『95』髙橋海人が信念を曲げて中国拳法で強くなる Qに芽生え始めた“正しい未来”への思い

ドラマ『95』(テレビ東京系)第6話で、劇中の1995年の夏は幕を閉じる。それは祭りのあとのような、少しの寂しさとほろ苦い思いが残る季節となった。

その一つがセイラ(松本穂香)が消息を絶ったことだ。Q(髙橋海人)はセイラとホテルで一夜を過ごし、ゴミだらけの早朝の渋谷でもう一度花火を見ることを約束する。2024年の現代で秋久(安田顕)が回想する、セイラの異様に冷たい指先の記憶。それ以来、セイラはQの前から姿を消すが、翔(中川大志)の元に突如現れる。翔が何者かに襲われ病院送りにされたからだ。頭を下げるセイラに、翔は「お前のせいじゃない」と話すが、どうやら襲われた原因はセイラに関係があるようだ。連絡が取れなくなっていた期間に何があったかは次回明らかになっていくだろう。

翔を襲ったのは、キューティーハニーの一員。渋谷を牛耳ろうとしている実業家・牧野(三浦貴大)がかわいがる武闘派暴走族で、翔を背後から襲ったのが大黒(勝矢)だ。鉄バットで後頭部を殴打し、腕をへし折る。一度エンジンがかかったら歯止めがきかないほど、暴力のリミッターが外れていることは明らかだ。ほかにも、目玉を潰したり、顔面を壁に押し付けながら削って行ったりと、彼が常軌を逸していることはよだれをたらし、キマっている目線からも見てとれる。これからQたちチームにとっての最大の敵になっていくのだろう。

さらに加奈(浅川梨奈)は、翔が最も嫌う援助交際で補導され、チームを抜けることとなった。少しずつチームがバラバラになっていく中、Qは中学時代に通っていた中国拳法に再入門する。 翔がやられて最も熱くなっていたのは、渋谷浄化作戦でもチームの暴力に手助けしなかったQだった。武術を再び習得したQは4人の相手を前にしても勝てるほどに強くなっていた。信念を曲げてまでも、なぜQは強くなることを選んだのか。

それはチームを守るため。Qの手下のような存在となっている栗田(井上瑞稀)が、キューティーハニーに対して「やっちゃいますか? あいつら」とQへ投げかけるが、「やらない、今はね」とQは返答している。絶好の機会を狙っているのだろう。その余裕から、再入門の成果は精神的な強さにも表れているのが分かる。

また、第6話で印象的なのは、翔の母・玲子(斉藤由貴)やQの母・悦子(紺野まひる)が重んじる「人脈」の考えだ。「上とか目指してないんだ。今がよければそれでいいって思ってんの? 武器とか財産とかふざけんなよ」というQのセリフは、「今を生きる」という信念の翔を否定しているようにも捉えられる。今を生きたことで、Qと加奈は後悔を抱く結果になったのも事実。そこには「選ぶべきだった正しい未来」というQに芽生え始めた思い、信念がある。
(文=渡辺彰浩)

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