『Destiny』仲村トオル、主人公と対峙する弁護士を演じて「点と点をつないでいくとある答えにたどり着いた」

By TV LIFE

仲村トオル

主演を務める石原さとみをはじめ、亀梨和也、安藤政信、宮澤エマ、矢本悠馬、田中みな実、高畑淳子、佐々木蔵之介、仲村トオルら実力派キャスト陣が集結。話題沸騰中の大人のサスペンス×ラブストーリー『Destiny』。

そんな本作で亀梨演じる野木真樹の父であり、弁護士・野木浩一郎役を演じる仲村トオルさんにインタビューを敢行。先日放送された第5話では、ついに西村奏(石原)の父・辻英介(佐々木)との過去が明らかに。そんな野木の役どころや演じる上で意識していたこと、印象的なシーンなどを聞きました。


◆最初に本作の脚本を読んだ際に感じた印象は?

登場人物によって、ひとつのことだったり、複数のことだったりしますが、十数年前の出来事をそれぞれが引きずっているのだなと…。ポジティブな言い方をすれば、“そのこと”から目を逸らさずに、ずっと見つめ続けているところがいい、と思いました。それぞれが過去に犯してしまった過ちや取り返しがつかないと思っていた経験を取り返そうとする、もしくはそれに代わる大切なものを見つけようとする、これは映像になった時にとてもドラマチックになるんじゃないかなと感じました。

◆仲村さんが演じた野木は一見冷酷な、有能で野心にあふれる弁護士です。奏の父・英介(佐々木蔵之介)との因縁も明らかになりましたが、野木に感じた印象は?

最後まで演じてみて、表面的に冷酷な感じが漂うのは、自分に対する厳しさからきているものかなと。弁護士にもいろいろな方がいらっしゃると思いますが、優しさや甘さというのは一時的なものにしか過ぎないような世界なのかなと感じたんです。なので、冷たい感じに映っているのかもしれませんし、おそらく彼自身が目を逸らすことができない過去の出来事も影響しているのだと思います。

◆そんな野木を演じるに当たって、意識していたことはありますか?

僕個人の考えとして、野木は“裁判に勝つためだったらどんな手でも使う”という人ではないと思うんです。“正義の戦いだからこそ勝たねばならないし、正しいからこそ勝たねばならない”というところから全てがきているのだと。本当は黒なんだけど、グレーに見せることによって逃げ切る…というような人ではなく、白なのだから必ず白だと認めさせる人、という意識は忘れないようにしていました。

仲村トオル

◆先日放送の第5話にて第1部が完結しましたが、これまでで印象に残っているシーンを挙げていただくと?

第3話で野木が奏の元を訪ねるシーンがありましたが、その撮影中に気づいたことがたくさんありました。特に、野木が奏に対して「なぜお父さんは、自身の潔白をかけて闘わなかったんだと思いますか?」と問いかけるシーンは、台本を読んだ時点では感じなかった感情、言い換えれば前もって用意していた感情ではなく、せりふを言っているときに「なぜ死んだ?」という憤りが湧いてきて。それでさとみちゃんと「なぜ野木は今ここに来たのだろう?」みたいなことを話したのですが、野木が梅田祐希(矢本悠馬)に会いに行ったり、謎の行動を転々とする、その点と点をつないでいくとある答えにたどり着いたんです。それをさとみちゃんも「分かる」と言ってくれて。他にもいくつかそういうシーンがあったのですが、目指すべきはこっちだ、それならつながる、というのをすごく強く感じたので、このシーンはとても印象に残っています。

◆主演を務める石原さんの印象はいかがでしたか?

18年前に『氷点』というドラマで、さとみちゃん演じる主人公のお父さん役をやったことがあるのですが、その時から相当な時間がたち、女優としてもキャリアを積まれ、1人の女性としてもさまざまな経験をされて大人になったのだなと感じました。18年前は、かわいらしく儚げでありながらも足がしっかり地面にくっついている女の子という印象だったのですが、今は心の芯のようなものがたくましくなり、さらにしっかりと地面を踏みしめて歩いている、そういう変化を感じました。

◆仲村さんが石原さん演じる主人公・奏に感じた魅力は?

