バイエルンで貴重な経験。大宮U18の1年生ボランチ神田泰斗が示した可能性。指揮官は「予測がすごく速い。賢い子」と評価

相手からプレッシャーをかけられても慌てない。高校1年生とは思えない落ち着きでボールを捌き、チャンスと見れば鋭い縦パスを刺してチャンスを演出する。

6試合でプレータイムは432分。U-18高円宮杯プレミアリーグEASTで堂々たるプレーを見せているレフティがいる。大宮U18の神田泰斗(1年)だ。

最大の持ち味はゲームを読む“眼”と正確な左足のキック。5月12日に行なわれたU-18高円宮杯プレミアリーグEAST・第6節の尚志戦でも、その才覚を存分に発揮した。

5試合連続で先発起用されると、中盤の底でパス回しの中心として躍動。状況を見てCBからボールを引き出し、簡単にロストもしない。後ろ向きの状態でパスを受けるだけではなく、相手のプレスをかいくぐりながら前を向いてボールを前に運んでいく。そこから攻撃のスイッチを入れるパスを前線に入れ、攻撃の出発点として違いを生み出した。

何より光ったのが守備面だ。大宮U15時代は、球際の勝負やこぼれ球の回収よリも攻撃面でチームに貢献するタイプだったが、この日は豊富な運動量を活かして球際で奮闘。ボールが流れてくる場所を予測し、最適な位置取りでボールを拾って守備と攻撃を繋ぐ役割を全うした。

相手に押し込まれる時間帯が増えた後半に守備で存在感を発揮したのは、神田の成長を示す何よりの証拠だろう。

2-0で快勝した試合後、丹野友輔監督は神田の成長をこう話す。

「神田は代表の遠征が直前にあったので開幕節でスタメン起用できなかったんですが、それ以降はスタートでゲームに出ているなかで、1試合こなすごとに良くなっていて成長をすごく感じられます。セカンドボールの予測がすごく速い。賢い子なので。

自分もU-15世代から彼を見ていましたが、足もとでボールを捌くのは上手。でも、セカンドボールなどの戦いもできるようになっていかないといけないので、彼はしっかりそういうところを努力してくれた。ヘディングなどの競り合いもやれているので、それが良い形で出ているのかなと思います」

2か月前に中学校を卒業したばかりの新鋭だが、U15時代からお世話になっている指揮官の指導を受けて、右肩上がりで力をつけている。フィジカル面は改善の余地を残し、「守備はまだまだ」と口にしたものの、「セカンドボールの回収で少しはチームに貢献できたのかな」という言葉には充実感が滲んだ。

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昨冬のU-15高円宮杯ではキャプテンとしてチームを準優勝に導くなど、有望株としてクラブから大きな期待をかけられていた神田。U15時代から丹野監督から守備の重要性を説かれ、意識改革に取り組んできた成果が今に繋がっている。神田は言う。

「中2の時に(左SBから)ボランチにコンバートされてから、丹野監督から常に守備の予測は求められていたのと、何回か代表活動などでヨーロッパのチームと対戦して学んだこともある。自分はフィジカルがそんなにあるタイプではないので、頭で考えて予測することをU18に上がる前から取り組んできたことが大きい。

元々、予測はできていたと思うけど、今はそれにプラスして、ひとつ前で捕まえた方がいいなとか、スペースを埋めた方がいいなとか、そういうのは少しずつ身についてきた」

また、クラブでの活動に加え、昨冬にバイエルン・ミュンヘンのU-15チームに短期留学した経験も、成長スピードを加速させる契機になった。「ヨーロッパの中でもドイツは少し日本に似ているというのは聞いていた。最初は、馴染めないまでは言わないけど、少し難しい部分もあったけど、練習でゴールを決めたり、プレーでアピールをしていくと、徐々に認められてバイエルンの選手と関係性が深まった」という。

「ボールを奪うプレーがすごく評価される。それはドイツですごく感じて、その2週間で奪いに行く姿勢は日本に持ち帰ろうと思った」。守備の予測でも発見があり、「寄せてくるスピードが速い。自分は足が速くないので、ひとつ速く予測できれば、相手に対して1歩、2歩寄せる距離が変わるので、その感覚はドイツで養えた」のは大きい。

世界基準を知った15歳はプレミアリーグで研鑽を積んでいけば、さらなる飛躍も見えてくる。来年のU-17ワールドカップを目ざす背番号24のチャレンジはまだ始まったばかりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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