市村優汰、父・正親からの教えで「天狗にならない」 母と鑑賞したライブで「ダンスをやりたい」と決意

インタビューに応じた市村優汰【写真:北野翔也】

8月、音楽劇『プリンス・オブ・マーメイド』で人魚の王子役

俳優・モデルの市村優汰(16)が、8月8日から12日に上演される音楽劇『プリンス・オブ・マーメイド~海と人がともに生きる~』(東京・よみうりホール)で舞台初主演を果たす。同作は、「海と人の共生」をテーマにした人魚の王子による冒険物語。市村は、父で俳優・市村正親(75)から学んだこと、同作への抱負などを語った。(取材・文=大宮高史)

――『プリンス・オブ・マーメイド』主演が決まった時の感想は。

「夢みたいな気持ちです。オーディションを受けた時は『受かったらいいな』と思いつつ、『無理だろうな』と思っていました。しかも、初主演でフライングの演出まであります。『これはもう本気で頑張らなければ』と、体力作りから始めています」

――タリクは人魚の王子で、石原颯也さんとダブルキャストでの主演になります。

「王子様なので、ちょっと恥ずかしいです(笑)。もちろん、王子の役自体が初めてですが『決まったからにはなりきろう』という気持ちでいます」

――特に目標にしていることはありますか。

「今、声変わり中なので『高い声をしっかり出せるようにならなければ』と思っています。地声が低くなって、高音を出そうとすると声がひっくり返ってしまうので、ボイストレーニングで自信をつけたいです」

――ダンスが特技と聞いています。

「一番力を入れているのはヒップホップとジャズダンスです。お母さんと一緒に見に行った倖田來未さんのコンサートで、ダンサーさんの格好良さに憧れて『ダンスをやりたい』と決意しました。ヒップホップから始め、ダンススクールにも通っています。でも、『それだけでは足りない』と思って、舞台スキルを上げるためにジャズダンスもやっています」

――主演が決まり、お父さまの反応ともらった言葉はありますか。

「父もびっくりしていました。『お前が主役だから、お客さんの視線はまず真っ先に集まる。舞台の上で一番見られる存在になれるように頑張れ』と言ってもらえました」

――3月に中学を卒業し、高校に入学しました。中学の思い出は。

「クラスで学級委員をやっていて、文化祭でクラスメイトの意見を一人ひとりに聞いて、企画にまとめて実現させたことがあります。中学の3年間も、後半になるとお仕事が増えきて部活を辞めたりと、学校にいる時間が減ってしまったんですが、楽しい3年間でした」

――頼もしいクラスのリーダーですね。

「でも、平凡な中学生でした(笑)。意外と学生の役って機会が少なくて。テレ東系ドラマの『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2』で、不登校の高校生を演じたことがありましたが、仕事場を離れて登校すると、『何で学校に行ってるんだろう』と不思議な気持ちになりました」

16歳にして178 センチの長身と小顔で、モデルとしても活動する【写真:北野翔也】

「生まれた時から舞台がそばにあった人生」

――あらめて、優汰さんが俳優を志したのには、お父さまの存在が大きかったと思いますが、芸能に興味を持ったのはいつ頃からでしょうか。

「0歳の赤ちゃんの頃から父の出る作品は見ていたと思います。もちろん、その頃の記憶はないんですが、2~3歳頃からDVDやBDを通じて、父の出演作は自然に印象に残っていて。僕もまねをして、テレビの前で踊っていました。だから、生まれた時から舞台がそばにあった人生かもしれません」

――具体的に大きな影響を受けた作品はありますか。

「『ミス・サイゴン』『ラ・カージュ・オ・フォール』『スウィーニー・トッド』です。どれもミュージカルで、『ミス・サイゴン』で、父はずっとエンジニアという、キャバレーを経営するおじさんを演じています。コミカルな中年のおじさんの役ですが、『うちの父さんが一番上手いぞ』って思える作品です。『ラ・カージュ・オ・フォール』では、(父は)鹿賀丈史さんとのゲイのカップルの役。ドレスも着て本当に女性のように振る舞っています。ジェンダーレスに役を演じてしまうところもすごいですし、『スウィーニー・トッド』では、ホラーな作品の中でシリアルキラーになりきっていました。音楽はきれいなのに、首をかき切って人を殺しちゃったり…。音楽とのギャップも怖かったです。こんな風にどんな人にもなれる父の姿を見て、憧れが加速しました」

――お父さまとの共演が夢の1つだと聞いていますが。

「『ラ・カージュ・オ・フォール』で共演することが夢です。僕が鹿賀さんが演じるジョルジュの息子のジャン・ミッシェルをやり、父さんがジョルジュのパートナーのアルバンで、舞台の上でもかわいがられながら、一緒にミュージカルを作ってみたいです」

――そんな正親さんの背中を見て、心がけていることは。

「『大切なのは服装や髪型じゃなくて、心なんだ』と父から聞かされて育ちました。だから、『天狗にならないで、誰にでも優しく手助けをしないとな』と自分に言い聞かせています。中学で学級委員をしていたのもその一環かなと思います。この前は道でお年寄りが重い荷物が持てなくて困っているところを見て、荷物を持ってその人が行きたいところまで一緒について行きました。人の多い場所だったのにみんな素通りしてしまっていたので、恥ずかしかったけど勇気を出して人助けができました」

――3月には「東京ガールズコレクション(TGC)」に初めて出演するなど、順調な活動に見えます。今後の抱負は。

「高校では新しい友達ができるかちょっと心配です(笑)。TGCでのランウェイも緊張しましたが、目線の振り方などが分かってきて楽しくできました。何より、『プリンス・オブ・マーメイド』は人生最大の挑戦になると思うので、体力、気力のすべてを懸けてやりきります」

□市村優汰(いちむら・ゆうた) 2008年5月10日、東京都生まれ。16年、父・市村正親の一人芝居『市村座』で舞台初出演。21年、『オリバー!』でミュージカル初出演。ドラマでは昨年、BS-TBS『天狗の台所』、テレビ東京系『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2』に出演。今年はTBS系『からかい上手の高木さん』に出演。俳優の他、モデルとしても活動中。特技はジャズダンス、ヒップホップ。178センチ。血液型A。大宮高史

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