に圧力をかけた。吉村も9メートルのコート幅を活用しながら、落ち着いたトスワークで多彩な攻撃を引き出した。「2人がこれから真のエース、司令塔になるためにも、責任を背負わせて勝つ…それが今大会の最大のテーマでした」。相原監督が明かした。

「涙を流しながら悔しがっていました」

5月上旬の黒鷲旗全日本男女選抜大会に出場した、高校トップクラスの下北沢成徳(東京)と金蘭会(大阪)がVリーグ1部勢を破る「金星」を挙げた。各有力校の強さが伝わってくる中、学校所在地の大分県中津市を主会場に今夏開催される全国高校総体(インターハイ)での「地元V」に向け、強化は着実に進んでいる。相原監督は言い切った。「福岡女学院さんや西彼杵さんの選手たちは、うちとの試合後に涙を流しながら悔しがっていました。本気でぶつかってきた強い相手に我慢比べで勝てたのは自信になります。根性勝負となる6月からのインターハイ予選に向け、ギアが上がりました」。暑さとの戦いも加わる真夏の大舞台へ、東龍のホットラインが勢いをつけた。
(西口憲一)

【次ページ】忠願寺莉桜はこんな選手

憧れの選手は長岡望悠
忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)2008年8月24日生まれ。大分市出身。ポジションはオポジット。同市の舞鶴小1年から「東大分ジュニア」でバレーボールを始める。同市の稙田(わさだ)南中では、3年時の23年7月に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」で年代別日本代表のエースとして優勝に貢献。大分県選抜チームを準優勝に導いた同年12月の「全国都道府県対抗中学大会」では女子の最優秀選手に選出された。全国中学生選抜メンバーで臨み、優勝した24年2月の国際大会(イタリア)ではキャプテンを務め、MVPに輝いた。憧れの選手は、東九州龍谷高の先輩で16年リオデジャネイロ五輪日本代表のサウスポーアタッカー長岡望悠(久光スプリングス)。身長180センチ。最高到達点は297センチ。

【次ページ】吉村はぐみはこんな選手

佐賀県鹿島市の西部中出身
吉村はぐみ(よしむら・はぐみ)2008年11月2日生まれ。佐賀県鹿島市出身。ポジションはセッター。バレーボールをやっていた3学年上の姉きららさん(18)の影響で同市の能古見小浅浦分校(18年3月に閉校)1年の誕生日から「能古見ジュニアバレーボールクラブ」で競技を始める。同市の西部(せいぶ)中3年時の23年に16歳以下の女子日本代表に選ばれ、同年7月に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」で優勝に貢献し、ベストセッター賞を受賞。佐賀県選抜で出場した同年12月の「全国都道府県対抗中学大会」では、年代別代表のエース忠願寺莉桜を擁する大分県選抜に準々決勝で屈するも、大会の優秀選手に選出された。身長168センチ。名前の「はぐみ」の由来は、父隼人(はやと)さん(41)の「は」と母めぐみさん(43)の「ぐみ」から。好きな食べ物はミニトマト。

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