やはり前向きなところでしょうか。このドラマは過去を振り返るという意味でも登場人物が後ろを向く時間が長いですが、奏はその職業をはじめ、奥田貴志(安藤)との関係性からも見えるように、前を向いて生きようとしていますよね。明らかに不幸な過去をいくつも背負っているのに…。だからこそかもしれないですが、未来にある幸せを目指して生きている姿が魅力的だなと思います。

仲村トオル

◆息子・真樹との対峙も今後の見どころかと思いますが、演じる亀梨さんは以前「実は子供の頃に仲村さんと共演していた」というお話をされていました。本作での共演を振り返られていかがでしたか?

この作品の撮影で最初に会った時に、亀梨君から「小学生の時にトオルさんに会っているんです」と言われたのですが、僕は「えっ、どこで?」と(笑)。正直覚えていなかったのですが、結論として1997年に僕が出演したドラマ(『職員室』)に彼も出ていたと分かったんです。僕は中学校の教師で、生徒たちが野球をしているシーンに野球少年だった亀梨君がエキストラとして参加していたそうで…。それで不思議な縁を感じましたし、後からインプットされた、少年の頃から知っている…という感覚が、父と子を演じるのにすごく役に立ちました。真樹もかつては無邪気な少年だったのが、実家を出ていき、決して幸せとは言えない経験を経て今のような大人になった…。野木が真樹と会えていなかった時間を、実は20数年前に会っていたという情報を亀梨君がもたらしてくれて、本気でぶつかってくれるお芝居をしてくれて…。その人となりや醸しだされるものも含めて埋められたといいますか。もらったものが非常に多かった気がします。

◆仲村さんがこのドラマに感じる魅力は?

以前にもこの話はしたことがあるのですが、ある芸人さんがある大学の卒業式で話している映像を見たことがあって。その方が「過去は変えられる」というようなことをおっしゃっていたんです。「屈辱的な敗北もあったけど、その話を今誰かにすると笑ってくれる。ただ恥ずかしい失敗ではなく、楽しい思い出になった」と。過去の印象がご自身の中で変わった、ということだと思うのですが、僕自身もそれまでの敗北のおかげで前に思い切りダッシュできたようなことが多々あって、それである程度の距離を走った後に振り返ってみると、「あれはありがたい屈辱だったな」と思えたりする。そんなふうに過去に起きた事象自体は変えられなくても、少しでもいい記憶にするためにみんな懸命に生きているのが、このドラマの魅力のひとつじゃないかなと思っています。

◆最後に、このドラマのキャッチコピーにちなみ、仲村さんが“愛”する存在を教えてください。

家族です。そこには犬も含まれるのですが、守らなければ、幸福に長生きしてもらわなければと日々思いますし、僕自身もそうあれたらと願っています。

仲村トオル

PROFILE

仲村トオル
●なかむら・とおる…1965年9月5日生まれ。東京都出身。5月24日(金)公開の映画「帰ってきた あぶない刑事」(TOEI)に出演、7月放送予定のドラマ『飯を喰らひて華と告ぐ』(TOKYO MX)主演。『密告はうたう2』(WOWOW)が8月より放送・配信予定。

番組情報

『Destiny』テレビ朝日系
毎週火曜 午後9時~9時54分
石原さとみ 亀梨和也 安藤政信 宮澤エマ 矢本悠馬 曽田陵介・田中みな実・
高畑淳子 佐々木蔵之介 仲村トオル ほか

番組公式HP:https://www.tv-asahi.co.jp/destiny/
見逃し配信URL:https://tver.jp/series/sr9fan1hkw

●photo/徳永徹 text/片岡聡恵

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