『大槌超神楽ダイハンマー』にロボットアニメのすべてを見た! 地方PRアニメの本気ぶり

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。5月6日から5月12日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

本当は「先週は風呂シーンがすごかった!」という話をしたいのです。『この素晴らしい世界に祝福を!3』をはじめ、『怪異と乙女と神隠し』『ゆるキャン△ SEASON3』『ガールズバンドクライ』、そして『Re:Monster』などで語りたくなる風呂シーンがありました(女性向けでは、少し前の『ヴァンパイア男子寮』の混浴や薔薇風呂も印象的でしたが)。大事な話は、身も心も裸になって……ということなのでしょうか。

しかし吹けば飛ぶような当連載。風呂の話ばかりして万が一“怒られ”でも発生したら打ち切られてしまうに違いありません。というわけで、先週は『聖戦士ダンバイン』の実験映像が公開され、『コードギアス 奪還のロゼ』の上映が始まったことにちなんで、今回はロボットアニメの話からです。

ロボットアニメの美味しい要素を23分で『大槌超神楽ダイハンマー』
大槌町新作アニメーション「大槌超神楽ダイハンマー」
本作は岩手県の海沿いに位置し、人口1.1万人という大槌町のPRアニメ。地方都市がPRのためにアニメを作るというのは稀によくある話ですが、本作はそのなかでも力の入れ具合(と方向性)がちょっと目を見張るほど驚かされました。それこそ怪作『ぐんまちゃん』レベルです。

『ダイハンマー』の舞台は当然ながら大槌町。この町の役場の観光課に所属する大槌みとら(CV:高山みなみさん……なのも楽しい)の予行演習として、町内の観光スポットやグルメを小気味よく紹介する冒頭はよくある地方PRアニメのノリでそれはそれで楽しいのですが、6分ほど経って突然未確認生物の鬼獣が出現すると事態が急変。みとらは精霊の巫女と出会い、巨大ロボ(正確には超神楽ハンマー)に乗ることになります。

そこからは町を破壊する鬼獣と、『機動武闘伝Gガンダム』のモビルトレースシステムのようにロボットを操縦するみとらがバトルを展開。その過程でサポートメカの登場や変形、グレート合体、勇者パース、終盤にはみんなから力をもらってのパワーアップ&黄金化、それらの間に流れまくる挿入歌とロボットアニメの美味しい要素がこれでもかと繰り出されます。しかもCGロボットの戦闘も超カッコいい、『スパロボ』に出てほしいところ。

そのおかげで標準的なTVアニメ1話分にあたる23分強と地方PRアニメとしては長いものの、気付けばあっという間にエンディング主題歌のユーロビート(これも味わい深い)へ突入。あらすじによると「東日本大震災から逞しく苦難を乗り越えた勇気や希望をテーマにダイナミックに表現し、予想外なストーリー展開や、細部にこだわった美しい背景、活き活きとしたキャラクター描写による大槌町のもう一つの物語」だそうですが、こんな破茶滅茶なストーリー&内容でOKとした大槌町、お見事です。

冒頭の、みとらたちが風呂に入るシーンで入浴描写がなかったのだけは惜しいと思わされましたが、そんな思いも吹き飛ぶ痛快なロボットアニメでした。なぜか地味になりがちな地方都市のPRアニメは、これくらいハジケてるくらいがちょうどいいのでは!

ちなみに本作はDMMの地方創生事業の一環として、大槌町から受託制作したもので、当地出身の佐藤ひろ美さんをはじめ大槌町に関わる人々が多数参加しているようです。日本語音声だけでなく英語、そしてフランス語の字幕もあり、本作をきっかけに多くの人が聖地巡礼に訪ねてほしいもの……なんて思っていたら、アニメを制作した天狗工房の福士直也監督によると、本作はまだ別バージョンも予定されているとのこと。気合入り過ぎ。

●はぐれ者たちのバンドが武道館を目指すアニメ(2作目)『変人のサラダボウル』

先週は『ダイハンマー』に頭をガツンとやられた衝撃がすごかったのですが、そんな時に脳に染み渡ったのがこれ。2週連続でサウナに入ったことで、2週続けて風呂に入った『怪異と乙女と神隠し』とチキンレース……なんて話はともかく、当初は貧乏探偵と異世界から転移してきた美少女のコメディといった風情のアニメでしたが、突然カルト宗教や転売ヤー撲滅の話になったり、サブキャラクターが妙な味を出したりして右肩上がり傾向にあります。

この第6話ではホームレスの女騎士、彼女を救世主として崇める宗教団体の指導者、そして活動資金を得るため違法セクキャバで働いていたバンドマンのプリケツの3人が新たにバンドを結成。彼女たちは武道館を目指すのですが、奇しくも同じ週に武道館を目指し始めた『ガールズバンドクライ』の主人公バンド以上に強烈なメンバー構成です。ちょっとどころではなく大分様子がおかしい面々がワチャワチャしてるだけでとても楽しく、いよいよ「変人のサラダボウル」というタイトルに嘘偽りなしとなってきました。

(文=はるのおと)

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