富士山の登山、人気ルートが有料に。「オーバーツーリズム」対策で2000円徴収。事前予約システムも

夏の富士山(左)と、登山道の標識(右上)、混雑する富士山の山頂

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だれもが一度は「登ってみたい」と思う富士山。世界文化遺産の登録から10年あまりがたち、観光客がどっと押し寄せる「オーバーツーリズム」が問題になっている。

なかでも、山頂で日の出を見る「ご来光登山」が人気で、ピーク時には登山道や山頂が大混雑する。日の出時刻に山頂にいるためには夜中に登る必要があり、仮眠もとらずに歩き続ける「弾丸登山」の危険性が指摘されている。

これらの問題を解決しようと、山梨県側の人気の登山道、吉田ルートでは、2024年夏の登山シーズンから通行料2000円を徴収することになった。

登山者数も1日4000人に制限し、午後4時から翌午前3時まではゲートを閉鎖して、一般登山者の通行ができないようにする(ルート上の山小屋に宿泊予約をしている人は通行可)。

登山口での混乱を防ぐために、山梨県は通行予約システムを導入することも発表した。「富士登山オフィシャルサイト」からアクセスして、クレジットカードかQR決済で通行料を支払う。5月20日から稼働するという。

予約なしでも、制限人数に空きがあれば当日の受け付けで登山できるが、山梨県は「事前予約をしていれば、人数規制を気にしなくてすみます。5合目の窓口で支払い手続きをすることもなくスムーズに登山がスタートできます」と利用を呼びかけている。

「ご来光」を見るために集まった人たちで、富士山の山頂が大混雑した=2022年8月15日

富士山「吉田ルート」通行予約の流れ

富士山の標高は3776メートルで、日本一高い。その美しい姿が人々から愛され、2013年に世界文化遺産に登録された。

世界遺産登録の効果で、近年は日本国内だけでなく世界中から観光客が訪れる。登山シーズンは7月のはじめから9月上旬に限られるが、環境省の統計によると、2023年は約22万人が登山したという。

主要な登山道は4つある。山梨県側の吉田ルートのほかに、静岡県側には須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートの三つがある。最も登山者数が多いのは吉田ルートで、23年は全体の6割にあたる13万7000人がこのルートを利用した。

通行料を徴収するのは吉田ルートだけで、静岡県側の3ルートは今シーズンも徴収しない。ただしいずれのルートでも、任意の「富士山保全協力金」(1000円)の支払いは呼びかけている。

山梨県によると、吉田ルートの登山者が4000人を超えた日は、23年シーズンは5日あった。週末やお盆の期間中は混雑するという。ルート上には16の山小屋があり、約2000人が泊まれる。宿泊には個別の予約が必要となる。

夏の富士山=2021年7月19日

「ご来光」を迎えた登山者=2021年7月19日

山頂を目指す登山者のライトが、富士山の登山道を照らし出す

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