「手作り梅干し守りたい」 全国の産地に製造所を、和歌山・みなべの梅ボーイズが整備費募る

改修中の澤田酒造の梅干し製造所(愛知県常滑市で)

 食品衛生法の改正で作り手の減少が危ぶまれている「手作り梅干し」を守ろうと、和歌山県みなべ町の若手農家らでつくる「梅ボーイズ」(山本将志郎代表)が6月1日まで、インターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)をしている。全国の「小さな梅産地」に梅干しの製造所を整備するプロジェクト。現在、愛知県と神奈川県の3カ所で整備を進めている。

 改正法は2018年に成立し、21年に施行された。それまで届け出制だった梅干しなどの漬物の製造販売が、保健所の「営業許可」が必要な許可制となり、専用の調理場や手を触れずに使える手洗い水洗の設置など、衛生基準を満たす施設が必要になった。今月末まで3年間の経過措置が取られているが、6月1日以降は全面実施される。

 生計を立てるまではいかなくても生きがいとして個人で梅干しを作っている農家や高齢者にとって、新たな設備投資は負担が大きい。投資した分の利益を回収できる見込みがなく、梅干し作りを断念する人も出てきている。

 「梅ボーイズ」の山本代表は19年、みなべ町晩稲に梅加工販売会社「うめひかり」を設立し、塩と赤シソだけで作る昔ながらの甘くない梅干しを製造販売している。同社は昨年、衛生基準を満たす製造所を新設した。

 そのノウハウを生かし、全国の「小さな梅産地」に製造所を整備することで「昔ながらの甘くない梅干し」の作り手を守り、次世代につなぎたいとの思いから、今回のプロジェクトを始めた。

 CFで集まった資金は、既存施設を改修して製造所を造る際の改修費用の一部に充てる。3月29日から目標金額100万円で募ったところ、初日で達成。今月14日時点で、943人から総額728万8900円が寄せられている。

 今回は、希少な「佐布里(そうり)梅」で梅酒や梅干しなどを製造している愛知県常滑市の「澤田酒造」、神奈川県小田原市で「十郎(じゅうろう)梅」を栽培している梅農家グループ「うめっち」や、「長束(なつか)梅」「鶯宿(おうしゅく)梅」を栽培する愛知県新城市の農家と連携し、3カ所で製造所の整備を進めている。さらに4カ所目も検討中という。

 山本さんは「全国に、その地域にしかない梅の品種があり、それが地域の食文化の豊かさにつながっている。本場みなべ町の梅干しづくりの技術を知ってほしいし、全国の梅文化を盛り上げていきたい」と話している。

 寄付はCFサイト「キャンプファイヤー」で受け付けている。金額に応じて、佐布里梅と十郎梅、南高梅の食べ比べセットや、みなべ町で梅収穫体験などの返礼品を用意している。

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