65歳から「月8万円」を得るにはどうすればいい?深刻な老後の資金不足を「株の配当」で解消する方法

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定年退職をした後は、基本的に収入の柱は「年金」になります。多くの場合、収入よりも支出の方が多くなるため、その差額をどうカバーするかを考えなくてはなりません。その1つの手段が「投資」です。本記事では『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)から、著者の川島睦保氏が老後資金の不足を「配当」でカバーする方法をシミュレーションを用いて解説します。

65歳から月8万円の配当を得るには「2,400万円」必要

退職後に平均的な生活を送るには月当たり28万円(公的年金22万円+仕事の稼ぎ6万円)、ゆとりのある生活を送るには月当たり36万円(公的年金22万円+仕事の稼ぎ6万円+資産運用8万円)が必要になる。

※(参考)住友生命のサイト記事「老後の生活費は平均いくら? 資金計画のポイント3つを解説」

ゆとりある生活を送りたいと思えば、仕事での適度な稼ぎとともに資産の運用が欠かせない。資産運用、たとえば株式投資の配当金だけで月8万円、年間96万円を稼ぐには、いったいいくらのお金を準備しておく必要があるのだろうか。

たとえば、株価1,000円、1株当たり年40円の配当(配当利回り4%)をしている銘柄(A銘柄)があるとしよう(ここでは株価は横ばいを続けると仮定、税金も無視する。新NISAを活用すれば実際に税金を支払う必要はなくなる)。

このA銘柄だけの運用で月8万円(年間96万円)を稼ぐには2,400万円(96万円÷0.04=2,400万円)の資金(元手)が必要になる。つまり65歳の退職の初年から月8万円の配当を稼ごうとすれば、退職の前までに最低でも2,400万円を貯めておく必要がある。

総務省統計局が行なった2023年1~3月期の「家計調査」では、世帯主が60歳以上の2人以上の世帯における平均貯蓄額は60~69歳で2,460万円、70歳以上で2,452万円となっている。

これからすると実際に実行できるかはともかく、高齢者のかなりの部分がその貯蓄をすべて株式投資に投じれば、配当金だけで月8万円、年間96万円を稼ぐ生活を送ることができる。

もし退職前のシニア世代が、退職時までに2,400万円を貯めるには、何をすればよいだろうか。

10年間「毎月10万円」を積み立て投資するとどうなる?

たとえば65歳定年の10年前つまり55歳から、毎年120万円(毎月10万円)を配当利回り4%の銘柄に投資するとしよう。その配当金を同じ銘柄に10年間再投資し続けると、10年後の退職時にはどのくらいの資金に増えているだろうか。

実際に配当金を再投資する場合、少額すぎて売買の最低単位に届かない場合があるが、ここでは頭の体操ということで実務上の問題は無視する。

10年間の合計運用額は、次の計算によって得られる。ちなみに4年目以降は計算の説明が煩雑になるので省略する。

  • 1年目=元本120万円+配当4.8万円=124.8万円
  • 2年目=1年目投資の再投資(124.8万円)×1.04+2年目投資(元本120万円+配当4.8万円)=129.7万円+124.8万円=254.5万円
  • 3年目=1年目投資の再々投資(129.7万円)×1.04+2年目投資の再投資(124.8万円)×1.04+3年目の投資(元本120万円+配当4.8万円)=134.9万円+129.7万円+124.8万円=389.4万円
  • 4年目=529.7万円
  • 5年目=675.5万円
  • 6年目=837.1万円
  • 7年目=994.7万円
  • 8年目=1155.4万円
  • 9年目=1322.5万円
  • 10年目=1496.3万円

以上のシミュレーションから、毎年年間120万円(毎月10万円)をコツコツ積み立て投資すれば、10年後には合計約1,500万円にも達することがわかる。その内訳は元本累計で1,200万円、配当金累計で約300万円だ。

目標の2,400万円には届かないが、このシミュレーションでは投資した銘柄の株価は10年間、1,000円で変わらないことを想定していた。この間に、株価が少しでも値上がりしていれば、意識的に忘れるようにしていた値上がり益(含み益)が「ボーナス」として期待できる。そうすれば、目標の2,400万円にさらに近づく。

ちなみに日経平均株価は過去10年間(2012年の終値と2022年の終値を比較)で2.5倍、過去9年間(2013年終値と2022年終値を比較)で1.6倍へ上昇している。

すべての銘柄が日経平均と同じ動きをするわけではないが、たとえば1年目に投資した資金120万円が日経平均株価と同じく10年後に2.5倍になっていると仮定すれば、総額は300万円に膨れ上がり、そのうち値上がり益は180万円となる。

