コンクリート・アスファルトで目を凝らせば見つかる“小さな赤い生き物”「カベアナタカラダニ」とは 潰すと赤い汁が...そしてメスしか確認されていない不思議な生態

春を告げにやってきて、夏の到来とともに去っていく不思議な生き物「カベアナタカラダニ」をご存じでしょうか。

名前は知らなくても、きっと見たことはあるはずです。コンクリートの壁を動き回る、あの「小さな赤い生き物」です。

害虫駆除などを手掛ける、東洋産業の大野竜徳さんは「タカラダニは今、都市部で目を凝らせば、見つからないほうが少ないくらい発生している」といいます。

ーそんなに身近な生き物なのでしょうか?

(東洋産業 大野竜徳さん)
「気にしなければ目に映りにくいですが、よくよく見ているとコンクリートやアスファルト、壁に材木、ざらざらした面が大好きで、天気のいい日の日当たりのいい場所には大体いて、【画像①】のように、よく目を凝らすと見えてきます」

「特に街中や道路沿いなど、ほかの生き物があまりいない場所に逆に多くみられる生き物です。【画像②】のように車のタイヤにくっついていることもあります」

「カベアナタカラダニは、暑いくらいの日にあちこち動き回って、飛んできた花粉や落ちてきた虫などを食べています。

夜や天気の悪い日は、建物に生じた隙間(クラック)やコケの布団の中で休んでいるものが観察されます」

その生態は…メスしか確認されておらずクローンのような生殖か?

(東洋産業 大野さん)
「カベアナタカラダニは、1mmくらいの真っ赤な小さなダニです。3月末、サクラが咲くころから見かけ始め、梅雨前に最も数が多くなるように感じます。

梅雨の終わりとともに数をめっきり減らし、夏真っ盛りの8月ころには目にしなくなります。

1年の間で言うと、春先に卵からふ化し、梅雨明けには産卵を終えて死んでいくものが多いのでしょう。

このカベアナタカラダニは、メスしかまだ確認されていないとされていて、クローンのような生殖をおこなっていると考えられます」

(東洋産業 大野さん)
「さて、この真っ赤なタカラダニ、不思議な名前だと思いませんか?うろうろどこからかやってきて、潰すと赤い汁が出る。

白い洗濯物などについたら赤みがかったオレンジ色の体液でせっかく洗濯したのに汚れを付けてしまいます」

ーそんなダニの何が「タカラ」だというのでしょう?

(東洋産業 大野さん)
「それはこのグループの仲間の生態によります。

タカラダニの仲間には寄生性のものがいて、例えばセミやカマキリ、クモなどにとりついてその体液を吸います。

とりつかれた生き物はタカラダニが取りついたままで生活します。当然人が近づいたら逃げますし、飛んで行ってしまいます。

その姿が、真っ赤な『タカラ』をもった生き物がいる、ということで名づけられたのかもしれません」

ータカラダニは家の中にもいるのでしょうか?

(東洋産業 大野さん)
「カベアナタカラダニは家の中で発生することはなく、外で生活をしているものが家の中に入ってきます。研究された事例が少なく、昔は『ハマベアナタカラダニ』と呼ばれていました。

春先に突然現れ、夏には消えていくこの不思議な生き物のことは何もわかっておらず、冗談半分に
「春の風に乗って空から降ってきているんじゃないか?」
「春先に宇宙から侵略してくる宇宙ダニだ!」

みたいなトンデモ話で笑っていました。

近年、その生態がわかってきて、『ハマベアナタカラダニ』とは違う種類だということや、エサは花粉で、産卵は近くのコケや建物に生じた隙間(クラック)に多いということが明らかになってきています。

確かに、よく見てみると、家の玄関の花瓶の中でおぼれたり、花の雄しべにくっついていたりするのを見たことがあります」

ー駆除したい場合はどうすればよいのでしょうか。

(東洋産業 大野さん)
「残念ながら、こうすればいなくなる!という方法はないのですが、どうしても気持ちが悪いので、一時的でもいいのでいなくなってほしい、というときには市販の殺虫剤。スプレータイプや液剤タイプなどの薬剤は大体効きます。

また、日当たりのいい乾燥した場所が好きなので、水を撒くと嫌がって一時的にいなくなります。でも、ずっと濡らしているとコケが生えてしまうので逆効果です。

おうちや外構のメンテナンスや掃除は根本的によい対策になります。
コンクリートやブロック塀、おうちやマンションの屋上をつるつる目に防水塗装してしまうのも手です。

ざらざらしたところやもこもこしたコケが生えたところ、隙間などを埋めてしまうと、歩きにくく、潜みにくい、しかも空から飛んでくる花粉や虫の死骸が引っかからなくなるのでその数がずいぶん減ります」

ー見た目がいかにも「害虫」のようですが、人にはどんな害がありますか?

(東洋産業 大野さん)
「真っ赤な色でさも血を吸ったり、人の体に害を与えそうに見えるかもしれませんが、人とは無縁の生活を送っています。みなさんの身の回りにも今、たくさんいるはず。

1年のうち、春から梅雨明けまでの短い間だけたくさんその姿を見ることができる不思議な生き物です。外で腰掛けたり手をついたりするその前に、そこにいないかちょっと見てみましょう」

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