とある老人の“追憶”を巡るストーリー 沈没船パズルプラットフォーマー『Gift』レビュー

ダイビングヘルメットを被った老人が、沈みゆく船から逃げるゲーム、それが『Gift』だ。国内でスマートフォン向けゲームを開発していたスタジオであるToydiumが、Steamに打って出た一作目となり、販売を『カードファイト!! ヴァンガード』などで知られるブシロードが手掛けている。

筆者は8時間ほどかけてクリアしたのだが、レビュー数を見る限り、初動の売れ行きはそこまで芳しくはないようだが、Steamユーザーに充分受け入れられる素地は感じたので、本稿で紹介させていただきたい。

■シンプルなパズルプラットフォーマーとしてのゲーム部分

本作はいわゆる2Dのパズルプラットフォーマー(ジャンプを駆使して足場から足場へと飛び移っていくゲームジャンル)だ。インディーの先行作品で考えると『LITTLE NIGHTNARE』や『INSIDE』を彷彿とさせるが、沈没船が舞台とはいえそこまでダークではなく、出血表現やホラーテイストは一切ない。

スクリーンショットを見てもらえばわかる通り、可愛らしくデフォルメされた異形頭のキャラクターたちが登場し、ノンバーバルな方法でほんの少しずつストーリーを開示してくれる。

ゲーム部分はよくまとまったデザインをしており、トレーラーから予想される通りのレベルが待っている。勢いをつけて鎖から鎖に飛び移ったり、箱を押して足場を作ったり、謎のクリーチャーに追いかけられながらジャンプアクションをしたりといった具合だ。序盤こそチュートリアル部分が長いなと感じたものの、沈没船というステージ設計にしてはかなり背景やギミックにバリエーションのあるゲームだった。

このゲームのもっとも重要なフィーチャーは、沈没船が傾くことで、ステージが左右のどちらかに回転するというギミックだ。これはステージの進行ごとに決まった方向に傾くので、ランダム性はなく、覚える必要もない。「船から脱出する」という面白さを演出したもので、水位が上下したり、取れなかった箱が落ちてきたりするのだ。

この試み自体は面白いと思ったが、いくつかの場所で若干の酔いを感じたので、三半規管が弱い人は注意が必要である。

全体的にそつなくできた作りであり、謎解きもそこまで複雑ではなく、多くの年齢のプレイヤーに楽しまれることだろう。しかし、すべての収集品を探して回るとかなり歯応えがあるので、チャレンジングな部分も残されている。

■おじいさんの思い出を巡る物語 アイテムで語られるストーリー

先述した通り、本作のNPCは喋ってはくれず、身振り手振りや独自の言語で会話をしているため、ストーリーはすべて道中で手にする収集品を元に想像するほかない。

といっても、ゲームの早い段階で、本作のストーリーがおじいさんの人生を追憶するものであることに、多くのユーザーが気付くことだろう。おじいさんは、同じ沈没船の乗客で、自分と似たようなアクシデントに見舞われた彼らを助けていくうちに、彼らが自分の人生に関わってきた人々であることを思い出していくのだ……。

こう書くと、なにやら複雑で、収集品をすべて集めなければ何もわからないタイプの、オープンエンドな作品に思われてしまうかもしれないが、そこまでではない。普遍的な人生を振り返りつつ、そこに小さな悲劇があり、ちゃんとプレイヤーのエモーションがラストに向くように仕掛けてある。

逆に言えば、そこまでダイナミックなフリやオチがあるわけでもないので、期待しすぎるのは控えよう。

かわいらしいキャラクターたちとともに、小さなストーリーを追いかけていく『Gift』は、パズルプラットフォーマーの初心者に向けられた素敵な小品だ。

ジャンルファンを飽きさせない工夫が多く盛り込まれているとは言い難いが、同ジャンルがダークでシニカルな作品に傾いているなか、ちょっと良いものを観た気になれるという意味で、本作の価値はなかなかに高いと感じている。

『Gift』はNintendo Switch/PC(Steam)/PlayStation5/Xbox series X|Sにて販売中。

(文=各務都心)

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