香港メディア大物の国安法違反裁判、イギリスや日本の政治家ら証人喚問を要求 「完全性に疑問」

中国政府の香港国家安全維持法(国安法)違反の罪に問われた、香港メディア界大物で民主化活動家の実業家、黎智英(ジミー・ライ)氏(76)の裁判をめぐり、イギリスや日本など9カ国の政治家からなるグループが、証人喚問の実施を要求している。

イギリス与党・保守党の元党首サー・イアン・ダンカン・スミスや、日本の元防衛相、中谷元氏を含む政治家グループは、自分たちの名前が黎氏の裁判で提出された証拠で数十回引用されているにもかかわらず、裁判をめぐり正式な連絡は受けていないとし、「捜査の完全性が損われている」と訴えている。

黎氏は国安法に基づき、外国勢力と結託した罪に問われている。

有罪となれば、終身刑を受ける可能性がある。黎氏は民主派タブロイド紙・蘋果日報(アップルデイリー)の社主だったが、同紙は当局によって廃刊に追い込まれた。

予定より1年遅れて昨年12月に始まったこの裁判は国際的な非難を引き起こしており、香港の司法の独立性が試されていると広く受け止められている。

「裁判の完全性」に疑問

BBCが独占入手した「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)の共同書簡の中で、IPACメンバーは、黎氏の裁判で自分たちの名前が50回以上引用されているとし、裁判所への証拠提出を求めている。

「犯罪容疑の『目撃者』あるいは『共犯者』とされるIPAC(メンバー)が、香港当局から一度も接触を受けていないという事実は、この裁判の完全性がどの程度維持されているのか疑わしいことを表している」と、IPACのエグゼクティブ・ディレクターで英人権活動家のルーク・デ・プルフォード氏(英保守党)は述べた。

「この裁判は決して、真実に関するものではない」と、ダンカン・スミス氏は付け加えた。「しかし今、香港で使用されている、世界中から尊敬されているイギリス統治下で確立されたコモンローが、中国の国家安全維持法によってどこまで傷つけられているのかを知る機会を、私たちは得ている」。

「反中国的」と中国は一蹴

香港は今も変わらず、イギリスから受け継いだコモンローの法制度に支えられた、法の支配を維持していると主張している。

中国政府も以前、IPACは「反中国的」だと一蹴している。IPACメンバーには、マーコ・ルビオ米上院議員をはじめ、中国共産党指導部に非常に批判的なことで知られる人物が名を連ねている。

IPACは2020年に設立された。貿易や安全保障、人権などの問題をめぐり、民主主義国家が中国に対して協調的政策をとることを求める、34の立法機関や議会の議員で構成されている。

香港の国安法に猛反発しているIPACは、「香港は、政府に異を唱えることが世界で最も危険な場所の一つ」だと宣言している。

BBCは香港の律政司(司法省)にコメントを求めている。

(英語記事 Lawmakers ask HK court to call them as witnesses in Jimmy Lai case

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社