『虎に翼』「一握りの男」が岩田剛典の新たな代名詞に 寅子と花岡のもどかしい関係性

裁判官となることが決定した花岡(岩田剛典)の誘いで2人きりで会うことになった寅子(伊藤沙莉)。このまま2人の関係性に進展があるのかと思われたが、花岡から告げられたのは意外な一言だった。『虎に翼』(NHK総合)第32話では、無事に弁護士資格を取得した寅子に大きな壁が立ちはだかる。

寅子の色恋沙汰に耳をそばだてて聞いていたのは花江(森田望智)。「早く会いたい」という花岡の言葉を聞いた花江は、寅子がプロポーズされるのではないかと盛り上がっていた。「何着ていくの?」と興味津々な花江に対し、寅子はあくまでも「仕事だから」と無関心を貫く。寅子が少しでも歩み寄れば、2人の関係性はグッと縮まるはずだが、そう簡単にはいかない。恋とはいつの時代も難しいものだ。

だが、寅子は花江から盛り立てるあまり意識せざるを得なくなってしまっていた。いつもの寅子であれば、花江の言葉に耳を傾けず受け流していたはずだが、心のなかでは花岡の存在を意識しているらしい。

当日は花江とはる(石田ゆり子)の助けを借りて自作した黄色いワンピースを着て、意気揚々と事務所へと向かった寅子。もちろん事務所の男性たちは寅子がいつもとは違う身なりをしていることには気づかない、一握りではないその他大勢だ。それにしても、事務所の男性陣にそれとなくアピールする寅子がかわいらしい。だが、花岡は彼らとは違う一握りの男性だった。寅子を見かけるや否や、「その服とってもよく似合ってるよ」とさらっと言えてしまうあたりはさすが。花岡を演じる岩田が、X(旧Twitter)で「一握りの男」と発信しているのもなんともユニークだ。

https://twitter.com/T_IWATA_EX_3JSB/status/1790183110988153023

2人で会いたいと言うものだから、花岡からプロポーズを期待する声も多かったが、花岡は寅子に佐賀地裁への赴任が決まったことを明かした。それはつまり、これまでのように昼休みに集まって、食事を楽しむことができなくなるということでもある。寅子は顔色ひとつ変えずに花岡の話に耳を傾けていたが、きっと寂しさを感じていたことだろう。

帰り際、2人の間には長い沈黙が訪れる。お互い相手に何かを期待しているような間にも見えたけれど、寅子は「お互い頑張りましょうね」と握手を求める。2人にはまたいつか再会してほしいと願うばかりだ。

昭和15年の春、帝大入学を目指している弟の直明(小林未来)は、岡山にある進学校の寄宿舎に入るために家を出ることになった。大切な家族との別れを悲しむ寅子だったが、また新たな出会いが訪れる。高等試験に落ちたよね(土居志央梨)が手伝いとして雲野事務所で働くことになったのだ。寅子とよね、轟(戸塚純貴)の3人は、花岡の不在を埋めるように一緒にお昼を共にすることが増えた。

そして昭和15年の10月には修習期間を終えた寅子が晴れて弁護士資格を取得。だが、雲野事務所では修習期間とは仕事内容にはさほど変わらないだけではなく、雲野(塚地武雅)は困っている貧しい人の依頼をたくさん受けるあまり、寅子たちへの給料の支払いも遅れる始末。それに加えて、寅子は女性というだけで依頼人から嫌悪され、いつまでたっても法廷に立つことはできない。早く法廷で活躍する寅子の姿を見たいものだが、前途多難な幕開けとなりそうだ。
(文=川崎龍也)

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