「猿の惑星/キングダム」SFに隠された裏側のメッセージにも目を向けてください

有村昆

【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。韓国の8人組ボーイズグループ「Stray Kids(ストレイキッズ)」が米国で人種差別を受けたと伝えられています。一部メディアによると、グループは6日、ニューヨークで、米国最大のファッションイベント「メットガラ」に出席。レッドカーペットでカメラマンから「ロボットのようだ」「ヘッドショットを撃ちたい」など差別的なような声をかけられたそうです。

人種差別は人類が抱える大きな問題の一つですよね。そこで今回は、人種差別への風刺から生まれた大人気シリーズの最新作、映画「猿の惑星/キングダム」(公開中)を紹介します。

本作は猿たちが文明を築き、支配者として君臨する世界が舞台。人類は野生化し、猿におびえながら生きている中で、猿たちの間で激しい対立が勃発。人類の運命は果たしてどうなるのか――というお話です。

猿たちが文明を持つ世界観が特徴である「猿の惑星」シリーズは、原作を書いた小説家ピエール・ブールさんの戦争経験から生まれているんですね。ピエールさんは第2次世界大戦でフランス軍に徴兵され、1943年に日本軍の捕虜となっています。その際に受けた非人道的な扱いをSFに昇華させたのが「猿の惑星」。この映画はただ普通に楽しむだけでなく、SFに隠された裏側のメッセージにもぜひ目を向けていただきたいです。

今回のニュースを受けて、やはり人種差別の問題は根深いものがあると痛感しました。大戦からこれほどの時間がたち、これだけ文明が発展してもいまだにこんなことが起きてしまうんだと。

さらに難しいのが、差別は被害者側の主観の問題でもあるということです。

僕も映画祭でヨーロッパに行くことがあるのですが、やはり差別的に感じることが実際にありました。入店したレストランで明らかにアジア人だけ端っこの方に通されていたりとか、注文で声をかけてもスタッフが全然来てくれなかったりとか。なにか歓迎されていないような…。

しかし、これもあくまで僕個人がそう感じたというだけのことであって。ここが本当に難しい問題ですよね。

私たち人類は国を越えると見た目も文化も異なります。本当の意味で共生できるのかなと。その難しさが上質に描かれた一作だと思います。ぜひご覧ください。

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