【特集】世界遺産登録に期待 佐渡島の金山 観光客受け入れへ準備着々【新潟・佐渡市】

観光客受け入れへ準備着々

2024年7月、佐渡島の金山について、いよいよ世界文化遺産への登録の可否が審議されます。地元・佐渡市では、観光客の増加を期待して交通や宿泊などの課題を踏まえ、様々な準備が進められています。

ゴールデンウィークの佐渡市。カーフェリーから降りてきた人の中には、外国人観光客の姿もありました。「佐渡島の金山」が世界遺産に登録された場合、佐渡市は年間の観光客が現状の1.2倍、約50万人に増えると試算しています。

■シンガポール出身・千葉在住
「佐渡金山に行かないと佐渡に来たとは言えない。」
■東京から
「(Q.金山が世界遺産登録目指しているのは知っている?)しっています。(Q.そういう意味でも?)そうですね、混む前に早めにこようかなと。」

江戸時代から400年もの間、金銀を産出し、その規模は日本最大とされる佐渡金山。ユネスコの世界遺産暫定リストに記載されてから13年が経ちました。

4月、金山などを訪れた世界遺産委員国の大使らに、花角知事が金山の文化的価値をアピール。登録可否の判断が、約2カ月後に迫っています。
■花角知事
「手応えというか理解は本当に深まった。人事を尽くして天命をまつ。」

金山のおひざもと、佐渡市の相川地区。金山と佐渡奉行所を結んだ京町通りは、当時のおもむきが多く残されています。課題となっているのは、金山以外への観光客の誘致です。

かつて鉱山関係者が住んだ京町通りは、佐渡金山からわずか1.5kmと離れていないものの、あまり知られていないといいます。
■相川車座 根岸建次さん
「両津から金山までのバイパスができてしまっている。だから観光バスも全部そこを通りここまで来ない。」

住民を中心に構成するまちづくり団体相川車座。市や観光交流機構などと連携協定を結び、金山の世界遺産登録を見据えたまちづくりを進めています。観光客を呼び込むため、相川車座が進めるのは古民家を活用した「分散型ホテル」です。
■相川車座 根岸建次さん
「客室をわざと離れたところに点在させて、来る道中にお店やレストランがあったり街全体を楽しんでもらいたい。」

改修している古民家は4棟。客室やフロントなどの機能を分散させることで、町全体を1つのホテルに見立てます。こちらは佐渡金山が栄えたころ、陶芸品を作る工房でした。
■相川車座 根岸建次さん
「すごくおもしろくてここが蔵なので。蔵の中に客室があります。」

当時、使われていた蔵や土壁、骨組みはそのまま生かしました。1人1泊2万4000円前後を見込んでいて、7月にオープンする予定です。今後、飲食店などの整備も予定しています。
■相川車座 根岸建次さん
「観光客が増えてからお店ができるのが自然な流れだが、計画的なまちづくりでまた来てもらい、リピートを狙いたい。」

金山周辺で観光ガイドをしている本間満さんです。世界遺産に登録された後は、外国人客への対応が増えると予想されています。
■本間満さん
「(観光地の案内は)相当時間もかかりますからできればいいのですが、ちょっと英語が苦手・・・。」

英語でガイドができる「通訳案内士」の資格を持った人は、佐渡市内に数人しかいません。今のところどの程度需要があるか分からず、佐渡市は通訳案内士を増やすか検討中としています。一方、観光ガイド向けに外国人客を想定した講習会を開いていて、本間さんら約20人が参加しました。
■本間満さん
「自分たちも勉強しながら十分、楽しんで説明していけるようなガイドになりたい。」

佐渡市が課題として挙げるのが、観光客の足となる二次交通の確保です。市内のバス交通を担う「新潟交通佐渡」は、4月から運転手不足などを理由に平日は減便、土日祝日は予約制の運行となっています。千葉から来たというこちらの観光客は、バスの時間が合わず予定を変更したそうです。
■千葉からの観光客
「やっぱり不便ですよね、だけどそれは覚悟で来ているので。金山は行きたかったので行った。トキ(保護センター)行きたかったけど、いけなくて残念です。」

こうした状況を改善しようと4月、佐渡金山の周辺を巡る無料バスの運行が始まりました。
■佐渡市観光振興部 小林大吾部長
「今までの路線バスだと対応が難しいと考えているので、今回のような取り組みをした。」

事業費の3分の2が、国の補助金でまかなわれています。相川周辺は道が狭く、佐渡市は車を駐車場に停めてバスに乗ってもらうパークアンドライドを進めたい考えです。
■千葉からの観光客
「あると便利楽ちんに回れると思う。」

無料バスは一日5往復、きらりうむ佐渡を出発し、北沢浮遊選鉱場跡など5カ所を結びます。さらに、7月下旬ごろからは両津港と佐渡金山周辺を結ぶ直行便の運行が計画されています。
■佐渡市観光振興部 小林大吾部長
「世界遺産登録は、島民・県民が四半世紀にわたって取り組み続けてきた悲願。どれだけ観光客がきても対応できるような態勢を築いていきたい。」

高まる世界遺産登録への期待。受け入れの準備が着々と進められています。

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