2年目に投資した資金120万円も日経平均株価と同じく1.6倍になっていると仮定すれば10年後には192万円となり、含み益は72万円となる。

同様の仮定で過去の日経平均の動きに合わせて次々に計算を行なえば、3年目以降の値上がり益は次のようになる。

  • 1年目=180万円(120万円×2.5-120万円)
  • 2年目=72万円(120万円×1.6-120万円)
  • 3年目=60万円(120万円×1.5-120万円)
  • 4年目=36万円(120万円×1.3-120万円)
  • 5年目=48万円(120万円×1.4-120万円)
  • 6年目=12万円(120万円×1.1-120万円)
  • 7年目=36万円(120万円×1.3-120万円)
  • 8年目=12万円(120万円×1.1-120万円)
  • 9年目=マイナス6万円(120万円×0.95-120万円)
  • 10年目=マイナス12万円(120万円×0.90-120万円)

9年目、10年目の元金は残念ながら相場の下落で値下がり損が生じてしまったが、そのマイナス分も合算した10年間の値上がり益は438万円となる。

また毎年再投資された配当金も元金に組み入れられており、その部分にも値上がり益が生じているが、この計算はかなり煩雑になるのでここでは省略する。

こうした値上がり益はあくまで大胆な仮定を置いたうえでの計算結果だが、おおよその目安を知るうえで役に立つ。

インフレにも強い〝自分年金〟ができた!

それらを合算すると、55歳から毎月10万円(毎年120万円)を配当利回り4%の銘柄に投資した場合、定年退職を迎える65歳時点の総額は1,900万円、すなわち1,500万円(元本+配当金)+400万円以上(値上がり益)になっている。

A銘柄をすべて売却して、値上がり益(含み益)を現金化し、その現金を再び配当利回り4%の銘柄(別の銘柄でも可)に投資すれば、未来永劫、株式の配当収入(減配でもない限り)だけで月当たり6.3万円(年間76万円=1,900万円×0.04)の老後資金を稼ぎ出せる。

国民基礎年金の給付額が月当たり6万円であることを考えると、もう一つ基礎年金ができる計算だ。

前述のように、平均的な老後生活(=必要資金28万円)を送るためには、公的年金(22万円)のほかに6万円の収入が必要だ。この株式配当金の収入があれば退職後にわざわざ働かなくてすむ。

しかも投資元本の1,900万円は生活費として取り崩す必要はなく、自分が死んだあとは配偶者や、子供や孫への遺産として残すことができる。

しかも株式配当による〝年金〟は、公的年金のように時の政府のさじ加減で減額される心配がない。インフレにも強い。優良企業は原材料費や燃料費、人件費の上昇に対して製品価格やサービス料金の値上げで対応できるので利益水準の維持や拡大を図ることができる。

場合によっては、配当を増やす余地が出てくるかもしれない。インフレで目減りする一方の銀行預金とは大違いだ。

ゆとりある老後生活(=必要資金36万円)を送るためにもっと配当収入額を増やしたいのであれば、毎月10万円の積立金を、さらに12万円、15万円と上積みすればよい。

老後は働かず生活費を公的年金(22万円)と株式配当金で賄おうとすれば、ひと月当たり14万円の配当収入が必要だ。そのためには、退職前までに4,200万円(=14万円×12カ月÷0.04)のおカネを用意しなければならない。そのためには毎月22万円以上、年間260万円以上の積み立て投資をしなければならない。

普通のサラリーマンにはかなりハードルが高い。しかし共働き世帯なら夫婦2人で積み立て資金を分担し、積立期間を10 年から15年へ広げるなどの工夫をすれば、決して手の届かない数字ではない。

逆に資金に余裕のない人は背伸びをせず3万円、5万円の積み立て投資でもオッケーだ。チリも積もれば何とかで、老後資金の十分な足しになるはずだ。

もちろんここで示したシミュレーションのように、すべてが想定どおり順調に運ぶとは限らない。10年のあいだに投資した銘柄の株価が思わぬ経営危機で大きく値下がりし、配当が減配や無配に陥ったりするかもしれない。倒産や吸収合併で、投資した銘柄の株価が紙くず同然になっているかもしれない。

だからこそ、投資対象をそうしたリスクの少ない安全な銘柄、つまり業界トップの企業に絞り込むことが必要なのである。もちろん業界のトップ企業といえども、今後予想される技術革新やグローバル化の荒波と無縁ではない。

だが、下位の企業に比べれば生き残れる確率が高い。投資の金額が大きくなれば、複数の業界トップ企業に分散投資を行なうことが可能になる。株価の値下がりや減配・無配のリスクをさらに減らすことができる。

川島 睦保

フリージャーナリスト、翻訳家

※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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