琴桜に「中途半端」の指摘…素材は一級品のサラブレッドに欠けているもの【優勝候補力士たちの勝機と課題】

琴桜(C)日刊ゲンダイ

【優勝候補力士たちの勝機と課題】

琴桜(大関/26歳・佐渡ケ嶽部屋)

12日に初日を迎えた大相撲5月場所。先場所、110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士は休場となったものの、苛烈な賜杯争いが予想される。果たして、誰が頂点に立つのか。優勝候補力士の抱える強みや課題を追った。

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5月場所を前に元横綱の祖父が名乗った「琴桜」を襲名。実に50年ぶりにそのしこ名が番付に復活した。父の琴ノ若(現佐渡ケ嶽親方)も元関脇。親子3代、三役以上を務めるサラブレッドで、ファン人気も高い。

相撲強豪校の埼玉栄高を経て、2015年に実父が師匠を務める佐渡ケ嶽部屋に入門。当時から「父以上の力士になれる」と期待が高く、実際に父の番付を抜いたように素質は一級品だ。

転機となったのは、埼玉栄3年時だ。将来のプロ入りを目指していた琴桜だが、入門前は父からあまり厳しく指導されず、いわゆる「お坊ちゃん気質」。埼玉栄でも2年生までは、のんびり屋で試合でも弱く、団体戦のレギュラーから外されたほどだった。

それが3年になって主将に指名されると、精神面も徐々に成長。「素質は十分あっただけに、本人も『自分ならプロでも活躍できる』と思い込み、必死にならなかったのでしょう。でも、主将という責任感ある立場になったことで、ようやく『このままじゃいけない』と自覚したのではないか」とは、タニマチ筋だ。

入門後は師匠の父、部屋のおかみである母にも敬語を使い、両親も他の弟子以上に厳しく接している。

もっか3場所連続2ケタと安定感は十分だが、気がかりな面もある。

「以前の琴桜は立ち合いが鋭く、力強い相撲が持ち味だった。それが最近は立ち合いの圧力が一番ごとにバラバラで、後手に回ることが少なくない。そして後手になったらもろい。琴桜はパワーがあり、相手によって取り口を変えられる器用さもあるものの、『こうなったら負けない』という型がない。それでいて相撲の幅を広げようとしているので、中途半端になっている印象です。絶対の型をつくり、そこに持っていくまでにどうすればいいかを突き詰めれば、それこそ横綱昇進も見えてくる」とは角界OB。(【豊昇龍編】に続く)

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豊昇龍が「朝青龍の甥」として評判になってからはや数年。

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